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「あぁ……――。そう。えとね、為替って知ってるかな?」

「あぁ……………、えと、分かりません、かわせ? なんですか」

 突然の血まみれ金融言語に、お弟子くんが不思議顔で戸惑って、「そう……、為替ってね、大きなお金を持ち歩くには相当の準備がいるね……? 野盗に関所にと、それと同じように資材もなの、それは持ち運びしにくいのを預かってくれてて……」血まみれ女が骨を折るのだ、無表情で。


 それは素材の為替、別名・万能倉庫。色々な素材はすべて紙の為替に置きかえて都市部でも手ぶらで可能で、引き落としも楽で。


「ただし、  ただしなの」

 ほとんど都市部では素材が回らない、結構これで錬金工房が頭を抱える事案が多いから。血の滴る手を払った師匠は、「そう……、皆、持ち出し易くてお金になりやすい物ばかり取っておくから、だから溢れるんだね……? むしろこういった実用的な物ほどねぇ……、案外不足する、だから私は今から――」うっ……うくぅ!?

 ゴーレムの神経体。これは大きい、そして非常に固いのに繊細質で使える素材だ。核には遥かに劣るけれど。

 ユニコーンの角。でも実際はその足に生えた浮遊する浮肝があった骨が、それが一番使えたりもする。邪魔になる事半端ないない二束三文だが。


 どれもこれも金持ちの都市には不足してる。必要な物は重くかさばるくせに安いので送料が目が飛ぶほど高くなるし。だからそれらを今取り出して錬金の素材にするのだ。


「あぁ……――、うん。じゃ、じゃあボク手伝いますよ師匠」

「そう……、良いよ、キミは楽しんで来なさい。何せわたしの元では残業はダメだよ……、それは重罪だものね」

 笑う師匠。

 ――――――――――――。

 うん、そうだよ……。

 だって、よく絡まれてたから……、上司はしつこくて……何べんも何べんも同じ事言われるし。真顔で高圧的で、怯えて。

 それは説教したいだけで強く見せたいだけ……その癖次の日も謝りもしないし。

「あまり師匠……、あぁいうのが好きじゃないんですか?」

「うぅん――? 全然」

 相手に何言っても良い、それが加速するのが酒だ。むしろそう勝手に思って勝手に実行するだけの場だと、そういうイメージしかない。酒を楽しめって……、それ義務じゃないんだ。

 むしろ神経が分からない、他人を傷つけても酒のせいにできる程度の神経。

 面倒だよ……「ただ本当に面倒。先輩だからと後輩の面倒も見てさ……、そのくせ上から愚痴も聞かされてさ……。それでも私の方がおごったりもする時もあって、なんのために私はって――」フ、ふふふ。

 分からない、か……。


 そんな顔だが、しかし弟子は聞いてくれてる、「その後のむなしい気持ちがたまらなかったなぁ………と。だって私はね……。私は。今もあんまり豪華な事が好きじゃないよ――」

