20
「ふぅ……、さすがになかなか……、はぁ……はぁ……コレはすごい威力で」ちぃぃ……――。
煙を割る女、だが追撃。その戦斧が思った以上に早い動きをするから。1メートル50もの刃は正に狂気だった、こんなにぶん回されれば死体になる事うけあい。
カスっただけでイスを14に砕く、逃げてた冒険者を引っかけただけでドアまでぶっ飛ばす。連撃にも疲れる様子も無しで。
あぁ……やはり天井のあの傷はこの男のか――。
しかもその攻撃を剣で受ける訳にはいかない状態、明らかにこの剣じゃ分が悪すぎるの。
「てめぇッ……ナニ調子に乗ってやがるよっ、エ!? そうならコッチは全裸にしてェ……その穴を丸見えにしてぇぇっ……、それで村一周やるんだヨ、その後だ、血まみれでも覚悟しろよォ!?」
ぶんぶか振り回される斧になんとか身をよじるが、周りもこの状態でも歓喜する気配なの、もう用意をしてるな、「良い趣向……。確かにそうなりそう」
男たちが囃し立てている。恐らくは逃げられないだろう、連れ込まれる。酒場で永遠に回るだろう事、だが力勝負では無理だ……剣がすぐにへし折れるはずで。あと断言しよう、余裕であのエリマキトカゲより強くて硬いと。
「そう……、じゃあね、すぐに必勝としようじゃない、羅列・ロウソク――」
人法を使い足に炎を宿す。そのハッキリと見える炎には誰もが驚いた、こんな強烈なのは滅多と見ない程。何せ人法とは内在の力だ、それでも外に溢れて吹きだすその炎。
それを一気に収束させるが、攻撃力ではなくて足に……!
「食らって……、ふぅぅぅ……ウ―――――」すさまじいスピードが、それに乗った攻撃も。
攻撃力の差を一気に縮めるほど、切られてヒゲが――「ぐぅぅ!?」
「よし、イケる」
縦横無尽の移動。しかもどのタイミングで来るか分からない加速。しかし相手もまごつかない、歴戦なるドワオジ。戦斧を横に振り回すスイング、大いなる回転の一撃!
だがしかし通常時の速度でも避けきる師匠は、背面飛び、斧を触って飛んでそのまま空中斬撃! 防がれた、直後に硬直を加速でキャンセルだ、更に後ろをとった、身構えていた体が彼女の攻撃によって崩れてく。
「押してる……、師匠、頑張ってぇええ!」「ふぅ……、ふぅ……、そう、見ときなさい、師匠の力をね――」
直後の戦斧はそれを避けきりながら私は椅子を足場にして飛んだ、壁をさらに蹴る、加速の一撃を更に変化させて――!
「ふへ――、小賢しいよ。うらぁああ!」
「ぐぅうう!?」「アイツ……、あの速さが見えるのか、師匠!?」
かなりのスピードだったが、レベル22は伊達じゃない。良い感じに捉えて来たのだ、体当たりで崩され縦回転、吹き飛ばされた。その直後に絶対に避けねばならない戦斧の巨大――!
「ナァもう……足や腕なんぞ無くても良いよなぁ、お前らぁあ!」
その鼻をカスる重い重い凶器はなんとか避けた。が、そしてよろめけば追撃の一撃で、受け止めて見せるのだ、一旦崩れてしまうと終わるから。
足で板を削り削り……見合う2人は剣と戦斧で鍔迫り合う。
「どうだどうだっ……、もうオンボロ剣が半分まで切れてやがんの、やっぱすげぇええ!」「あぁアイツ……、かなりだよ。あんなゴミ使ってて洗練された殺しの道具を受けるだなんて――」
「しかも力がかなり強い、どうなってるよ、どうなってるぅ……!?」
そうだ、かかったよ――かかった。この能力は完全に男女平等、ある意味見た目なんて吹き飛ばす程のスキルだ。ハードパンチャー・師匠、そんな名前をご学友に拝命するほどコブシが強くなる、そうなれるスキル。
コッチがむしろ体当たり――。
そうしてコブシで殴り倒しての、少女の微笑み、超・近距離を挑む白雪の気迫。
コブシが硬いのだ、びっくりしてその連打をいさめてくるドワオジと力比べで押し合い「そうねぇ……、同じ位かしら? だから、ふぅ……ふぅ……どうとでもなる――」
刻まれる血管、更に更に怒りが走る。当然だ。力自慢で前衛たる者が、こんな非力な少女に同格と言われたのだから。
それはミノタウロスと互角に組んだ事も、このコブシの強さだけで暗殺者を退けたし仲間の回復のため10の敵を押し出した。マっパなら最強と言われ、コブシで切り開いた人生を。
この小手先での駆け引きが上手いだけの小娘が――。
「ふぅぅぅ――そうかよそうかよぉ……、だぁがぁああ、この程度で受け止めきったなんて、100年はえぇえんだよぉお!」「ぐぅううウ!?」
押し合って絡んだ手のひら、そこにドワオジのドワオジらしい血管が、心血が注がれる。
ブチ切れてぶん投げられた、さすがに1回転では済まずに3回転、放り投げられる。
すると体の学だ、更に感情の学に、そうしてチャクラの学までもを一気。ドワオジ、軽いスーパーアーマー、そして分身といった連携までもを。
「一気に来るの……、3学も同時に。止められないじゃない――」長大なる斧の穂先がブレて……その巨大さなのに斬撃が見切れずに目を焼く。コイツはヤバい――。
「うっひょおお!? 来たぜ来たぜ、スキル技ぁああ!」「あの必殺のブッパ・人牛断頭だッ! この調子乗りのクソ女がどうなるぅう!?」
その一撃で決められる。さすがにぶっ飛ぶしかない、体が木クズのようにぶっ飛んで――!
