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「はぁ……はぁ……、ふぅ――。だけれど、そろそろかな、帰ろうか? そう……波形がね。キミはこの量はさすがにか」「はぁ……はぁ……はぁ……――」
この真っ暗な中での戦いは一気にげっそりとしたのだ、さすがに面倒と言えた。うなずく。それに恐らく師匠はオーガとの戦いを望んでいるのだろう。僕はへとへとで1人動けず闇に囚われそうな自分を恥じて、「ごめんなさい……、僕がもう少し持っていれば」「そう……、全然良いから。しょうがないの、キミにはまだ難しいね……」
この殺意のWAVEは基本、囮になるような行為は最終手段だから。
人影が見えてしまうとモンスター共が勢いづいてしまう、止まらない、だから弟子たる者が手早く颯爽と処理できねばならなかったが。
「うんそう……、でも良い経験だった、頑張ったよ……お弟子くんは」「あの……、はい。でも2日でなんとかしましょうね、明日も必ず頑張ります、ゼッタイ踏破しましょう師匠!」
その思った以上にやる気溢れる言葉に、もちろんだから。そう言って暗闇を抜ける二人、火は置いていく。それが一つの逃げ道となる。その姿を見つめる目線が、扉の先へと消えても黒の隆起は。
――――――――――。
「そう、それでどうだったかな……? 師匠としてはね、こういうのを慣れて欲しいの」
「はい、分かりました……っ。とりあえず僕は一刻も早くダンジョンを慣れます、師匠に少しでも追いつけるように――」
その弟子の言葉にうなずく。向こうでは、あの扉を忌避する姿。やはり真っ暗は心身共に疲労をきたす。そしてそのまま出ればもう夕方で。
「ふう~~、良い空気ですよね。気持ち悪かったから――」
とりあえず着ていた物をすぐに見やり、ヌメリの形跡を探す2人。宿でありギルドへと入って行く途中、背中なども見合って……、その弟子くんの柔らかい髪を撫でながらお姉さんは。
「あっ……、それでね、ごっめ~ん。弟子くんはねぇ……そう……、今日は馬小屋も無理になってしまったって」
「エッ……。えと、何か? お金ではないのですよね……、確か依頼になんて頼らなくて良いって、そう豪語されてたと思うんですけど?」
「んーーそうまぁ……、色々あるかな……。色々あるよね? 人生だもの~。じゃあじゃあ、野宿しようかな、2人でいつものだ」楽しいからねぇ~~。
テキパキとお仕事をしなさる師匠。いつもは全く手伝わないのに、弟子がその様子を見やる。師匠が視線を避けて鳥のようなクビ芸をする……。コケッ……こっこっこ、鳥さん師匠だよ?
可愛いよね。でもじぃぃ……っと。「あぁ……、えと。そう……。本をね、買ってしまいましたね」
やっぱり大きい町は良いなぁ、って☆
てへへっと笑うテヘペロ美少女な師匠に、弟子が眉根を上げて見て来る。そして取り出し晒したるもの、それはたった一冊だというのだ。次を求めて20秒ほど固まっちゃったもん。その為にあと15日もあるだろう旅路の、その路銀を全て費やしたと。
可愛らしい顔してもダメらしい。夜は更けていく。
「でもとりあえず、一度目は成功で良いんだろうな……。僕はこれからも師匠を見張らないとだぞ」
はっ……せいやっ。どやぁあ!
ふ ふ ふ……ふぅぅぅ……。はぁ……、ふぅ……――でやぁああっ!
とりあえず足を使ってひたすらに俊敏性を高める、あの暗闇で一番分かったのは体幹とスピードの両立。そうして師匠のあの姿。
僕は練習と同時に目を凝らして人影を気に掛けている。あの人を一人でやる訳にはいかない、しっかりと僕が見張らないとだ。だって聞いた声は。
死にたくない……死にたくないよ。誰か……名前を。
名前は。
もう溶けて消えた陰影、あの中で家族はあったのだろうか。そうして彼女だけは死んだんだ、彼女だけが犠牲なのか、助けれたのだろうか。追いかけて来ているソレに聞いてみたい。
小さな黄金はまだ。
はぁ……はぁ……
寝苦しい、闇。あの闇は鮮烈だった。「でも死ぬ方が良いの……、坊ちゃま、良いですよ……、アナタは」
やめて……欲しい、ヤメて……。お願いだよ、君がそんな事を言わないで。だって……、だって誰よりも輝いて見えた彼女は。でも最後は本当の本当に狂って―――。
この力の事を知っていたのだろうか。見えない、でも唯一名前を知ってる、覚えている。だけどその名は言えないよ、だって言ったら……。
キミは……、僕を殺したかったのか、それとも苦しめたかった……。はぁ……はぁ……、僕は何も……何も分からない――。
「全く……、愚かだな。お前は――」
その斬り捨てた男に笑う。




