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遠い。ひたすらに遠い。近づきたくとも広域の精霊律で近づけさせないように、そうして遠くから槍で突いて来るスタイル。
槍と剣では80センチも違う、83と160の穂先の差。倍ほども違うし体格と技もが――。
「そう、精霊法とは常に間合いの戦いだぞ、我が弟子よ……」
ヤツは炎を撒いた、炎と風が主流だろうか。目くらましにはかなり良いのを選んでるし素人には高難度だろうな、近づくのが非常に厳しいよ。風に目をつむってしまえばあっという間に槍が突き刺さるから――。
「あぁうぅ、でもだけど……っ、この程度の槍ならその内側は――」「はいざんねーーん」
機敏に風の精霊法を使い、なるべく防御すらせずに地面に噴射し逃げていく。羅列ロウソクを展開しようとした瞬間だった。鋭敏な感覚、ただ問題はまた槍が突っ込んで来て……!
「コイツまさか、ずっとこんなのやってくる気か――」突けば下がる、突けば下がる、突けば下がる。先っちょだけ当てて巨大な屁をかまして逃げていく。
槍というイヤラシさを遺憾なく発揮、永遠に追えないバックステップ、それを繰り返すから、それだけ。
しかもそれで巻き上がる砂と塵には――。
「ぐぅう!? くそぉ……、やっぱりよく似た作戦なんだな、ぺっ……ぺぇっ」
「おぅ、来た来たキタぁッ! あの人の必勝パターンが来ましたぁ……っ」「あの人マジであれ擦り続けっからぁ~」
「あぁ……、あれヤバいんだよな、あのお騎士ちゃんでも手間取るんだ。フルプレートが泣いてたよなぁっ……!」ヒヒヒ。
ひたすらに擦ってくる突き逃げを、間合いの最大値が永遠と続く姿には師匠も、「そう……、でもね、それだけヤツは君の事を警戒してるの。手合わせして気づいたハズだ、そんなに簡単じゃないと」
ただ……。
「ぐっ、うぅう!? クソ……、こんなに面倒なのか。僕は本当に……っ、本当にあの敵を倒さないと――」
「怯えては駄目だよ……、さぁ戦いなさい弟子くん、キミは勇者になるんだろう……!」
その副官君の人法を避けながら一閃。今ので雑魚はあらかた片付いたの、ただ明らかに波形が乗れていない、反射に支障が出ている弟子は。
あの人型の敵はやはり恐怖を得るのか。ただそれでも確かに、その傷は……彼女の師匠としての奮戦は心に。
「そうだよ、そうだ……。でも僕は師匠に見せなきゃいけないんだ、僕には師匠がぁぁあああ!」
そのまま走って行く、何も構えずに、ただただ全力疾走だ。それはマズイと――「ちぃい!? むやみの突進ってのは面倒起こすかよ、だがよぅ……っ、こちとら何年やってると思ってる、甘いんだよぉ――!」
その一撃は顔への2連、必殺だろう、上から来た直後に横からはたくような横打ち。あえて穂先を顔へとやるヤイバ。だがガンギマリ。
顔を擦っても粘ってくる少年の前進に、大人が唇を噛むから。彼の素早さはなかなかだ、前に進む気概もなかなかで。
「そう……、比較的重装甲、だから警戒してたんだろうけれども……。なかなか早い動きだしだ、どうだ見たか私の力を――」
ワシが育てているよ? 師匠が誇りながらもその暴れる人法の副官ちゃんに、彼の上司そっくりの当て逃げキックを二連してやる。ハードパンチャー師匠、健在。
無限擦りライダーキック。
嗚咽が響く。向こうでは首領が弟子にへばりつかれる前に風の律を発射だ。だがそのまま不屈で突進の弟子は、再度唱え終わる前に行く、それに焦って槍を突いた。その軌道の甘いのを指の先で捉えて……。
「なんだと、このガキ――、すさまじい重み。まさか狙って」「貰ったァ――!」
「ヒヒヒ。そうそ、そう言うのも慣れてんだよ、このクソがきぃ!」
「ぐぅ!? 槍自体を蹴り上げるのか、また離されてしまって――」
なかなか逃げの一手に対して一家言ある奴だ、空中で槍をキャッチ。だがチャンスを逃さまいとそれはロウソクを灯す少年は「追撃、羅生撃、行けぇええ」
力の軌跡が。その力をひたすら蓄えて走る、だがやはり風の律はそれこそが得意、愚直な前進相手にも既に完成している。だからこそ力を込めた、そうしてガントレットを用意して投擲させるのだ!
「ハァア、人法・ストライク・カノン。発射――ァ」
その人法を込められた超豪速球には、さすがにひるむしかない、何せ時速170キロは出てる。風を切り裂いて当たった途端にカブトで石が砕け、目にも突き刺さりそうに。頭領の男がカオを背け――!
「チャンス……、必ず決めるぞ。僕も伊達じゃないぞ、必殺を持ってるんだよ、食らえよ――!」
するとさざ波のような穏やかな旋律。あの時の力を再現して、更に昇華させ――。
「そう……、普通の精神状態では使えない、そのオドの力はだね。彼はそれに気づいた、そうして更に精進し続けたからこそ」
「食らえ……、僕はお前なんかに負けないんだ……っ。だって守るべきを守る男になる、僕の正義は彼女と生きる為のものだから――」
目の前で展開される、そのあまり見ない霊長法に驚く頭領、どんなに歴戦でもオドは理解不能に陥る場合が多く「ちぃい!? なんだこれ、全部吹き飛ばしてやんよ、ウラァアア!」
「そう……それがマズイの、チェックメイトだな――」
その剣が全てを吹き飛ばして突き刺さる。風も炎も、そうして誰かの感情すらも「ぐぶぅううう――!?」
「よしよし、良いだろうね……、よくやったのお弟子くん!」
皆が驚く、まだ13の少年がその多くの舎弟を従わせる頭領を見事、討ち取ってしまった。その途端に逃げ出す者も多かったがほとんどは捕縛だ捕縛ぅ!
ちなみに師匠のほうも副官ちゃんをしばき倒したの。エンド。
そのまま僧兵の下っ端に山賊どもを引き渡すから。
その時、だが、突然聞きなれない音が響いた。師匠でも反応しきれない、カラダがびくってなってしまう。体がおかしい。苦しい。発熱し始めたのだ。
その眼に映ったのは――。




