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「そう……、じゃあ、ほら。昨日使ったのとね? それはどうだったか教えて欲しいの、お弟子くん――」
雨の中、そう言われ、抜かれる剣。そのいつもと同じ気がする剣を渡してくる師匠にハテナ顔の弟子。敵襲だ。
「あぁはい。えと、うわぁ……――? でももうすごい、なんか変わったんだなって……。なんとなく握りが柔らかくなったような……」
うなずく私。そうしてそのモンスター達を斬っていくお弟子くん、そうだね、ウソみたいに軽いだろう、重量自体はそんなに変わってないけれども。
でもまぁ自分に自信が出るような顔をして……フフ、すっぱ斬っていく弟子くん。
ワシが育ててるよ――。
「ふむふむ……そう? 良い感じかな……。これからもしっかりしてもらおうかな」
その剣の切れ味を思考し、非常に楽しみが増えた私は。スピード+1って感じで総合戦闘力+2かしら。ニヤニヤとその剣を見ている、その切り裂いて終わった敵を見やっていて。
「あぁ……、はぁ……はぁ……終わりました。えと……、でもこの改造、まさかボクの為ですか、この剣は僕の為で……っ」
「そう……、当然だ、そうだよ?」「嬉しいです、でも昨日の今日で師匠も休まないとですよ。だって全然昼間は本しか読んでないのに」
「いやぁぁ~、まさかまさかぁ? 師匠たる私の責務はこれなのに、ンフフフ――」
心配気な表情、少年は可愛いなと。でもそれは久しぶりだったから。
だってルチャードの奴は忠告や武器選びなんか一切、私の趣向は何も聞かなかったものね。
まぁ金持ちであったのも理由だろうな、私より良い装備をバンバン買っていたしね。
さぁでは、そろそろ見上げるような森が来たなと……。
「そう……、良い武器をね、見分けられるようになって? キミには色々与えるけれど、それも一流の条件だぞお弟子くん。君は早々に自分を知る事をだなぁ……――」
その真剣な様子にうなずく、大満足でうなずく。明日も頑張らせようかな~って。
そうして歩き出すの、まぁすぐ雨もやむだろうし、少しボロい本を出して、「えーーと? そう、それで……。とりあえずだけれど、戦いだけじゃない、キミは人間法はもとより、自然法と魔法。ときおり神法、それは抑えなきゃいけないねぇ」
基礎の基礎、世界の3大法則。自然法とは、そのままの意味だ。精霊魔法と言えば思い描きやすいだろう、属性がしっかりと決まっていて火に水に土に風に。原初の精霊を頼んで使う物、決して魔はつかないが。
それに対して人間法はスキルとアビリティーの元となる物、内在を流れる力の本流に自ら手を付けること。
「そう……、それでね……? 大問題の魔法とは だけれども。これは歪みを使う所業、人間が魔を使うの。この事は当然にして真の意味でも異端に入るからね――」
その言葉に聞き入る弟子くん。つぶさに見ていたけれども、彼自身の能力としてはあまり極端な気配はない、この年代ならそうだが、それでも平べったい能力だ。むしろ異端なくらいに平べったいなと。
どう育てようかと迷う私は……「それでお弟子くん、まずは君は何になりたいかなって?」「あぁ……、僕はでも、精霊律や魔法は良いかなって……、なんとなく怖いんです正直」
なるほどと。あと何より時間が倍程かかるのもあるしね……、まぁ知識物だし、脳が育ってからと。もう少し後でも良いかとは思う。
さてさてどうするか……、今までの経験を反芻し坂を下っていく。
「そうなるとでも人間法オンリーになってしまうけども……?」「良いです、ボク頑張ります!」
「そう……、でもねぇ、魔法は一応究極なのだよ? こういってはなんだけれども『なんでもできる』ってゆうね、お決まりでたの」「あ、師匠~。ちょっと待って下さいねぇ~……」
その子供を助けてやる弟子を見守りながらも、冷えた山道を行く。村に来る不審者の迎撃だな、ごっこ遊びをしていて降りられなくなった子を撫でている姿。
帰って来る。少し水に突っ込んだ足を温めてやって。
実際この世界は魔法こそが動力である。歴史書を開いてみたけどやはり中世に該当する世界の中で異様な速度で進化が進んでいる、その全てがソレ。ここでは水汲みなんてしなくて良いし火を起こすのに努力は必要ない。
あの誰も彼もが争った我田引水、そんな言葉が霞む世界。
あ……、晴れて来たかな?「そう……、それで少し見えて来たね、お弟子くん、私たちの旅で初めての村がやっと……」
「ホントですねぇ! 僕らの旅の初めての村は……、広いですねぇ~、ふふふ。いやぁ……、ホントに美味しそう」「そうだねぇ……そう、如実に魔法の恩恵を感じるから――」
一面の黄金色。それはほとんどは麦畑で、麦畑の番をするための掘っ立て小屋があると。それはワラかカヤか、家なんてものは小麦のついでの所業。
金色ふさふさ、小麦が香る、焼いたらパンになる。風で艶めいた……濃い太陽のような草の臭いが香る。
食料を大量に供給する場所、その村となるものの周りには2週に渡って厳重に柵が敷かれているね。合間のそこに街灯がぽつん……と置いて。ドチラも粗野なものだがよくある形。
恐ろしい外界から身を守ろうという小さくても立派に呪い、一つの聖域を為す形。
「あぁ……きっといっぱい実るんだろうなぁ~っ、ふふふ。モンスター達が来なければ、なんですけど。ねぇ師匠、ココはどうなんでしょう」
「あぁ、うん、そう……、それでね? あとはその魔法、歪みに関してだけれど、ダンジョンだ。歪みが落ちて来た物が『ダンジョン』として恐れられていて、それ以外は無害とされているよ。でもここにはどちらも無いらしいから……うん」
一応平和、かな?
「え? 無害、なんですか。いや……だけどもかなりダンジョンって多いんじゃ……。歪んでるヤツなんて少ないです、でも困ってる町や村が多いんだ。かなり大きい魔物の巣窟だってあるはずですよ……!」
「そう……。そうだね。でも無害と言いたくなる程ヤバいって事。まぁ戦争以外は小競り合いって言うでしょ……?」
野盗やヤクザが襲って来ても小競り合いだ、つまり、この世界のダンジョンとは戦争級の物が存在し、そうしてそれが時折生み出されるという事を差している。全ては魔の法則だ、ただ一つのルールによって。
踏み鳴らされた道、2人して平和な村へと辿る。




