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SF作家のアキバ事件簿231 ミユリのブログ 百合熱波

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第231話「ミユリのブログ 百合熱波」。さて、今回は異常気象の熱波で腐女子と百合が爆発的に拡散してる秋葉原が舞台です。


秋葉原の地下で、密かに超能力に"覚醒"した腐女子を狩る謎組織の存在が浮上する中、ついに警察がスーパーヒロイン化した女子達を追い詰めて…


お楽しみいただければ幸いです。

prologue キャミソールより怒りを込めて


猛暑が生む奇跡。ミユリさんがメイド服を脱いでキャミソールだ。営業終了後のバックヤード。眼福。


「暑いわ…こんな日に空調が止まるナンて」


ケーキスタンドにあったカップケーキをつまむ。むしゃり。うっとりと目を閉じて味わう。あぁ甘い…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ホールでは、ほとんど半裸のスピアがモップ掛けをしてる。汗ばむ肢体。太腿をつたう汗。振り向く。


「あら」


扉の向こうにマリレ。スピアが薄く扉を開くと、熱気と共にメイドが滑り込む。見つめ合う。そして…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


バックヤードから出て来たミユリさんは、ホールの物音に気づく。扉を薄く開けて様子を伺う。何と…


「来て。私、待っていたのょ」


スピアとマリレが両脚を絡み合わせ貪り合うように愛し合ってるw首筋にキスしてヲ互いをヲし倒す。


「ウソみたい。私、どーなっちゃったの?」


スピアは叫び、全てを許す…


第1章 アキバ熱波


"今日で1週間、真夏日が続いています。未だ梅雨も明けないのに、信じられない熱波が秋葉原を襲い、百合を誘発しています。気温は夜になっても30度を超えて…"


夏のラジオが悲鳴を上げるのをウンザリ聞きながらブログを描くミユリさん(キャミで!コレ重要w)。


"6月3日。季節はずれの熱波が腐女子達をおかしくしてるわ。確かに熱は物を溶かし、水を沸騰させ、時に発火もさせる。コレと同じ作用が腐女子の心にも起きてるみたい。この異様な熱波でおかしくならないのは私ぐらい。ホント、この百合を誘発する熱波はいつまで続くのかしら"


今日の御屋敷(メイドカフェ)を想い出す…


御嬢様とメイドがラブラブだ。御嬢様の首に手をかけてキスをねだるメイド。そのメイドにのしかかる御嬢様様。とても腐女子の所業とは思えない。


そして…百合ばかりじゃナイ。


「カレル?」

「あ。ミユリ…ヴィキは知ってるょね?」

「モチロンょ。ヴィキ、確かシフトは遅番では?」


ヴィキは、御屋敷(メイドカフェ)の高身長要員だ。ヲタクの中には"高身長メイド萌え"がいてソコソコ需要がアル。


そして、カレルはミユリさんの池袋時代のTO(トップヲタク)


「メイド長。私は今、同伴中だから」

「そーなの?同伴なら私服でしてね次から」

「あのね、金曜日に店外交友でレイブに行くんだけど、メイド長も来れば?あの、イケてないSF作家と」


誰のコトだ?!


「ダメダメ。ミユリは行けないょ。あのSF作家は、そーゆーのがカラキシ駄目なんだ。ヲタクだから」

「待って、カレル。セメント工場の跡地でやるレイブでしょ?素敵。レイブなんてバブルの頃以来だわ。多分テリィ様もお好きだと思う。現場で会いましょ」

「何ょカレル。なかなか話せるTOみたいじゃない。じゃ現場でね、メイド長」


呆気に取られるカレル。ミユリさんは…視野の片隅でリルラの肩に手を置くラギィを認めて固まるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リルラは…僕の渋谷時代の元カノだ。乗り物ヲタクが高じ今は首都高ポリスで白バイを乗り回してる。


