表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超絶美形の暗殺者(アサシン)だけど中身はおじさん、帝都の闇を疾走(はし)る  作者: 柊 太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/15

モンド、アーサーを訪ねる

 深夜を過ぎる頃に、シアは俺の部屋へと戻って来た。

「……突き止めたぞ、襲ってきた者の一人が、潜んでいる場所を」 

「よくやった……と、言いたいところだが……どのみち、ヴォルクの手の者だってのは分かってるんだ、あまり無茶はするな」

「――無茶の内には入らない、これぐらいのことは」

 俺はシアに歩み寄り、肩を掴んで振り向かせる。

 そして目を合わせながら言う。

「失いたくないんだ、お前を」

 シアは俺から目をそらした。

 心なしか顔が赤らんでいる。

「どうせ、『戦力が下がるから』――だろう?」

 そう言うシアの声には、少し()ねたような響きがあった。

「そうだ、戦力が下がるからな……大幅に……あ(いた)! 痛いって! 何でつねるの?……こら! 物を投げるな! 危ない! 危ないってば! あーっ! それダメ! マジでダメなやつ!!」


 翌朝、俺はシアにゆっくり休むように言い、一人で宰相の公邸を出た。

 酒屋に寄って十八年熟成の蒸留酒を一瓶買う。

 帝室御用達(ごようたし)のその銘柄は、酒一瓶としては中々の値段だった。

 酒瓶を片手に、昨日教えられた黒門通りブラックゲート・ストリートを目指す。

 ヴォルクの方に取り掛かる前に、あの恐るべき腕前の男、アーサーの正体を確かめておきたかった。


 黒門通りブラックゲート・ストリートに来た所で、通りがかりの町人をつかまえて聞いてみる。

 こちら側から行くと、通りの終わりにある一番でかい屋敷、それがそうだと言う。

 屋敷の前まで来るとすぐにわかった。

 屋敷のある敷地を黒い壁が囲み、通りに面して黒く大きな鉄の門が有った。

 なるほど、これが黒門通りブラックゲート・ストリートの由来か。

 待てよ、黒門通りブラックゲート・ストリートのアーサー……黒い壁と黒い門……。

 何処かで聞いた覚えがある。

 俺は記憶の糸を手繰(たぐ)った。

 ……“首切り”アーサー!


 あの異様な構えを見た時に気付くべきだった。

 アディンやドゥバに、このことを知られたら、いったい何て言われるか。

 “首切り”アーサーは帝国では半ば伝説として語り継がれる斬首役人だ、しかも貴人専門の。

 その歴史は、帝国建国の頃にまで遡る。


 ああ、その前にちょっと解説しておくと。

 現代人の観点からだと意外に思えるかもしれないが、首切り――斬首刑はかなり温情的な刑罰である。

 この時代、あらゆる刑罰は、見せしめとして犯罪を抑止する――実際の効果の程はともかくとして――そういう側面がある。

 だから死刑のやり方にしても、色々と苦痛を伴うやり方が多い。

 火あぶり、磔刑(はりつけ)車裂(くるまざ)き……等々、俺が元いた現代日本人の視点から見ると、残酷極まりないやつがいくらでもある。

 その中にあって斬首刑――首切りは、死刑のやり方の中では肉体的な苦痛が最も少ない。

 つまり、死は(まぬが)()ないほどの罪を犯した者ではあるが、少しでも苦しくない方法で死なせてやる、そういう刑罰ということだ。

 これは俺の元いた世界で昔にあった話だが、若い娘の斬首刑に、経験の浅い首切り人が当てられてしまった事があった。

 泣き叫ぶ娘を前に、その首切り人は平常心を失い、何度も手元を狂わせた。

 深手を負いながらも死には至らず、苦痛に泣き叫ぶ娘に、観衆は同情し、終いにはブチ切れた。

 激怒した観衆の一部が、刑場であった広場に設けられた柵を破ってなだれ込み、処刑人をボコボコにする、という笑えない結果になった。

 とにかく、斬首人は罪人に苦痛を与えないよう、速やかにかつ滞りなく絶命に至らせなければならない、そういう事だ。 

 あともう一つ、斬首刑は死体の損壊も少ないというのもある。


 そんなこともあって、この帝国では、貴人の死刑は斬首刑とされることが多かった。

 ところが、一つ問題が持ち上がる。

 『身分の高い者の処刑を、庶民の首を切るのと同じ者にやらせて良いのか?』と言い出したやつがいた。

 現代人の俺から見ると、死刑にまで身分とか格式の差を求めるなんて、なんとも馬鹿げているとは思う、だが、そういうのが道理として通る時代だった。

 当時の斬首人の中でも最も技量に優れた一人が選ばれ、「皇帝の斬首人」として処刑人の最高位に叙せられ、以後はその子孫が代々世襲でその座と技と、そして名前を継いできた。

 アーサーロム・アーサリウス。

 人呼んで「“首斬り”アーサー」。


 貴人専門とはいえ、そう頻繁に王族や貴族の死刑があるわけじゃ無い。

 表向き平穏な昨今の帝国では、貴人の死刑は、むしろ稀だ。

 だが、斬首人としての腕を(なま)らせるわけにはいかないので、一般の死刑囚の斬首も時々行う。

 アーサーが斬首を行う、という噂が死刑囚たちの間に広まると、ならば自分が斬られたいと、死刑囚たちが(こぞ)って自らの処刑を願い出たという。


 俺は黒い鉄の門扉に付けられたノッカーを使い、扉を叩いた。

 扉が開き、姿を現したのは、一人の少女だった。

 全身黒尽くめの服を着た美少女だ。

「アーサリウス殿に、モンドが――昨日助けられた者が来たと、お伝え願いたい」

「お話は(あるじ)から(うかが)っております――どうぞ」

 少女は門の扉を大きく開き、俺を中へと招き入れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