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「ぎゃ――!?」

 ふぅぅ……。

「気を抜くな――」

 すぱぅ!剣を翻し、その闇から湧いて来た化け物コボルドを斬ってヤル少女。やはり師匠の力はすごいと言えた、たったの一撃。今まで育てて来た数と、その面倒見の良さからの成熟、更には分け与えられたスキルが使える事。

 そう……、まだいるね。とりあえずは倒そうか――。

 見惚れてしまう。闇の風幕にも恐れない、ドプンっとばかりに走り込むから。その相手する焦燥感のコボルドはまるで疫病でも患った老婆に見えて。真っ暗闇の中でもあっさりとほふって殺す師匠、光を掲げてばったばったと。


「あぁ、ありがとうございます師匠。でもかなり暗いですね……、聞いてた通りだ――」

「うん、そう……、やっぱりそうみたい……、だってほぼ無光だよねって……?」

 見渡す、剣の血を振って闇の海、そこは正にさえぎる黒きしじま。既に光は全く消しているから、「選んで良かったみたいなの……、うん。こういう所って必ずあるから、だから良い練習になるんだよ……お弟子くん――」

 微笑み、渡してくれる輝く石が。いくら美少女でもアゴとおでことだけが光るのは怖いなと。

 でも身につけるべきダンジョンの仕事だよ。暗いダンジョン仕事に慣れないとお仕事が減るし色々な戦い方に順応できなくなる。魔は闇を好む。


「でもね、お弟子くんに温存されてたから、そう……、かなり動けるかな私? じゃあ初日でも行けそう、良かった――」

 少し確かめるように進み、闇でも素早い動きと剣閃。そうして何より夜目が利く姿。まだ潜んでいたコボルトをあっさり切り開くが、さすがに師匠でさえ頭に傘を張る。

 何が落ちて来るか分からないよね、風も凪いでるし視界深度も0という悪環境。少し歩いて行くのだけれど、気配が気持ち悪いのだ。魔物が少ない――。


「はぁ……、はぁ……、でもモンスターの巣だと思うと、やっぱり恐怖もひとしおですね」「そう、そうだね……。それに何よりこいつらは何を目印にしてるか分からないと――」

 ついて来れてる弟子を確認して、うなずくの。でも小さな灯りとなるその脇で光ってる石だけではほんの2メートル先も怪しい。

 まだ狭い渓谷のような場所だから良いものの。

 すると妙に開けた場所に出そうなのだ、音の反響で分かる。上に解放感があるような、それでかなり下では水が流れているような場所。

 滝が遠くで聞こえている。

 すると師匠はその場に行く前に膝を折る。大地を聞いて、その場をしっかりとクリアリングし――。


「そう……、それでね? こういうのは必ず必要になるよ、作り方を覚えておいてお弟子くん……」

 そこで取り出したのはかなり長い棒。剣の鞘に引っかけやすい仕掛けがついてる。掛けていた2つを繋げて更に長くし、その先にカゴのような物をつけるのだ、当然それの中で何かを燃やすのだが……。

「そう……、手元に炎や光を持つのは危ないんだよ、それもかなりね――?」2メートルもの先へとその炎を渡した。まるで釣りをしているようだ、そう、釣りだ。ほら……、来たね。


 来た……。

 来たぞ来たぞ、来た。

 キタキタ来た―――――。

 闇の中にポツンとエサが降り立ちて、一目散に何かがうごめいた。

 闇ですら黒い隆起が這う、赤い目が点々と光る、点滅する。炎の辺りを必死に凝視し……頭を揺らして舐めるように、血を求めるようエモノを探す。

 でも気配だけだ、気配だけ。


 肉だったら良いな。食べたいな……。

 飲み込みたいな嬲り殺したいな。血が見たいぞ、滅茶苦茶にしてやりたいよぉぉ……。

 はぁ……、はぁ……、肉を見定めるね。早い物はもう既に周りを見回し始めている、凝視だ、凝視――。


「そう……、あのね、お弟子くん。一番は光と闇の境目、ココが良いんだよ、上からも見えにくいから。だから強襲を避けやすい」

 闇からも光からも、その狙いが一番取れないのは狭間、揺らめく境界。そうしてなるべく火は背負って戦う事を言われる。それは闇を警戒さえすれば立たれた陰で分かるからと。

 口元から白の霧が舞う、止めどなく、見えない空気が今も刻々と変わってってる恐怖。闇の中でポツンと光る焚火が妙に不気味に揺れ。


「そうそれで……、進むから、ココからは縦移動を心がけて、そうして必ず周りを見渡して……急に崖になってる場合があるからね。それで剣もなるべく横に振らない」

 そう言うと壁に背をつけるようになった師匠が、目線の左右して前後を見るように進む。

 自分も同じように、特に後ろを言葉通り警戒した。視脳の学で必死に辺りを探る。汗が流れ。


「師匠。でも言われましたけど、本当にアナタは一人でそんな……」

 うなずく師匠。

 ニンゲンは闇に弱い。敵だってそういうのを知ってる、生物的に弱い部分を突いて来るに決まっているから。だから空間への把握能力が試される。

 闇。

 2メートル先で映し出されたマップを忘れない事、決して。小さな小さな蓄光を大事にすべき、当然その色は炎色だ、なるべく見つからない事を。

 もし炎が消されても慌てない、そして後ろや上からくる奴らを見落とさない事を。


「蓄光石は動かさないんですね、脇の下において隠せるようにするんですか……。徹底するんだな……」

 その言葉にうなずく美少女。だから服がひらつくものは禁止なんだ、それが揺れて下手に光が隠れるとコッチの威が狩り取られる場合がある。あと蛇に入られないようにする必要。

 だがやはり、追いかけてきてるんだろうか……。

 闇、静かだな。

 恐らく絶対僕らを追ってきている。まだ来ないが、それでもいつかどこかから――。


「ふぅ……、ふぅ……、そう……、お弟子くん。音がしないような、小さな物が落ちて来ることがあるけど。絶対に騒がないでね」

 伝う手の先に、50センチクラスのムカデが這って。うなずく。

 すると一匹、モンスターが近づいて来た。ゾクリとする。のっしのっしと深い闇をまるで気ままに走って来ている。つくづく別の世界の生命だと分かる、敵対生命体だとも認識できて。それに立ちはだかったボクが相手をし。

「そう……、来たんだ。そうだね――。闇って動き回れなくなるからお弟子くん、相手の動きを感覚で捉えるの。そう言ったよね……?」

 うなずく。追加の2匹目も僕に任せると。確かにボクには修業が必要だ、ちょうど良いのだ。

 すると師匠の感覚に引っかかる、更に後ろからの気配。師匠は彼を見やりながら時間を測って……。



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