で、今はラギィ警部のデスクの前だ。


「メイド協会のトポラとは何を話してたの?」

「来期のカウンセリング方針ょ何で?」

「その時、何か変わった様子はなかった?」


リルラは両肩をスボめ天を仰ぐ。フランス人かょw


「いいえ、全然。何で?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"マチガイダ・サンドウィッチズ"は、僕達のアキバのアドレス(溜まり場)だ。ココのチリドッグはメチャ美味。


「テリィ様。お隣、よろしいですか?ラギィ警部がリルラさんを万世橋(アキバポリス)に連れて逝きましたが…」

「え。例の話かな?」

「未だわかりません。もう彼女は、私とは話さなくなってしまったので…でも、折を見て余計なコトを逝わないように釘をさしておきます」


リルラは元カノでミユリさんは今カノ。関係は微妙だw


「迷惑かけるね」

「大したコトではありませんが、心配なのです。最近は口も聞いてくれないので…でも、グッドニュースもあります。カレルがウチのヴィキを推し始めたの。同伴やアフターもやってるみたい。コレでもう私のコトを忘れてくれるカモ。結構真剣なんだと思います。レイブも一緒に逝くんですって。ほら、セメント工場の跡地でやる奴です」

「え。え?何、工場がどーしたの?」


いや、その、ちょっちムサボリ合うようにキスしてるメイド&御嬢様に目がテンに…工場が何だって?


「…全く熱波を良いコトに、ウチのメイド達はどーしてあんな簡単にキスしたり店外交友したりスルのかしら」

「(そりゃメイド長であるミユリさんが僕とつきあってるからだょ)そうだねぇ。ところで、最近マリレに何か変わった様子はない?」

「とおっしゃいますと?」


小首を傾げるミユリさん。萌え。


「マリレのスピアに対する接し方とか、今までと何となく態度が変わったなって思ったコトは?」

「え。あの2人の間に何かあったってコトですか?念のために申し上げますが…何かあったとしても百合ですょ?」

「百合は関係ナイょ。愛し合うってコト自体に意味がアルと思わないか?」


思わないょな普通w


「何かあったらマズいのですか?」

「え。そりゃマズいだろ」

「何でdeathか?」


無邪気に小首を傾げるミユリさん。萌え。


しかし…スーパーヒロインとヲタクがつきあうと、何か化学反応とか起きるのかな?僕が推すようになって、最近ミユリさんがヤタラとpower upしてるのも気になるw


第2章 赤い寝巻のエアリ


熱波の影響は万世橋(アキバポリス)にも推し寄せるw


「冗談じゃないわ。責任者を出して!」

「奥さん。すいませんが、お引き取りを」

「私は誰の"奥"でもナイわ。自由なシングルマザーょ。良いからラギィ警部と話をさせてちょうだい。どうなってるのか、今すぐ説明して!」


受付の制服警官は頭を抱えてる。騒ぎを聞いてラギィが階下に降りてくる。彼女は万世橋(アキバポリス)の敏腕警部。


「エイミ・デ・ルカ?」

「あら。ごきげんよう、警部」

「もう蔵前橋(重刑務所)から出て来たの?」


1発カマすラギィ。エイミは苦笑い。


「面白い冗談ね」

警察署(ウチ)で何を?」

「留守録にトポラってメイドからメッセージが入ってたの。話があるから、メイド協会に来てくれと言うから行ったら、その人は行方不明だって言うのょ。来いと言われたから、忙しい仕事の合間を縫って行ったのに…警察に行方不明の届とか出てないかと思って」


シングルマザーは、こーゆー時は大変だ。


「貴女の気持ち、良くワカルわ」

「…え。そーなの?私達にも共感出来る部分があったとは意外ね」

「秋葉原は謎に満ちてるわ」


フト見つめ合う2人。マジに戻って互いに咳払い。


「じゃ…帰るわね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"マチガイダ・サンドウィッチズ"はヲタクの交差点みたいな店だが、熱波はココにも推し寄せてる。


