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「そう……、仕事はないかな」
「らっしゃい……」「私達はここのダンジョンに来たんだ、ダンジョン絡みで仕事はないか」
その言葉にすぐに開けっぴろげの依頼書を指差す、出ているので全部だと。字を読めるか? 上からヤバいぞ。そう言うだけであんまりギルドカードを見る様子もない。
正直、必要性すら感じない。弟子くんがその実物のギルマスを拝んで驚いているから。少し夕飯には早めのその、薄暗い中で酒を飲み交わす宿は。
「そう……、ギルドで大事なのはただ一つなの。近所の馬鹿ガキが変装してやってきたらぶん殴って返す。あとは一般人でも良いから――」
その言葉に苦笑しながらうなずく弟子くんを横目に、おめぇしなかったのか、珍しいなってギルマスが。
笑う。私はまず一番難しそうな物を見やるけども、さすがに師匠たる私を持ってしてもソレは……。
「何日くらい滞在するつもりで?」「そう、2日か3日が良いかしらね……。私学校を目指してるの、しかも弟子を育ててるんだよね……」
その言葉にうなずく。この土地のダンジョンは良いと聞いたと、「あぁ~……なるほどぉ? だが結構難しいねぇ……、稼ぐならば。弟子ってのも分からんが、急いでるようだし、1日2日で踏破するのは無理だぜ」上級全部が無理だな、これじゃ――。
「そっかぁ……。でもここのギルドは大体あそこと、もう一つ目当てだったよね? だけどやはり……うん、難しい方に行きたい」だから気をつけてね……、お弟子くん。
「はい師匠。ところで師匠はその難しい方に一度でも行った事はあるんです……?」
その言葉に首を振る。
身が引き締まる思いだ。
そう……、それで最奥を覗いてみたいから……、ギルドマスター。その途中にあるのね、この滝は。水源魔力の排斥、そしてコイツがきっと……ボスなのかしら?
ブツブツ言って金を出す。ダンジョンの地図を買う為、それにうなずきヤル気があるとみなしたギルマス。
まけて欲しいと、300に290を出して渡した。うなずき指を差して説明をくれる、何気に字が読めるかどうかもここで試されていた。
ちなみにお金は大体10倍にしたら日本円だと思えば良いから。
「あぁ、そうだぜ。ここはオーガが出没すんだわ、結構ヤバい。知ってるよなぁ? だから行くならこのオーガの水源になってるのに行きな」
何せ巣は駄目だぜ、駄目だ――。
オーガは強い。だから水を定期的に浄化して嫌がらせを、もとい牽制を行っているらしい。
この村はモンスターでも凶悪かつ出張と追放大好きで有名なオーガ・ハイブが近くにあって、何気に危なかったりするのだから。
「そう……、じゃあね、この水源が行きたいかな、受注で頼みます。期間は2日」
「あぁ良いよ、あのダンジョンは誰もが恐れるんだ。それで救護保険は必要かい?」
「保険、いや――。あぁ……」
弟子を一瞥する「あぁいやっ……ボクは全然構いませんよ、僕は必要ないですっ。だってもし師匠が死んだ時はもう僕の命も問わないで良いから」
フっ……――ふふふ……そうかよそうかぁ? オッサンから笑いが漏れている。少し恥ずかしいが、それで良いならそれで良いだろう。
いや、良くないが。まぁ多分ここは難関だし、ほぼほぼ善意の保険だろうし。
あぁでも……良くないな~……。
「じゃあ受注って事でよ。でも仲良くしなよ、二人だけなんだろ――」
ガランガラン……。「あぁ………、良いかい? お弟子くん。保険くらいかけなさい。ああいうのはヤメたまえよ、お弟子くん……っ」「へ? なんででしょうか、だってお金の無駄だと思ったんです、返って来ないですもの。あれって探索してくれるだけです。師匠は僕が絶対に守りますし!」
すっごい恥ずかしいので、とりあえず歩く。早急に「そ、そうだけどね? とにかく君を生かすのは大事な事なの、良い加減分かり給えよ!」
恥をかかされた……。こんな男女2人、可愛らしい坊ちゃん連れて。まだ見られてる気がするの。
そのまま宿で素泊まりだ。馬小屋で一緒で良いかと思ってたが止めた。あぁ~……、でも、宿だとまたギルドマスターに顔を合わせないとだ……、ヤダなぁ~。
何に見えただろうか……、少しらしくない事を考えていて。
そうして熱冷ましになんとなく町を見ている、まぁそこそこか。ただ弟子くんがかなり残念そうにしてるけども。あんまり灯がともってる様子もなくだだっ暗い街並み。
弟子くんがあの武器屋で羞恥プレイに戻りたいと無邪気に言って来る程度には何もないね。ただ勘弁して欲しいよホント。
「でも結構質素なんですねぇ、お師匠さま。ダンジョンで潤ってるってよく聞きますが、でもなんとなく遊べる場所って少ないです」
「そう、ねぇ……。でもだけどもだ、確かな事はお弟子くん……? この村には大層な火の使い手がいるはずなの。ほら――、あの街頭を見てごらんよ」
「えと……、はい、えと………。 何か違うんですか師匠? 確かに、うん……ちょっとだけなんか、後光が白い気はしますけど」
師匠の指先で見やるそこには結構頑丈そうな棒が突き出てる、ワラ家からにょきっと一角獣のごとく伸びているのだ。
地面に立てると誰かがへし折るからね、そういう時代だな。
それは全くもって普通で、差異はないように見えるただの街灯。
「ううん? そう……、我々は冒険者だよ、気付くべき」
その言葉にうなずき、お弟子くんは必死に視脳を働かす、良い子だね。学習はそうやって起こるの。
するとふと村人たちが出て来て、おぉ~それが珍しいのか~い?なんて言って、自慢げに、そうしてべらべらと「あぁアレは火に『零応』を使った物だよぉ~、お嬢ちゃんにお坊ちゃ~ん」「そうそう、分からないだろうがねぇ、なかなか貴重なんだぞぃ? そんじょそこらの奴らじゃ真似できんよ~、ひっひ」
うなずく私。まぁ……、あまり大して娯楽の無い世界だ、ギルドも強力だし自慢したいのだろうか。
「そう……、そうなんですよ。ねぇ、お弟子くんもさすがに4然8応(よんぜん・はちおう。しぜんも可)。分かるはずだよねぇ?」
問いかけに弟子くんもうなずく。
4つの然とは即ち、火・水・風・土のオーソドックス。そして応というのは対話の仕方で。
自然には言葉で語り掛け、そのうち応とは神経に来る感じの精なる霊属へとパッションをもちニュアンスを伝えてバイブスを変換し応じてもらう。
その応の中での零とはだが、その活動力を残して停止する応で、いわゆるところの氷結に属するものである。
「そう、それゆえかの炎はだよ……、完全とはいかないまでも熱くないハズでね? そういうふうに応じてもらっているの、だからもしあの炎が村に火をつけても熱くない、事故が起こらないの」