「まずいです師匠、気をつけてェえ! そいつ多分――」
だが更に予想外に突っ込むのだ、スーパーアーマーの力を流用して。ほくそ笑んだオジ、エネルギー継続・微。レアスキルを持っていたんだ。服を掴んで破られ……2つの肉のたわみ、更にはその顔面を襲う、目の前に待っていたのは手で――。
「火・猛応、炎渦号放、だね――」
「な……あぁあああ!?精霊律なんて――」「そう、目を見開いてたのがアダになるの」
しゅボぁあアアア!
そのまま焼き尽くされる顔面、挑発が効いてて真っ向から受ける事に。魔法使いだと絶対に気をつける事なのに。
大混乱だ、見せつけてやる必要があったから、「おぃ……今なにした、ホントにあれ精霊法か!?」「ウソだろ……ウソだ!? どうしたんだ、マナがいつ動いてぇえ」「大体あの強さで自然律も使えるなんてよ、どうなってやがる、どうなってやがるよ!?」
「こんな……、ホントに使えるんですか師匠……、スゴイ。本当に本当に」スゴ過ぎるよこの人はぁァア―――。
声にならない声。その羨望の眼差し、そのしびれるような言葉、やはり良いの……。これこそが師匠の輝きとマウント。
早急に立て直さねばならない、相手が。だがいかんせん剣の力が同格である以上、逆に手を抜いてもらえないのよ。折れかけの剣が完全に、真っ二つにとぶ程の力で撲殺一刀、さらに師匠はそこにあった椅子でぶん殴る!
全員が戦慄している、恐怖して当たり前だ「うらっ、うらぁあ! 私はね……、どんな教え子にも合わせるよ……っ、当然剣以外も得意なのよッ、だってどんな相手にもマウント取れる師匠だもの」
ネぇ―――――ッッ
ばきぃいイ!
ハードパンチャー師匠の全力打撃でその椅子が完全にぶっ壊れた。鎧があろうと複数が突き刺さる、痛いなんてもんじゃないはず。
しかもレベル以上にスキルがヤバい。実はその数30を超えるのだ。
「やっぱり……、この人はおかしいんだ。おかしいと思ってたけど――」
正に万能。
威力は弟子に任せるけれどもね……、それでも中位の魔法まで使えてしまうよ。レベル30が最低でも必要とされるハズのね。
詠唱が響き渡ると誰もが恐れた。それは、国家精霊師の資格が認められる程の――!
「ぎゃ!?」
どばぁああ――!
酒場をぶち抜き男が転がった。
うわぁぁああ、ヤリやがったぁっ!? うっひょーー、ギルドの穴あけは重罪だぜぇえ!?
「んふふ、大丈夫なの――ふぅ……ふぅ……、そう……だって、私じゃなくて負けた方がね……、つまりはあの男が支払うんだものね? それは自分の全てのアナを使ってでも」
全部全部だ。
さぁ、火あぶりパーティーを見せてやろうじゃない。
そう叫ぶと精霊律を仕掛けるフリして足払い!
「それに私って何よりも対人戦が強いから……、何せお弟子を何度ほふって来たかと……ふふフっ。ただ……はぁ……はぁ……」そろそろ限界かなぁとは――。
さすがにあのお弟子くんの力ではこれが全力かな。実験も終わったし遠くから魔法をぶっぱする。もう相手はガードしかできない、勝ちの雰囲気を滲ませた。もし立ち上がったらすぐに剣を取りに帰る気で遠ざかる、腕を上げた。
「ふふ……、完勝だよ、完勝――」
白く透き通るような美少女たる化け物の。
その、ボロ剣であっても光る太刀筋、人法も見事で精霊法まで使える事、そして何より美少女である事に。
それは誰もが恐れ退いていく。残ったのはただただすさまじい金額を請求されるだろう敗北者と、余裕の師匠と感涙の弟子。うん、そう……、テンプレートは果たしたから。弟子よ、そして衆目よ。しっかりと伝説にしたまえよ。
どっかりとカウンター席に座って。