「リルラ!お願い、待って!私にチャンスをちょうだい!」

「何の?」

「貴女と話がしたいの」


メイドがミニスカポリスを呼び止める。何ともアキバ的な光景だ。ただし2人は今カノ&元カノの関係w


「ミユリさん。貴女、私の血液の次は何が欲しいの?尿?腎臓?」

「貴女と仲直りしたいの」

「ワケわかんない。どーせテリィたんのタメなんでしょ?元カノを利用してテリィたんに取り入るつもりなのね?貴女は、テリィたんとの関係を壊したくないだけで、元カノの私のコトなんか使い捨てだと思ってルンだわ」


さすがにムキになるミユリさん。


「リルラさん!ソレは違うわ」

「違わない。後で説明するって言っておきながら、貴女は何一つ説明してくれなかったじゃない。私は、貴女を信じたのに!」

「悪いと思ってるわ。心から」


ミユリさんは防戦一方だ。攻めるリルラ。


「ミユリさん。マジで仲直りしたいのなら語ってょ。ソレで全て解決。水に流してあげるわ」

「…ダメ。話せないわ」

「数週間前なら、秋葉原で信用出来るメイドは誰?と聞かれたら、迷わずに貴女の名前を挙げてたわ。なのに、今の貴女は見知らぬ他人みたい」


唇を噛むミユリさん。


「リルラ。私だって打ち明けたい。だけど、話せないの。コレは私の秘密じゃないから。ねぇ教えて。ラギィ警部に何を話したの?」

「教えられないわ。だって、ソレは私の秘密じゃないから。じゃ悪いけど」

「リルラ!」


電動キックボードで走り去るリルラ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱波の日々。御屋敷(メイドカフェ)の女子トイレで、何と首までのタートルネックでヤタラ首筋を気にしてるスピア。


「スピア。真夏日に何でタートルネック?」

「あ、姉様。別に…」

「キスマークなら、コレを塗れば隠せるわ。昨夜、マリレと一緒にいるトコロ、見ちゃったの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


中央通りの武装ショップにパンツァーファウストを買いに逝く。案の定、マリレがブラブラしている。


「よぉマリレ。元気か?」

「テリィたん。まずまずょ」

「ちょうど良い。聞きたいコトがあったんだ。実はマリレとスピアのコトだけど、まーさか彼女と百合ナンてコトは無いよな」


途端に激しくムセかえるマリレ。


「おや?百合なのか?」

「まさか!ちょっと戯れてただけよ」

「ソレって雰囲気に流されたってコトか?ホラ、最近この熱波のせいで、腐女子があちこちでキスしまくってるょな。そのせいで、マリレ達までおかしくなっちゃったとか?スーパーヒロインなのに」


スーパーヒロインは余計ょと顔をしかめるマリレ。


「確かに、腐女子が色気づいてるょね。だから、気がついたらキスしてたの。どんな気持ちかなんて関係ナイわ」

「前にミユリさんも交えて話し合っただろ?そういう衝動的な行動は控えるべきだって。南秋葉原条約機構(SATO)がスーパーヒロイン狩りをしてルンだぜ?」

「でもね、テリィたん。一旦そういう衝動に駆られたら、もう後先のコトなんかどーでも良くなるの。ミユリ姉様だって、テリィたんと…」


可愛く唇を尖らせるマリレ。


「ソレはワカル。だが、キスは恋の入口だ。スーパーヒロインは自制心を失うべきじゃない」

「うーん確かに危険ょね。腐女子は恋に免疫ナイし」

「な、何だょ急に」


既にマリレは乙女になっているw


「とにかく!何だか…ぼーっとして気持ち良いのょね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


女子トイレの続き。


「貴女達、マジでヲ互いのコトが好きなの?マリレとはホンキ?ちゃんと話とかしてる?」

「モチロンしてるわよ。そーゆー姉様達は?」

「…あんまり」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱い抱擁ハグを交わし合うマリレとスピア。


「…マリレ。ねぇ何か話さない?」

「え。何を話すの?」

「貴女、いつもいきなり私をバックヤードに引きずり込むけど、私達、挨拶ぐらい交わすべきだと思うの」


喘ぎながら主張するスピア。


「そ。元気?」

「えぇ貴女は?」

「…上々」


唇を抉るように吸われ気が遠くなるスピア。


「…ねぇ金曜日の夜。セメント工場跡地のパーティがアルんだけど。何か聞いてる?」

「まぁね」

「行くの?」


唇を離しマリレを真正面から見るスピア。


「どーなの?」

「そんな先の話、ワカラナイわ」

「ソレもそーね」


首筋のキスマークをなぞるマリレ。喘ぐスピア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は第3新東京電力勤務のサラリーマンで太陽発電衛星の副所長、戦自のX2.5計画の責任者も兼務。

