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「遊ばれた……」

 ずぅぅぅぅぅん――。

 次の日、少しマウント過大になった。「良いかい……、弟子くんっ……、君の動きは非常に無駄なんだ、無駄無駄無駄! しっかりと真似して、ほら――!」

 ほらぁああ!

 師匠が本気で怒った。あぁ……、うん。『でもレベル上がったなぁ』

 お互いのステータス値を見ながらニヤニヤしている。

 師匠はベッドで、明日いかに弟子くんをしごこうか夢想し夜へと入り。弟子は師匠がどんだけ強くなれるか期待して剣を振るう。


「あぁあそこだ……、奴はあそこにいるんだな……。はぁ……はぁ……、あのすかんぴん野郎の言うにはさぁ……」

 だが近づいていく。一歩ずつ一歩ずつ、まだ遠いが……気づかれないように。ただそれでも浮足立つ感覚。何せ奴の顔を見て気づいた、そうだ、アレは間違いなくあの……――。

「おぃオマエ……」振り返らされた、その瞬間に「がは――!? あぁぁ」

 腹を突き刺す剣、倒れる男の口を即座に塞いだ「人違いだよ……。何せアイツは一度勇者を捨てたからね」

 だから今も、逃げ続けている。その黄金からは。




 そして朝。早朝に出発。

「さぁさぁ、早く行きましょう、師匠!」「そう……、良いけれども。でもそんなに次のダンジョンがしたいのかな……、お弟子くんは」ふぁぁ~~あ。

 笑顔で元気なお弟子くんに引かれ、押されていく。今日は少し雨模様。

「へぇ~……そうなんだ、そうなんですね~? じゃああの海って2層になっているんだ……」「そう……、そうなの。この世界じゃ海は3つある。一つはオモテの海、良く知るサラヴァク・ヘイムで第一階層になるの。そして……」

 彼は熱心に聞いていた。なかなか雑学なんて求めるという、そんな高尚な者がいる事は少ないの。大体が役に立たないだろうと笑う者ばかりだ、異世界人たる私にはすこぶる価値ある物だったが。


 この世界に来てからは読み漁った知識書。


「そう……、それでね? つまりは魔王が持ち込んだ物なんだよ。魔の法って。誰かがどこからか別のルールを持ち込まないとこうはならない、だが、簡単と言われたそのルールの解析は今も――」

 白い息は雨に打たれかき消えて。

 この異世界では3つの法がひしめき合っている。魔法と、人間法と自然法。それぞれは精霊と霊長類と、そうして魔王とが敷いたルール。


「でも、どうやら未だ真なる魔王がいてだ……、どこかから魔力という物を振らせているらしいの。それは塊なんだそうだよ、それはさすがに君も知っているはずだよねぇ?」

「あぁ………、えぇ、知ってますよ……、良く分かってます。だって実は僕、」間近で見た事が――。

 そうだ、今も声が響くよ、奴を求めよと―――。

 その顔色にうなずく。少年なのに妙に疲れ果てた目だったのが分かる気がした。とにもかくにもヒドイらしいのだ。

 魔力が降って来る。


 文献を見やるに突然おおいなる災いの光が降り立ちて一気に辺りを歪ませるらしい。その場所は無作為、瘴気の森という概念は理解できるだろうが、正確には奇形の森で。突然。

「そう……、全ての概念までもが通じなくなるらしいね。生きるも死ぬも。しかもね……、突然降り注ぐというその力には限りがなくて、一体どこからが……」

 この世界の空を見やる私。その重くて灰色の雲を突き抜ければ月2つ。

 そうしてここでの勇者とは魔力に対する絶対的な対抗措置と、そう目されているの。だが勇者を見た物はいない、そういう歴史もない。あぁいや、しかしたった一度だけは……。


 純粋なる勇者は悟った。


 真なる魔王は既に人間が隠した。


 それを開けてはならぬ――。


 髪飾りを触れて私は。

「そう……、それでね、一言だけなの。勇者とは人間法の極みを与えられた存在、一応そうなっているから。ただ何から得られるのか未だ分からない……、それは神ではないらしいと。そして精霊すらも――」

 五里霧中。神に対する記述が全くないから。精霊王という者が確かに存在するのに、それは確実に伝播すべき希望のはずなのに。

 そして魔王の討伐とはその精霊と勇者の両者がなくては成立しないという。神の概念もあやふやのままで真なる魔王も分からず。


「全てが謎の……、まるで」

 考える……、その青を見上げる姿、「それでもね……、魔王の腹心を全て倒す必要があるという、そんな噂があるの。でもそもそも概念を降らす事のできる、そんな者を探す方法がないから……、だからほとんどの学者が長く付き合う病気だとしているね……」


 魔王を倒すことは事実上、不可能とされている。


「はい。でもだけども、僕が勇者になりますから」

 その本気の目に、笑顔、少しイジクッてしまう。まだまだ少年だなって笑うと、勇者になると繰り返す。

 そういう意味で王都は大事だからね、試験があるから必ずパスしなさいお弟子くん? その真剣な師匠の言葉にはうなずく少年くん。

「そう……、それで分かったかな。じゃあねぇ弟子くんも魔法をね……、もしくは自然法を使ってもみよう。師匠としては才能があると思うの」

「あぁいや……。でもやっぱり僕はスキルだけで十分です、外法タイプは少し――」

「えぇ? そう……? でも楽になれるから。正確には、生き残れるからだね、もっと言えば……、目が潰れなくなるし脚も不自由にならない。今は良いけれども私がいないと遠距離はどうにもならないの」


「いや……、あの。師匠ごめんなさい――」

 その言葉に眉根を上げる。あまりこういう食わず嫌いは良くないのだ、何せ師匠にはその可能性がしっかりと見えているのだから。

「そう……。よく考えると、この子の力は不思議なのかもしれない。何故鍛えてないマナが剣術と同じで、全く一緒の速度で上がっていって――」

 弟子を見やるが少し不思議な所があるのは確かだ。彼の力には謎がある、いや彼自身にも「そう……、ねぇ。キミは闇の洞窟でもそうだ……。どうしてあの時ゴーレムに必殺技を使わなかったのかな?」

「あぁあの……、体力が足りませんでした、さすがにヘロヘロで……」

「そうなの……。ただ不思議なんだけど、あの技は、何かな……、なんの力を用いてるんだろうって」「あぁ……、分からないです。僕も実際は兄の真似をしているだけなので、兄は……」

 強かったです。最後は――。

 最後、 うぅぅぅ――――――!?


 支えてあげる。弟子くんは恐らく何か秘密を持っているのだろう。そうしてそれがかなりのストレスとなる事も。あの光の力は本人も分からないらしい、波形も一切反応しないのだ、何故だか私にも全く分からない。

 その事と彼の理力が。精霊法を司る器官が跳ねることと関係があるのか、彼は常に力を込めると理力が上がっている。

 まさか本当に。


「そう……、無理はしなくて良いよ。でもじゃあそうだ、弟子くんはスリンガーショットは考えてね? だってそろそろ射撃武器が欲しくなってくるはずだ、それは逃げられないよ……」

 ごそごそと、その新しい力を、調整が終わったのでハメてやる私、「ちょうどこのガントレットがそうだもの」

「あぁはい……、コレですね。格好良い――。これはどうやら誰でも使えるみたいで、あと黒で格好良いしすごい良いし――」

 このガントレットはどうやら弾丸を込めれて少しの誘導を勝手につけてくれる機構を持っているらしいの。ただし色々と制約があるみたいだけれど。弟子につけさせて色々話しながら歩いて行く。


 かなりのお気に入りだね。


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