10
昼間。そこは回廊のようになっていて、まだ使えそうなのに朽ち落ちていて地上の遺跡になっている場所。
小鳥の声と良い陽気が差して、見えるそこは白き岩の眠り城だ、緑の木々も映えている。
死に絶えた昔なら吸い込まれそうだと思うだろうなぁ……、目の前の草むらに綿毛散らしっていうバリバリ肉食の犬が潜んでいるのに気づけなければ。
まぁ気づけないだろうね。
えぇえーい。
「そう……、ではね、このダンジョンに入りましょうか。それで様子見にした方が良いわけだね、新しい新人くん?」
「はいっ……、分かりました師匠。よろしくお願いしますっ!」
「そうじゃあ……、私は常に見ているから。だから安心して欲しいの、死ぬ気で頑張って見せて」
笑い。そして超美少女にして子沢山BBAとまで言われた圧力で腕を組みながら注視する。私と新人君、そのまま光浴びる古代の庭園へと入り。
そこは建物の陰が織りなすグラデーション、光に蒸した石畳を歩いて行く。
「あぁ、あの……、でも僕とっても嬉しいんです! だって僕の師匠になってくれて、教えて欲しい事いっぱいあります。二人だと緊張しますけど、でも目いっぱい頑張ろうと思うんです!」
「そうね……、そう」
「あの、剣とかおかしかったら言ってくださいね……、やれるだけやってみますから。あの、ボクのは我流に近くて。ただ……、あの、後ろからそんなに見られると、その……」困るのはあるんですけどぉ……。
「そう……、でもキミはまだ弱いから……」
かつ かつ かつ……――。ところどころを大地と木々とが浸食する石造りの遺跡、2人で進む。後ろから腕を組んで待ち続けている、きちんと育ててあげねばと。
そこは私には慣れている廃墟であり、この地方では指折りでも正直私には全くで。まぁでもレベル7の彼には決死のハズだけども。
「でやっ、でやぁああ!」
剣を振り回している、理想的に素人。ここは推奨レベル8で2人以上。16歳、高校生2人いれば楽しく回れる、大体そんな感じの遺跡だから。
「そう……、そうなの、ふむふむ……。しっかりと剣は振り回しなさいね……?」
あの一大決闘、そのシャープさはさすがに出ないか、当然だろうか。あとスタミナも問題ありそうなの。だがここはトラップやらは少なくて道幅が大きく戦いやすいから。
だからゴブリンが2匹も来てしまって、手間取る様子「でやっ、どやぁ! あの……、はぁ……はぁ……、でも気になります。少し違いませんか、師匠ってそんな感じでしたっけ」
「あぁ……、そう。良いかな、新人君? 女は時と場所を選ぶんだね」
私はうなずき、その能力を看破しながらしっかりと静かに波形を見守る。でもなんとなく見ているね……、チラっと凝視。あぁ今度は納得して、それで嬉しそうね。なんでだろうか。
それでも私は落ち着いたというか、質素になった吐息をはき出し、弟子が戦いの中「そう……、じゃあキミもね、良い子の皮を脱いで良いんだぞ、イヤラシイ顔して服を脱いで、これ下半身の勇者です~って、ふふふ――」
その言葉に首を振って、熱心にそんな事をしないと言っている、それは可愛らしいとは思ったから。そう……、でも。
レベルというのはあくまで素体の力、その上下する力は変わる。彼は比較的だけどその限界上昇率は高めなのかな。ただちょっと気になるのは――。
波が一斉に動く、バイタルの全てがきちんと連動している、一つの動きによって色々な部分が動くから。
例えば攻撃一つとっても先ずは走りこむため素早さが上がる。だが同時に力が上がるか、それか攻撃するまでは変わらない者も。
チカラの波が見える感じであり比較的数字ではなく波である。
それで今は基本値のフラットからはみ出し続けているのだ。それが彼のスタイルか、それとも――。
「そうね……、多分それは力みでしょう。でも恐らくはまだ口で言っても無駄かなと……」
胸を抱く、白の美少女の前、息を吐き吐き困惑の少年が敵を倒したが。しかしそれは更なる問題を前にしてしまう、指示を乞う表情で「えと……師匠。それでアレはどうすれば……。4匹もゴブリンが見えちゃったんですが」
うん、なかなかの強敵か。ソレはどこかから仕入れた崩れてボロボロの防具までしている、ね――。
「そう……、この場所ならね、スリンガーなんかが良いだろう。持ってるかな?」
首を振る。じゃあ諦めなさい。そう言うと新人君は路頭に迷ったような顔になる。だが残念ながら諦めるしかないのだよ。
「そう……少年くん、しっかり覚えなさい。この世で勝てない理由とは自分であって、その全ては他人じゃないよ。撤退もある――」
その言葉に首を振った。4体相手でも剣を握って出て行く。
だから私はその新人くんの襟首を持って強引に引っ込めるから「こら……、ダンジョンでは前だけでは駄目、上だって見るのよ。そう……」奴らはニンゲンの弱い所を狙ってくるから。
その上には更なる敵、スライムがいた。
もう既に覆い被さってきている、私は避けさせても直ぐにその目の前に突き出したの、やっぱり逃げるしかない新人君は。
「そう、そしてほら下もだね、下っ……! しっかりと見ないといけない、無駄にあがくのはダメだから――」
ほら適当に逃げてしまい、泥沼にはまったな。その音でゴブリン全部に気づかれました。走って来る気配、必死に体勢を整えようと泥とスライムを弾きながら右往左往しての――。
「あぁ……、あの師匠そんな……っ。うぅぅ。そんなにいっぺんに言われても分からないんです。ごめんなさいっ」うっ、うわぁああ!?
