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「はぁ……はぁ……師匠――」少年はその開門して外へと出ていく少女に唇を噛み、つぶさに見やっているが、「でも安心して下さい……皆さん、師匠に言われてる。僕はかなり夜目が効くから、アッチですよ、あの木の陰なんだ、3人で行って下さい――!」
弟子はそれでも夜道をクリアリングしながら野盗を削って行く。大きな一団を率いていた。
すると山賊たちの方に聞こえてくるから、闇で仲間たちが戦う声が。その仲間を呼ぶ悲鳴が山に響く。
だったらここで……、だからこその正面突破で――。
「戦うのか……、マジで」「すっげぇな、あの女。いや……、あの師匠って方はさぁ」
ワラワラと森から出てくる野盗、その数は10以上。五月蠅い声で威嚇してくるね……。だが明らかに強い、強すぎるだろう?
たった一人で迎え討つ白の美少女、襲撃者10人を相手して譲らない、押し返すレベルで銀の閃光が月夜に翻っている。
2つの月明かりが照らす、遠目でも格の違いが分かる。
その鮮烈なる強さはそもそもだが戦いにならない場合も多く「ンふ――。そう……、残念だけれどもね……? 私は既にすごい罠を張っているから、食らいなさい――」
手を広げて踊った、ボインボインと「ア、あっちぃい!? アチチ――、なんだコレぇえ!?」「あぁ、なんかネチャっとしたの踏んだら、火が、脚から突然に火がぁあ――ッ」
猛応、大地だよ?
ソレが既に張られているから。大体相手は藁や木で高級な具足をしているのなんてほんの少数であろう。そこに着火させる地面とかいう最悪、もう辿りつく事も難しく。
「そう、甘いかな……? 減点対象。レベルの違いを理解しないとだよ。だからわざと精霊法は見せてあげたのにぃ、やはりねぇ……座学を理解してない奴は弱いの――」
剣を下げた。足から燃えるとさすがにこたえる、ゴロゴロと転がるしかない。火の見えない大地はかなり面倒で、解決法を知らなければ……「オィいっけぇ! なに遊んでやがるよ、とりあえず進めよ、オぉぉぉおお!」
するとその時一喝と共に地面が割れた。それは人法だ、恐らくは感情の学。そこから進んで来る力技は……、減点、でもさすがとは言えるかも……。
それは40もの手下がいる山賊の長だ。
だが師匠はいたって普通に強いよ? 1対1、全然剣が通らないから。
「そう、なかなかだね、統率が取れてるの。だから逃がさないようにするのが難しいと……」ハイそこ、村へ入らないっ!
私を置いて我先にと民家へ突入しようとする奴もいる。人質も有効だ。そこに精霊法を温存せねばならないので弓矢への対処が異様に面倒となってしまっていたし。それでも1人で相手する、抜けない、山から響いてく仲間の悲鳴、それに焦らされたらばもう――。
「おぉらぁ、もう面倒くせぇよぉ!」
更なる影から精霊律の奇襲が、爆発が――「オィ姉さん……っなかなかヤルようだがコッチも命懸けなんでねぇ!」
「やっとご出陣かな……? 精霊法を使うのが親分さんなの? そうして目の前の副官っぽいのは人法特化で……」へぇ~~。
「オィなんで俺が副官なんだ、どうしてそう思う?」
笑ってその風の律を避ける女に、閃く剣の攻撃、私はしっかり避けて回転して、「そう、まぁ……。装備もそうだけれども、あの首領さんはでも、爆発か何かを起こして動揺を誘おうとしてたんだろうなと……? でも作戦を諦めた、勝手な判断で。あとねぇ腕が違うのよ、それが一番だ」
その直後、割って入る副官の盗賊の気合い。目つきが違う、そうして師匠が考えて、そこで狙ったのは副官の方で、「でもね……キミの方はお呼びじゃないよ――」
