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信じられる物語  作者: 夜君


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第一章 闇と喧噪

 日付が変わりネオンでうるさい街も少しづつ静かになる頃、電話が鳴った。

布団の中の俺はスマホを手に取り画面を見る。会社からだ。時間は午前1時半。まだ2時間は寝られたはずだ。イライラしながらも電話に出る。

加賀谷(かがや)先輩!寝てましたよね。すみません。」

街よりもうるさく感じる。水城(みずき)真帆(まほ)。後輩だ。

「なんだこんな時k」

「あの、その、佐久間(さくま)さんが亡くなったみたいなんです。」

「は?」

「高いところから転落したって。遺書もあって。あの再開発地区らしくて。その」

「まてまて、水城、落ち着けって」

一度、水城を落ち着かせ急いで会社に向かう。雨が降っている。遅刻が嫌で会社から近くのマンションでよかったと思いつつ走る。横断歩道の信号も無視し10分で会社に着いた。びしょ濡れだ。

オフィスには水城と社員数名と、警察がいた。

「君はどちら様?」

警察が聞く。

「加賀谷(りょう)です。この会社で記者やってる人でさっき電話に出てた人です。」

「じゃあ、何となくは伝わっているね。改めて説明すると…

午後10時頃、佐久間翔太(しょうた)さんが鳴砂(なりすな)再開発地区で亡くなっているのが発見された。近くのアパートから転落したとみられ、屋上には佐久間さんのと思われるカメラと遺書が残っていたよ。」

「そうなんですね、自殺ってことなんですか?」

「まだ決まったことではないけど…ね。」

察しろと言わんばかりの目で俺を見る。俺の会社は「北辰(ほくしん)日報(にっぽう)」地方新聞社だ。警察には何人か協力者がいるとウワサで聞くがこの人もその一人だと思う。

「加賀谷さん、念のために聞きますが午後9時から11時頃なにしてました?」

「その時間は家で飲んでましたね。一人暮らしなので証明する人はいません。」

「そうですか。」

それから色々聞かれはしたがすぐに警察は撤収していった。自殺なのは確定しているのか、流されているように感じた。

 

湿った空気が喉の奥にまとわりつく。タオルで髪を拭いていると隣の空きデスクに編集長の大滝が座った。小声で

「遺書の筆跡見せてもらったけどよ、本人のだったよ。」

大滝はマグカップのコーヒーをすすった。

「あの警官、協力者なんすね。」

「ひと月前の事件のリークもそうだ。」

沈黙の後、

「例の町議の件、続けられそうか?」

「…はい。」

「佐久間の分までやりきれ、お前の記事、あいつも期待していただろ。」

その言葉を聞いた瞬間、俺は短く息を吸った。


喉の奥が熱い。

しかし顔には何の表情も出さなかった。

パソコンの電源を入れ、USBメモリをさす。画面の光がゆっくりとつく。

フォルダの中に今まで佐久間が撮影した写真データが残っている。夜の商店街、雨、鉄骨、アパート。

ピントが外れた光の中に、人の影が写っている。だがその影を深く追わなかった。

指先が、無意識に画像を閉じていた。


別のファイルを開く。

<町議の不正資金疑惑に新証言>

文字を打ち込むたび、頭の中がすっきりしていく。

整った文章。筋の通った構図。

画面に映るタイトルを見て、案を思いつく。そして微かに笑う。

「これでいこう。」


雨はいつの間にか止んでいた。

雲の間から朝焼けが見えていた。

今回の新しい登場人物

加賀谷 遼 (かがや りょう) 新聞記者

佐久間 翔太 (さくま しょうた) カメラマン

水城 真帆 (みずき まほ) 新聞記者・加賀谷の後輩

大滝 信也 (おおたき しんや) 編集長

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