「そう……、だからキミは初心者なの――」
結構広大なその初見ダンジョンとモンスター。色んな意味で広大だ。そこはRPGならばこの先の宝箱の事を考えて、序盤だし地味だし早くイベントを目指して。レベリングがどうか、次はどんな町かを考えてと、そんな幸せ気分だろうけれど……。
「あぁ……うぅ――!? ナイフか……、それで4体もは――」
目の前でナイフDQNなんてのを4体も見る、振り回される方はたまったもんじゃない。
だがギリギリだろうか、まだギリギリなら何も問題ないと。
「うわぁあああ!」斬られた。一匹の絡みつくゴブリンを振り払い、剣を思いっきり振りかぶっての、地鳴りがすると思ってそうなフルスイング叩きつけ!
小さなゴブリン吹き飛ばしてから滑らかっぽい攻撃で2匹目を飛ばす。そして冷静に、ラッキーな事に一撃で1匹をヤって、更に更に――。
「ふぅ……、ふぅ……、なんとかやりましたよ師匠、僕やりました――」
だがそれに構ってやるだけの笑顔では、やはり駄目だと感じるのか。少年は奮発した顔で傷だらけでも必死に歩いて行く。良い陽気の中をウロウロうろうろと。
「あぁ、うん。行き止まりか……」「あら、宝箱か、やった! やりましたっ」「それでアッチは水場かぁ~、どうやらただの水か、ちょうどい――」
汗をぬぐったね。
進むその足が止まるさ、目があった。まるでそれは他人の家の食卓に窓から入ったような気分か。複数の眼はやがて、すぐに殺意に変わり――。
「そう……、当然、水飲み場はモンスターがたまるの。しかも問題はね、このみ」「うわっ、うわぁああ!? いっぱい、いっぱいがぁああ!?」「ずがほとんどの生物にとっては重要なの。なんとモンスターも水を飲むんだよ、しかも83%もね――。だから水場は休戦地帯であり、憩いの場に……」
君は歩き過ぎだねぇ、うん。
走って行く彼の背中にうなずく、ただし少年くん? あのね、仲良しで水を飲むのが見れるけれど人間だけは除くんだね~……―――。
追っていく。多種で多用なモンスター達が襲い来るのを見たらさぞや現代人は喜ぶだろう、共存だね、人種のるつぼだ。人殺しだって仲良くやれる。
5種ものモンスター達に追われる弟子を見ながら笑う、アレは大変だ――。
「うぐぅぅう!? こいつ、早いよ、この犬っころ――」
犬に追いかけられパンツずらされそうな感じだ、ただし、マジ噛み、マジ殺し。さすがに難しいか、助けて欲しいと何度も何度も目線が言って……。
「そう……、それはまぁ、私も色々な弟子を連れて戦ったから」そう言うと。うなずくだけ。力の波形はまだピンピンだ、跳ねてるものね。
やっぱり腕を組んで待つ仕草。二人驚き目線を交わしているが、それでも動かない。するとふと師匠が止まった。更に敵だ。
「スキル技、潜行。そう、動かないとね、ほとんどの気配が消せるよ新人くん――」「えぇええ!?」
その間に足の速い犬が2体目噛みついた。だが足が速いという事は、引きはがせるという事だよね。あっあっ、それで……、そう、切り替えるのは早い子なんだね、良いね。グダグダしないのは良いから――。
「うぉおおお!」その足に甘く入った噛みつきに対しての、ナイフの一撃、それは緩かったか。まだ生きてる、もうなんでも良いからと力で犬を投げ捨てる。
ここからしっかりと立て直すべき。そうだ……、そう。しっかり見て。ゴブリンにスライム、オオトカゲにキノコお化けに。犬は面倒だから早めに処理しないとだぞ。
「そう、殴りは無理だよ……固いんだよ。野生の生き物って硬い――」
それで噛みに来る犬の首を捕まえて地面に擦ってぶっ叩く。でも犬は頑丈なので更に剣で叩き散らした。
