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「いえ、良い……。そうこれが旅なんだよ。それにほら……、何より生きている人がいるから――」

 その言葉に戸惑いながらも、弟子くんが治療を、Max吐き気の声を。そうして何より二人の首の傷も処理したの、あとの奴らも処理していくし。手早く、そして迅速に。

 そう………、そうだ、優しさと正義は一緒にしちゃダメだよね。優しいばかりに正義を行えないなんてない。


 あの世界が懐かしい。なんとなく平和に、それでなんとなく嫌な気持ちを抱えるだけで生きていけた世界が。

 そのなんとなく嫌な気持ちを正す、それがどれほど辛いかを知るような、そんな役になる事が。


「そうだね……、はぁ……はぁ……、誰かに善意を押し付け過ぎるのも、期待するのも本当は良くないの……。心は皆自由なんだよ、だから悪でいても良いんだ」

 突き刺した。

 自由に生きるなら良い、リスクと現実を受け止めれれば2流で、そこで生きてれば悪でも1流だもの。それで、3流とは誰かに正義を説いて勝った気になる、他人を叱責するだけなら論外で――。

 実際この世界では野盗はモンスターという枠になっている。だからもしこの暗黒時代に光を望み、その正義を行い続けていれば、いつか自分が悪になる。きっとなる。


 ただし……、キミは駄目。キミだけはまだ駄目だからね。


「そう……、その正義でいつか誰かの期待に応えたいのならね、それは大事な友達か恋人か、それかもしくは……師匠たる者が必要なの――」

 最後の言葉、響く声。

 この世界で冒険に出るならば絶対に覚悟はしなければならなかった……。ソレはいつか訪れると、師匠として先に済ませる事にしただけ。最後に剣を振って震えた手を直す。大人だからね。

「少し……、急ごうか」そう言って歩き出す。すると弟子くんが強く強く手を握ったの。首を振るから。


「あの……、でもだけど、その前に。僕がこの旅に誘ってしまったので……。それで実際アナタはほとんど貴族だ、奴隷の僕とは違う。だから何よりもこの呪いを解いて欲しいんだ……っ」

「解かない――」首筋を抑える言葉に首を振る。そのケガはやっぱり深いけれど「だって、そう……私は確かに師匠だけどもね、命はやはり平等だと考えているから」

「何を言ってるんですかっ、意味が……分かりませんっ。 アナタはおかしい所がある。そんな訳がないんだ、そんな訳がっ――」「うん。そう……」

 そうだね、この世界は本当に平等だものね――。


 そういう世界で育った。それの残り香だった。そんなのウソだし、彼らに押し付けてもしょうがない。むしろ本当はずっと押し付けられて来ただけのただの上っ面。

 だって、全ての弟子がそうだったから。

 誰も彼もが一発逆転を狙っていた、なんなら貴族を殺そうとするのもいっぱいいた。平等だからこそ階級があると、そう理解させられる。

 イヤなら殺せば良いのだ。

 貨幣経済の中で黙って奪われるか、殴って殺して殺されて、勝った奴に奪われるかだけの差「むしろ変な聖域がないから、だからこそ――」

 村も無意味だ、国すらも無意味だ。全部全部オモチャにして良い、平等に殺せる。平等に壊せる。だから荒れている。


 あの子達に真っ当な感覚を教えてあげようとする時いつも苦労したのを覚えている。だって、食べられないんだもん。だって死ぬんだ、明日奴隷になるんだ。

 時代錯誤いぜんに境遇を錯誤して生きていくのが一番恥ずかしいと。

 誰ももう私の幸せな世界に生きてなどいない。


「アナタは奴隷の証を見ても驚かなかった……。嬉しかったです、普通はこんなに接してくれない、だがこれは意味が分かりません――。だってただの使い捨てのはずですよ、僕は怖い時があるんだ……っ、それはアナタだ――」

 その奴隷の印を見せてくる、死の順番のソレ。奴隷というから忌避したくなるだけで先に死ぬニンゲンを差してるだけ。世界の命運のために段々削れていくお話、それが奴隷。

 だから皆が上を作ってあがる。だって定数必ず死ぬもの、絶対に死ぬ世界、奴隷は必要だ――。


「ねぇそう、でも思うの……。本当はやはり、アナタは貴族なのかなって……? キミは明らかに他の子とは違う、そう思うの」

「あぁ――えぇと……。いや、違います。全然違うんだ……。だって僕の価値はもう人にすら劣るんだって――」

 それでかなり口論になったが、だが衝撃的な事を言われ……。

「はぁ……はぁ……、そんな――。じゃ、じゃあならば、一回だけで……。一回で良いんだ、それで僕を切って下さい。それは必ずですよ師匠、そこまでで破門なんです僕は――ッ」

 その言葉で一応収束となる。破門条件が整う。するとそのクビの包みを握った私に弟子が手を繋いだのだ。

「でも思います、僕も……。不思議な空気をまとうアナタが知る、いつかその綺麗な世界を、師匠と回れれば良いなって」

「……――。そうね。そうなの……――」

 少し恥ずかし気にするが、それでも楽しそうな……。



 そして夜。

「はぁ……はぁ……ハァ……!?」

「ほぉら……、アレは絶対にヤバいよ。お前のその力を穢してしまう、だって……。人を殺したんだぞ?」

 ヒトを殺した……殺したんだぞ――。

 ナァ? 殺したよなぁ?

「うぅぅ……違う、彼女は絶対に……」


 しかしカラダに亀裂が走る。漏れ出していく「お前の対象なんかじゃないぞ、触れるな……っ、はぁ……はぁ……、あの人は僕が絶対に守るから。お前には渡さない、そしてお前をいつか、いつか超えて見せるんだよ――」

「私を……、か。分かっているのか、その意味が。人に罰を与える私を、それを超えるの意味が」「じゃああの城が……はぁ……はぁ……父さまと母様と、そして僕の大事な人をあんなっ……アレが罰だっていうのか、あんな――!?」


「大事な人……―――。でもさ……、欲しいならお前はでも、今アレを超えられるだろうに」

 その言葉に震えた、だがその眩いのは……目もくらむ、「今は簡単な選択があるぞ、今でもあの力程度ならヤレる。好きにできる」

「やめろ……、やめるんだ。これ以上はもう――」「でもあんなに可愛いんだ……。気に入ったんだろう? 本当の力を出せば必ず振り向くさ、そしてしっかりと教育すれば良い……。あの女に使わせたいんだろう――」

 でも逆にお前の死は世界の損失だよ、それが正解さ。

 その白が襲ってくる。狂暴な力、抑えきれない欲望。

 どうせヤツは外典の者……。お前はいつだって殺せるさ、だってアレは人間じゃない、守るべきものではない。アレはお前の…が……――。

 あぁぁァァア――――――――――――――――――。

 そのまま飛び起きた。手が震える。弟子はひたすらに吐き出した。


「ごほっ、ごほ、はぁ……はぁ……おぇ――。こんなにも増幅するのか、早くいかないときっと僕は……」

 周りを見渡す。必死にその陰がいないかを――。


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