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「そう……、でもだけども進むよ、お弟子くん。大丈夫だね」「はぁ……はぁ……。はい、なんとか――」
息を切らしている弟子をしっかりと横に据え、最奥を目指す。一応マッピングは済んでいる、とは言えこんな恐ろしい谷底をよく攻略できたなと思うばかり。
ところどころ浸食する汚い水に入れば丸く波紋を抱く。一瞬黒い影。
「ふぅ……、ふぅ……、フゥ……――。でもあともう少しでダンジョンの終点ですね、師匠」
それで見えて来たのは少しだけ蒼の空気が降りている場所。光かどうかは分からないけれど、それは闇に淡く美しく……「はぁ……、はぁ……、そう……、それで、最奥にはこんな強いのがいるとはねって――」
すぐに掲げていたその遠くの炎を水へ潜らせた師匠。もう既に殺気がビンビン、それは離れていても壁から伝わるから。
そして大概だが最奥には宝箱がある。やはりあった、貴重なレア箱発見。でもたった一度の頂いた魔法をこれに使ったというのだから大賢者には恐れ入る。
「そう。でも絶対に見つからないで、お弟子くん……。これに不意に襲われたら私でも無理なの」「はい、やっぱりアレは恐らく……。なんか違いますよね。それにレア箱になっています、すごい――」
「それだけ歪みがたまっていて……。だからアナタは待ってて良いから弟子くん、私が相手しておくの」
「え? いえ? 僕も当然行きます、当然です」
そお――? 気のない返事で剣を構える師匠。その先には泥地のゴレムが。でも確か聞いていたのではオーガの一種、沼地の散華と呼ばれる狂暴種がいたはずだが。
「また殺された訳ですかね。ただでもオーガって攻撃力特化で、岩を砕きませんでしたっけ」「えぇそう……。じゃあパワードスーツとか仮装……、そんな訳ないかな……。もしそうだとすれば相当なお出迎えなの」
また食ったのか。それとも入れ替わりか。視脳を全力で行い目線をも凝らしてひたすらに注視する師匠、それを真似する弟子。何より周りが大事だ、挟まれたらもうそこで終わり。しかしそんな様子はなく増援も気配はない――。
「そう……、でもお弟子くんゴーレムとはね、自動人形なの。要は誰かが作ったのか……それとも魔力の凝縮が行われたのかな……」
目線で語るし、弟子に言い聞かせる白の美少女は的確に教えてくれて、「色々注意はあるけどもだ、ただ一番面倒なのは奴がただのオモチャという事だから、ただただ抽象すぎて属性などが良く分からない相手で――」
脳筋のようにも思えるし、属性があるようにも思う。目的があるかも不明、ニンゲンをどうしたいのかも。
一応ヤツの見た目は岩一辺倒というよりかは色のある石が混ぜ込まれたセメントの塊であって、それなのに何か汁が垂れてるのだ。
硬いのか柔らかいのか、それは止めどなく水が滴る理由があるのか。
しっかり確かめる必要がある。なので、そのまま上へいく師匠。
「そう……、良いかな、お弟子くん。アレはさすがの私でも手を焼くよ、つまりは、どういう事が起こるか分かるかな」「えと……、苦戦するって事ですか。誰かの助けが欲しいって事ですか、頑張りますよ僕、囮でもなんでもやります……っ!」
「いいえ、むしろ逆だよ。私が本気で戦うという事はね、強烈な自然法を構わずぶっ放すという事だよ。つまりアナタを巻き込むかもしれないから……」
「いえ、むしろだったら僕を選んで下さいよ、勝つ為にそれならば全然構いません――」
剣を持ってうなずき構える弟子くん、まだ幼い、でも覚悟の顔は、「僕はアナタの為にケガするなら本望だ」「そういうの全くの却下――」
あっさりとした言葉。
ただその言葉にうなずいて、師匠は指示するのだ。ポーションもしっかり握らせる。最大の困り顔。
「じゃあお弟子くん、キミは別方向からで囮で……、私は初手で色々考えるから、あまりゼッタイ突っ込まないように――」
そうだ、奇襲が全てだ。そのまま弟子くんを囮に丸いドーム状の壁を蹴って頂点まで上がる事にする。見つかりにくい人法を使って、それは罠がないかを見定める事もあるけど明かりが必要でもあるから。
そうして一方で一気に死ぬ気でポーションを飲むお弟子くんは「ぶふぉ――!? ウ……うぉおおお! かかって来い、ゴーレムゥ!」げふ……っげふぅ――。
剣を持ちて威嚇する少年、彼女は様子を見守ると天井近くに炎をつけた。そのゴーレムは大きい、体躯は2メートル半、体は角ばってて尋常じゃなくイカツイ。そいつがそこから数歩、弟子くんへと歩き出した時に――。
「そう……、じゃあ行かせてもらおうか――」
思いっきり勢いがついた一撃、降って来る「オドの学、汲み上げ八仙。そう……、これ位で壊れてくれるのなら良いのだけれど――」
かなりの警戒だ。オドの粒子であらゆる物を鎮静化しつつ真上から降る。それはまるで黒蝶の姿、止められない羽ばたき。一滴の混沌の翼が覆い被さり……。
がきぃいい!「フゥ……フゥ……硬い――。かなりの強さだね、そう……私でも手間取る」
ゴーレムは強烈なその一撃にすぐさま攻撃態勢に入った、師匠たる私を追ってくる。ソレはがっしゃんガッシャンしてくれると思ったのだがその2メートル半が素早くて初歩から全力。
元気なゴーレムなんてご遠慮したいの、そんな大きな岩の手のひらなんてまっぴらで。
ただオドが効いている――「そう……とりあえずね、爆撃でも喰らってなさい……!」
私は先に効果範囲外に出て必死に詠唱、大きな魔法の炎でぶつかって。
それは弟子が舌を巻くその手際の良さ。その至近距離での一撃に、あまり意味がないな。ヌメっとしているのが蒸発するかとも思ったが威力不足かもと。様子からして弱そうだと判断した右への攻撃も効いてないしな……。あと少ない火のマナをかき集めるから弱点を期待してた事も。
更には人法を宿した剣で斬るが……「ちぃいい!? なんだろう、そう……、やはり難しいの。不快な感触で」
なんとなくちょっとおかしい。人法への反発がある気がした、まさかとは思うがそれ用の……「僕も行きます、させないぞ、でやぁああ!」
「お弟子くん気をつけてっ……、そいつ私でもかなり硬いからねっ」