 理由は分からない、いやむしろ分かりたくない。結局は超がつくような美少女らしい生き様なんて似合ってないのだろうだなんて。

 豪快に生きる事も、豪快に死ぬ事も、男をはべらせるのも、移り気に誰かを愛するのも。無計画になるのも、ざまぁとかも。

 なんだったらこのまま本を読んだまま干からびて死んでいきたいとすら思っている。異世界は異世界のままで。


 ねぇ……、可愛くて究極キレイな美少女の私って、何年経っても違和感あるね――。


 ふと昔は思い出すから。懐かしいのか、ヒトが寄って来た事ない人生が。地味なスキルほど使い勝手が良いと感じる性も。

「そう……、弟子くん。私がもし私じゃなかったら……」


 ――。


 ――――――。


「いや、なんでもない。ねぇ、お弟子くんはね、そんなに強くなりたいかな……?」

「えぇ……はい、もちろんですよ、僕は勇者になりたいんですっ、お願いします!」

 そう言うと弟子として手を取るのだ。そして大人びて笑ったから「だから踊ってもらえませんか、師匠」

「あぁ、えぇ? うん……、どうなったの……? 今のでどうなったのかな」

 そうあきれ顔でいう師匠を立たせる。手を引いた。そしてゆっくりとリズムを取っている少年。合わせて……。


「でもそう……、私ね、血みどろだし。雰囲気も何もないだろうに……」「良いんですよ、良いんですっ。どうですか~、師匠。僕もまんざらじゃないでしょうっ」

「そう……、いや、弟子の君に言われてもなんだかなって……。上手なんだろうけど、これは」

 少し振り回されるような、必死にこっちがしないとで、「で、でも君は全然年下で、私とじゃあもう、あの、 なんだ……その」

 あっあっ――。

 でも崩れかけて、なんとか直してため息ついた、白の髪を直す、恥ずかしいかなって――。その非常に照れた顔に笑いかける少年は美しく。


 それなのにコッチは動きもおかしいし、本当に血まみれだし臭いしヘボいし。でもなんとも言えない落ち着きの目。15歳なのに全然達観してて……。


「師匠って……、可愛いんです。周りの女の人と違う、こんな美少女なのに……、師匠クラスだと明らかに何か違いますからっ」

「そう……、喜んで良いのかな、怒るべきだろうか――」

 元がもう抜けないのか。30ね……いや20年代もソレで生きてたので抜けてない。その次のフェイズに入っても周りは小学生ばかりだったし。

「あぁ――地味ですけどこんな素顔が可愛い人はいないんだ……。それに僕が教えれる事があって嬉しいんです……っ、さぁ、だから踊りましょうよ、もっと!」

「地味を押すね……、君は。いや、でもあのね……別にね、こんなのいらない……っ。私は平穏で良いよ、平穏が良いんだものっ」「平穏て……、ダンス一つで何を、フフフ。でもきっと可愛いですよ~、師匠は。ドレスを着ましょう、それに王立学校行くなら必要ですから、だって笑われますよ」

 ほらほら~間違いなくこれじゃあ……。

「う、五月蠅いなぁ……っ。そう大体、なんで踊る程度でイキがれるのか……、クラスでしつこくしつこくステップ踏む奴キモいし、五月蠅いし――」


 だがまぁ必死に合わせてるつもりだが足がおぼつかないから、レベルじゃないのが如実に表れているよ、才能も……。


「う……あっ、ちょっと待って……、待ちなさいお弟子くん――」「大丈夫ですよ師匠、僕を信じて、もっと握って」「あっ……やだ、やぁん……!? ちょっとぉ……動いちゃ。もう」

 でもこうかな、こう……?

 上手く優雅に立て直させて見せる弟子。ただし、ただしだ、オッパイが狂気。事実上の殺人兵器、滅茶苦茶大きかった――。

 ぼよぉぉんっ……と揺れてボクの顔をはたくんだ。でもキミは……君、貴族なのかな?

 それに笑顔で。


「あぁ……、えと――。 はぁ……はぁ……、今のすっごい可愛いかったです師匠。もっとでも頑張りましょうね~、顔がしかめっ面ですよ~」「し、師匠に向かってなんて口の利き方っ……。えと……あの、じゃあこうかな、こう……」

 あっ……あぅ、あわわ―――!?

 その、明らかにキャラが変わってしまった師匠、はわわ女子に成り下がってしまった年上。この可愛さ全振りの師匠に微笑む弟子は。

 必死で、もう本当に必死で。


 わっ、私は……踊りなんて良いんだものね、本当だからネ……っ、真剣になんてぜったい踊りゃな――。

 あぁ噛むんだ……、師匠。噛んじゃうんだぁ――。


「五月蠅い五月蠅い……っ、何も見るな。何も考えるなぁぁ!?」

 こちらの言わんことを察知してか、ぽかってくる。その可愛い顔を見せてくれないので謝った。そして夜の世界、二人だけでステップを踏む。


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