ヲフには御屋敷(メイドカフェ)のヲーナーもやってて"メカゴジラ-2.5"のコンカフェをやったら大当たりで超多忙w


御屋敷(コンカフェ)のメイド長はミユリさんだ。


「コレ、新製品ょきっとお客さんにウケるわ。ホラ、暗いトコロで光ルンだから」

「え。マドラーなのコレ(間に合ってるなw)?」

「今、間に合ってるって思った?冗談でしょ?」


スピアのママが御屋敷で使えと光る?マドラーの売込み中だ。辟易してたら何とラギィ警部の御帰宅。


「エイミ。娘さん(スピア)に聞いたらココに売込みに来てると聞いたモノだから」

「何だょラギィ。勤務中だろ?何か事件か?」

「ううん。別にそーゆーワケじゃないんだけど…ちょっと個人的な話なのょ」


言葉を濁すラギィ。エイミをチラ見スル。


「え…いやいや。コレは僕としたコトが」


半分キツネに摘まれた気分だが…席を外す。果たして、カウンター席でエイミの横に座るラギィ警部。


「エイミ。少し昔の話ょ今さらこんな話をスルのも何なんだけど…私は、烏森で自分の職務を全うしただけ。別に貴女に悪意があったワケじゃナイの」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど…あの時の恐怖は私にとってはトラウマになったわ」

「貴女は、法を破った。善良な労働者の作業を妨害したンだけど」


直ちに反論するエイミ・デ・ルカ。


「お言葉だけど、その善良なる労働者諸兄は、新橋先住民達の約2000年前の貴重な超古代建築物を無惨にも破壊しようとしてたのよ。新橋の歴史的な財産を」

「いや。烏森神社の方も取り壊しを望んでた」

「そんなの問題じゃないわ」


プイとソッポを向くシングルマザー。


「ソレじゃ何が問題なの?」

「座り込みをしてたのは20人以上もいたのに、なんで私を逮捕したの?27才のイタイケな瞳をした少女の私だけ、何で貴女は逮捕したの?」

「ボーヤだからさ」


ハッと息を飲むシングルマザー。


「…機動戦士ランダム?」

「ミニスカートに黒ブーツ姿でいた貴女は一番目立ってたわ。とにかく!誰かを逮捕しなくちゃいけなかったの」

「な、何て言ったら良いの?ねぇ断っとくけど、嫌だわ、私、怒ってるのよ…でも、なんでニマニマしちゃってるのかしら。きっと、この熱波のせいね」


慌ててペットボトルの水をグビッと飲むエイミ。


「だから、ずっと貴女には謝りたいと思っていたの。笑ってもらえて良かったわ」

「あら。嫌だわ。そんな…」

「ママ」


珍しく冷静なスピアの声。エイミが振り向くと、真後ろにスピアが立っている。軽いパニック状態だw


「ねぇ何してるの?」

「あ、あーらスピアじゃない。今、ちょっとラギィとお話をしてたのょ」

「そーナンだ」


小首を傾げるスピア。


「ラギィ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「貴女、ヲタクには興味がナイの?秋葉原中のヲタクが1人残らずマリレに夢中なのに」