鋭い剣閃。だがさすがの盗賊、殺しの人法者か。逃げたそこに精霊律を撃っても対応してくるし、そうして広範囲に襲いくる親分による精霊律が。
副官と親分が見事に息を合わせるのだ。
「そう……、レベルは16と15、か。単体なら私の方がかなり上、でもさすがに面倒かなって」はぁ……はぁ……。
一方に精霊律を使われながらの近接人法での突進、弾き返す師匠、その精度には誰もが驚くが。でも反撃で割って入れない程の波状攻撃で、それでも抜け出して更には「村には逃がさないと言ってるの!」「ぐぁ!? ぎゃああ!?」
子分どもをしっかりと斬りつけていく。必死に追いかけてくる人法の副官、師匠は剣を受けて、大地を削る追撃の風を一刀両断。
複数のスキルも相まって速度・攻撃力ともに圧がすごい。
「そうだよ……、それでも師匠の網は抜けれないよ、あの人はでも――」「ひぃい!? 無詠唱だとぉ!?」
相手はもう半分にまで減っている、しかし気が気ではない弟子。実はコッチだって進まないんだ、村人が圧倒的な物量差がないと勝ちきれないし。鎧にイライラしながら戦うが……。
「いや――。はぁ……はぁ……、もう良いでしょう、でも頃合いだと思います。早く行かなきゃ――ごめん――!」
そう言ってそれらは農民たちに任せて、その荒ぶる戦いの師匠を見ながら走るんだ。あの人だけに頼ってはいけない。弟子が山からやって来たのを見て師匠は指を差して来る。
「こら……20点だよ! そうあれはまだ少し残ってるの弟子くん? しっかりとね……、最後までだ。指令は全滅だったはず」
「いや――。あの……でも、師匠が魔法を」「いやぁ~、構わねえよ~。うちらが戦うってぇ」「そうだぜ、この巫女様の敵めぇええ!」
その言葉に肩をすくめた師匠は、じゃあと、その頭領となる男を剣で差して弟子を迎え入れ、「そう……、じゃあね、仕方ないね? さぁじゃあお弟子くん……その敵を倒すの、それは今日の君への課題だから」
「分かりました……っ、はぁ……はぁ……、僕は例え何が相手でも、役に立たないとだぞ――!」
2対2。
強さを求めないと師匠は強くならない、分かっている。例えそれが人間相手だったとしてもだよ。
ちょうど良い相手だろうね……、その精霊法師くんは。妙に怒っているが。そして師匠として向き直ったのも……。
「そう……それでね? 君は私が引き受けよう、ただ……、そんなに怒ってどうしたのかな……? 遠慮せずかかって来て良いよ、存分にね☆」
「テメェ……――。はぁ……はぁ……、なんださっきからその適当な感じ。お前今まで手を抜いてたろうが――」
飛び込む、目いっぱい剣でかち合うが、全くもって覇気がない。師匠は薄ら笑っているだけ。
「ねぇ……、そうじゃあ。もしもだよ……。その弟子くんを倒せたら私は剣も両腕も使わないで良いんだからね」
その言葉に更に更に憤慨だ、だがそれは――。
「アぁぁらああ、じゃあこのガキを仕留めりゃ良いんだな!? テメェ……、絶対に後悔させてやるから、覚悟しとけぇえ!」
槍を振り回しながら思いっきり風をまき散らす頭領。所詮まだ威嚇の精霊律だが今までこんな事できたヤツはいない、やはり違うと「ぐぅう!? 精霊法の使い手、ボスのコイツはこんな――」
「ぐへへ――こんなガキ風情に俺が倒せるかよっ……。たーっぷり遊んでやる、しかも生かしてやるからなぁ……? はぁ……はぁ……、それでお前の前で遊ぶんだ、むしろお前も一緒に楽しんでやるぜ。可愛い顔での歪んだあえぎ声をた~っぷりと聞かせてやるよぉお!」
もてあそぶように槍をぶん回して斬撃すると、すぐ後退、見せつけるよう精霊律でほふってくる。ヤツの間合いは明らかに中位だ、ステップがそうで。しかも槍を上手く使い……。
「ぐぅう!? 近づくのも面倒なんだな、なんか……すごく長くないか、すごく―――」




