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「あぁ師匠ぉ~……、一人は危ないですよ、アナタは無防備すぎるからぁ……」
見やる、コッチ見た、隠れろ――。
僕はとりあえず師匠に何かあったらすぐに出なければならない。あんな可愛い人に傷を負わしたくはないのだ、追ってきていた。しっかりと見守る為。
あ、動きだしたな、「よしよし」では、ダンジョンの内検をする師匠を僕が保証します、師匠保険、始まります。
え? 大丈夫かって? うん、とりあえずじゃあ真剣に考えた言い訳もあるぞ、あっ……えと、だ、だったら師匠こそ何してるんですか?何してるんですかぁああ。の言葉だけを握りしめるから!
「あっあっ……でも師匠っ。師匠あぶないです、」ししょーーーーーぅ!?
たださすがは自分より7レベル多いだけはあります、心臓が止まりそうです、あんまり強くないハズで。コッチもひたすら見守らねばならない、だって、怖いから。
僕にはもう一つだけ力があった。それはよく言うステータス開示の能力、しかも自分に対して作用させた能力は特化で開示させる。
「師匠……、僕の能力きっと分かってないんだろなぁ……、これ把握してないんだね。あの人は無茶できないでしょうって……」
だから彼女の能力が自分に依存する事を知っているんだな、それで雲上人と言えるほど大した差にはならない事も。そしてそれでも……。
「でもそんなハズないって……はぁ……はぁ……、だって能力は写せても知識がある訳がない、動ける訳がないんだ。だけどあんなに強かった……、この僕のこの体だぞ。それが実践も魔法ともだなんて、どんな――」
当然だが、レベルなんて上っ面だけが大きくなっても強くなれるわけではないよ。
どんなに筋肉があってもスケボが上手くなれないのと同じ、素人ではいけない、コツをつかむ必要が必ずある。
この世は不真面目だ、それでもただ一つだけ違うならば、キチガイという枠のレベルだけは突き抜けている事で。
彼では全ては把握しきれないがただ、立ち居振る舞いだけで十分……。
「スゴイ人だ、スゴイ動き……。僕が師匠になって欲しいと思った唯一の人で……」「せいはっ、でやぁああ!」
白の髪が闇夜で煌めき、その美しい少女にうなずく。軽やかに舞い重い一撃で切り払う。
恐らくは相当な研鑽を続けたのだろう事、それはでも教える為だけに磨かれたのだ。あの師匠との手合わせで衝撃を受けたもの。
「風格を感じたんだ……。師匠の中の師匠だ。だったら僕が得られるものを残そう、一緒に……望めるなら一日でも多く」
僕が勇者になるまではね――。
ナイフを握る。周りを必死に見定めながらも可愛い師匠を見守る僕。とにかく安全な師匠生活をエンジョイさせてあげたいのだ。ただ後悔した、すっごい心臓に悪いよ、その初めての追跡。
今は大きな門を前に、かなり強かった敵を見事に倒しきって剣を収める美しい少女はでも。
「……――」
頭をかく。
「そう……、ふぅ……ふぅ……、まだ途中なのに、師匠失格。でもこれ以上は危うい……危ういの、こんな所で死んだら師匠界の笑い物かしら――」
でもこの先へと行きたい、2人でなんとかできるだろうか?
できなければ言い訳を考えよう、とりあえず引き返そうと思う。最後に下層への扉に手をやった。この先で考えるべき事は火のマナの枯渇と水が――。
「あぁ、帰るのかな……。良かった」
少し頬を叩く少年は、「あの人は失えない。どうやってでも守るんだ。アレに他の意味が無ければ大丈夫だよ、でもまさかこんなことがあるなんて――」
運命だと思った。
そのまま弟子を育む下地をつくり終えた師匠と、そうして師匠が頑張って仕事してたのを見守った弟子が、2人、安堵のため息をつく。これで弟子が師匠が明日もバッチリだ。
「そう、寝よう……。でも良かったかなぁって……ショートスリーパーのスキルがあってね。ラクサス、あの子に感謝だ……」
ふぅ―――ぅ。
まぁ少し、あの子は腸内環境弱者を克服しなかったけども……んふふ。
実は私……、育てたその子達にある程度の花を開かせられれば、その能力の一端が使える。例えもし喧嘩別れになろうとも何パーセントかは使えるの。
大体は多くても15%といった所、しかし芽吹いた時の幸せといったらないなって。
「そう……、色々もらえたね。小さな事も積み重ねれば、かな……」この小さなスキルの一つ一つ、あの子はどうなるだろう、弟子たちは今どうしてるだろうか……。
ふと歴代の弟子たちを思い返すのはそれは今はすごく良いんだ。ただ惜しむらくは自分がトガった何かを得ることは無いだろう事。
弟子たちに貰ったこのステータスだってその先へと育った記憶がない。
でももしもっともっと長くいればどうだろうか……。でもそんな長くいる弟子なんているのかな。
なんとなく今も苦手で。
自分のオリジナル・スキルが開いた事も無いし教科書以上にはなれないかもしれないと、ふと凹む。
「あ~、そう……奥義の伝授とかは無理かなぁ……」
朝の陽ざしに微笑む。いつかは自分が育てた子に自分らしい奥義を託すのが夢だったが。まぁ無理そうかな。
私は真面目しか取り柄がないのは昔っからだな。
小さな男の子が大口開けて「ふぁぁぁ……ぁ――」
「そう……、それはなんだろうね、お弟子くん? 寝不足かな……? いけないよ、師匠と弟子、二人のダンジョンでそういうのはダメだと思うの」
「すいません、いや……あの――」ふぁぁ~~ア。
深夜2時に帰宅しての、6時起き。彼女は4時間寝れればフルである。
「そう……、それでダンジョンにお昼に入るのはね、眠くならない為もあるから。本当なら夜の方が性にあってる場合も多いんだから」
白が揺れる。それに夜の方が人間も少ない、それは良くも悪くもだ。定形文だけをなぞってはいけない、スキルとの兼ね合いによっては夜に入ったほうが楽な場合が3割とみているらしい。
朝の光、ところどころで声がして。パーティーを組んでる男女を見ながらも、しょうがないねと怒られて、自分達もその鍾乳洞に歩いて向かう。
「ふぁい……。では行きましょう」「なんだい……? 怖くないのかな。そう……、前のダンジョンよりかなり難しいのにな」
少し寂し気な師匠。だがとりあえずこの師匠を育てたいので、サっクサク進む。
「やはり薄暗いですねぇ、情報通り……」「そうねぇ……」
まぁ昨日も見たが斜めな穴がほとんどだ。ジメっとして涼しい気配、道幅は人間3人分と言った所。茶色のヌメリ世界の中。
「そう……宝箱、あったね。見ると良いよ」「はい――」
やはり宝箱は良い。そう言った顔で駆け寄って行く。
とりあえず罠が起動して上からの落石が……。
「あぁそう君、すごい――。アレを避けれるだなんて、すごいすごい……っ」
「えぇ、だって師匠の弟子ですから――」
用意して抜いていた剣を収める姿。僕はとりあえず昨日見た姿をバレないように再現していく。今の罠もわざと踏んだ「そうそう……、良いね、そうだよ……っ。もっと頑張ってお弟子くん」
「はい師匠! あぁ……でも、うぐぅ。だけど見てたより大きいな、アックスビークは。くちばしデっカくて硬いし、それにキモいんだもん――」
ただモンスターはやはり厳しいかな。師匠ですら連戦は厳しい相手だったし、僕では一筋縄では全くいかないんだ。




