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追放ハイエルフと俗物剣士の世界放浪記  作者: あんこ餅
~第1章:神樹の森編~
5/19

追放と、覚悟と、私の第一歩


「お前は……私の誇りだったのだ」


父の声が、大広間に低く響いた。


神樹の幹に抱かれたこの空間すべてを震わせるような重み。

そして──その一言が、

私の胸の奥を、鋭く冷たい棘みたいに突き刺した。


 


「星花族の未来を支える娘だと、信じていた。

 娘としては……愛おしい。

 だが、族長としては──許すわけにはいかぬ」


 


その声音には、怒りだけじゃない何かが混じってた。

哀しみ。ためらい。……そして、諦め。


私は──その瞳を、まっすぐ見ることができなかった。


 


(お父様……)


 


静寂に包まれていた族長会議が、ざわめき始める。

誰かが小さく息を呑んだ音が、耳に刺さる。


 


「リシェリア……

 お前も、あの俗物も──神樹の森より追放とする」


 


父のまなざしが、決意の色を帯びていく。


「ハイエルフとして、掟を破った者に残される道は……

 それしかないのだ」


 


(追放……)


 


ハイエルフの私が──

神樹の森を追い出される……?


 


(……そんなの、怖いに決まってるじゃない)


 


知らない世界。

知らない常識。

知らない生き方。


でも、それでも──


 


「裏ルート確定じゃね!?

 森追放とか、絶対ハーレムイベントだろこれ!!」


 


……この俗物、ほんっとにもう限界。


 


「黙りなさい!! この、俗物ッ!!」


 


怒鳴った私の声で、またざわつきが広がる。


「精霊まで森を去るというのか!?」

「精霊の掟までも破られるのか!?」

「森が……崩れる……ッ!」


 


そんなざわめきを切り裂くように──

ひときわ澄んだ、静かな声が空気を割った。


 


「森を出ることは、本当は許されないこと……

 でもね、リシェリア。

 私は精霊として、ずっとあなたのそばにいるって決めたのよ」


 


ルリエル……!


 


その言葉が、まるで清流みたいに心に流れ込んでくる。


優しいのに、凛としていて。

冷たいのに、あたたかくて。


 


(……ルリエル……)


 


涙が、こぼれそうになった。


 


森の民たちは、ざわつきどころか完全に騒然。


「精霊までもが、森を捨てるというのか……!?」

「なんという……なんということだ……!」


 


(お父様……

 きっと今も、私を愛してくれてるのよね。

 でも、族長としてはそれを曲げられない……)


 


(それでも……私の叫びは、ちゃんと届いた)


 


(本当なら──あの俗物、処刑されてたはずなのに)


 


(森の外を知るエルフはいても……

 ハイエルフが外を歩くなんて、伝説の中の話)


 


でも今──

私の目の前には、その扉が開こうとしてるの。


 


怖い。

すごく、怖いわ。


 


でも──胸が震えるの。

こんなに心臓が高鳴るの、初めて……!


 


もしその先に、

私の知らない世界があって、

まだ見ぬ自分が待っているのだとしたら──


 


私……

きっと、行ってみたい……!



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