それでスライムはよく上を取ろうとするから、まだ初級だからね……おつむが平坦だから同じことをしやすいのだから。
「そうそう……、私の目線を追うのは良いよ、新人くん。君はなかなか良い――」
その上からの一撃を避けて。そして次にオオトカゲだ。
奴の攻撃は図太いぞ、なんだか妙に太いんだ。その間に襲ってくるゴブリンがずる賢いだろう、目を放しちゃダメだ。ほら――。
ほら……。
レベルが上がったね。私の力が強くなった、頑張った。失神すると同時にレベルアップはよくある事、そして倒れたので剣を抜いて……。
「しょうがないなぁ……」
特性のポーションを開放。顔にオン。師匠汁ぶっかけ、どぼどぼどぼドボ……――「そう……、知識がなくとも錬金術に関しては本当に、私の右に出る者はいなかったのだから――」
そうだ、師匠としてそこが一番のストロングポイントだと思っているもの。ソコを誰にも褒められた事はないが。
私こういった細々した作業は大の得意だった、昔から。死に絶えた昔から。一番才能があったのはやっぱり引き継いでたんだと、その――。
「ぶげぇえええええええええええええええええええエエエ―――――――――!?」
「そうだね……、効き目がアップした分だけ匂いも味も強烈になるからねぇ?」
ほら、でも死にたくなければ仕方ないよ――。
臭いの元が落ちてくる、フガフガする少年。あと目の前には未だ健在のモンスターだ。師匠は剣一つで一歩も近づかせずに、されど殺しもせず、笑顔でその健在のモンスターを親指で差している。それだけで――。
「はぁ……はぁ……ハァ……!? うぃぃいいいいい」
生き物の喉とは思えない音をまだまだ可愛い少年が吐き出しながら走って行く、これを飲ませると大体のがヒトを捨てるのだ。
一撃目のトラウマには丁度良かった。可愛らしいなぁと……。
「そう……、倒した。うん、私が倒しちゃうとEXPがほぼ0だものね、しっかりしてもらわないとだ――」
知らないだろうし、知られる訳にもいかない話。それは師匠たる者の業か、私は既にカウンターストップと銘打たれている。弟子を取らねばLv1でカンスト。
だからなるべく彼らを甘やかさないようにと誓ってる。あぁ良い……、手負いの犬を死ぬ気で石で殴り殺したから。そしてそこから後続を倒していくべき。
「うら……うらぁあ! はぁ……はぁ……ウラァア!」もう気取った剣ではなく既に撲殺する殺人鬼だ。
そうだ、ソレで良いよ。ダンジョンはそれ。波形がナチュラルになっていくし。そうしてレベルがアップしてた分だけね、14歳から16歳への鼓動が。これで私も30歳の力でやっとベテランへ。
「エライ――」
レベルも1も上がってて「しかもそれで終わりだから、モンスター攻略完了ですね――」
そう言って褒めて。倒れた上から見て来る美少女師匠、その達観した眼差し。そしてすぐに進めと言ってくる微笑み。
風に揺れて流れる髪の毛は透けて……、大ボリュームの胸。陽射しの師匠は可愛らしい。
あ、あ、やめてやめて、その汁は空瓶でもキツイです――。
「はぁ……はぁ……、いや、あの、これって多分……モンスターの顔見せが終わっただけで。終わりじゃないんですよね……?」
そうそう、そのエライなの。私の事を分かろうとしている。なんとか一人で立つ少年くん、もうボロボロ。
だからポーションを差し出すと恐怖するのだ、飲むより塗る方が良いと言うと頭をかき……、大人な遠慮の仕方された。ゲロの臭い。そうだね……。
ただ問題はダンジョンで走り回っていはいけないという事もね……。