御屋敷のバックヤードで熱心にペディキュア中のミユリさんとエアリ。フットジェル塗りに余念なひ。


「まぁ姉様がテリィたんに夢中になっちゃって、やっと私に番が回って来たってだけょ」

「いいえ。ヲタクが熱い視線を送っているのに貴女は相手にしない…というか友達以上の関係になろうとしないでしょ?」

「姉様。ソレって何かの調査?」


この前、僕は都議選の出口調査に遭ったが(自慢?)。


「いいえ。調査なんかじゃないわ。ちょっち興味を持っただけ。ヲタクと深く付き合おうとしないのは何かワケがアルのかなって。好奇心って奴?…何となく怖いとか?」

「ミユリ姉様は怖くないの?TO(トップヲタク)

とは言えマジな自分をさらけ出すのって」

「うーん大丈夫だわ。テリィ様だし」


瞬間イラッとしたが、話題続行のエアリ。


「私は、姉様の100万倍怖がりなの」

「そう」

「テリィたんの好きなfield blue。私、こんなコトも出来ちゃう」


エアリは、ミユリさんのマニキュアの分子構造を変え、ハウニヴパイロットのヘルメットの色に変色w


「で、姉様。リルラとは仲直り出来た?」

「ダメ。怒って口も聞いてくれないわ。メイドに出禁だナンて…マジかしら?誰か彼女の心の中をノゾいてくれると良いのだけれど」

「ROG。姉様、やってみるわ」


エアリの安請け合い。彼女の超能力は未だ開発途上だ。


「でも、お願いだから無茶はしないでね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜、首都高ポリスのHPからリルラのスクショをゲット。画像の上に人差し指を置くエアリ。

お気に入りの真っ赤なネグリジェでベッドに横たわり瞳を閉じる。リルラの夢の中へ入って逝く。


何と…スチームパンク?


内装がスチームパンクな"メカゴジラ-2.5"のコンセプトカフェ。壁に歯車、窓の外に飛行船が飛ぶ。


「アレが…リルラ?」


御屋敷(メイドカフェ)の一角。キャンドルライトが灯されたテーブルがアル。傍らに立つリルラは…タキシード。

横のラジカセにカセットを入れるリルラ…すると、何と僕が現れリルラのカセットを取り上げる。


音楽(BGM)は任せてくれ」


何とステージに山田省吾がいる。僕はJポーンズを率い彼のツアーに同行するミュージシャンだ。

さらに…スパゲッティストラップ、ウェストギャザー、バックリボンの真っ赤なドレス。エアリ?


「誘ってくれて、ありがとう」


挑むような眼差しでダンスフロアに立つエアリ。一体何なんだコレ?ホントにリルラの夢の中なのか?


「こちらこそ」


手を差し出すエアリ。その手にキスするリルラ。2人はフロアへと踊り出す。エアリを余裕でリードするリルラ。真っ赤なドレスでクルクル舞うエアリ。


「ねぇリルラ。私のコト、どう思ってるの?」

「その美しい外見の下にある心は、ほっともっと、じゃなかった、きっともっと、心のキレイな妖星ゴラス、じゃなかった、妖精サンなのね。だのに、貴女はその心をヲタクには決して見せようとはしない」

「そ、そーカモ」


目がテンになってる(赤寝巻の方の)エアリ。


「…ソレは、マジな自分を見せるのが怖いからだ。でも、私には見せても良いのょ」

「マジで?」

「YES。あぁ貴女の心を覗いてみたいわ」


目を瞑るエアリ。2人はキス。ポカンと口を開け、事態を凝視スル(赤寝巻の方のw)エアリ…

その瞬間、眠りから醒めて、ベッドからガバッと起き上がる!周囲を見回すエアリ。荒い息。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


呆れるミユリさんw


「どーして、ソンなバカなコトをしたの?」

「だって、姉様が…マジで彼女の真意を知りたかっただけです」

「ソレで、何かわかったの?」


御屋敷(コンカフェ)のバックヤード。ミユリさんもエアリもメイド服だ。何と逝っても、ココはアキバだからね。


「姉様、ソレが複雑なのです」

「だって、貴女。リルラの夢に入ったのでしょ?」

「YES。入りました」


急かすミユリさん。


「ソレで…リルラはどんな夢を見てたの?まさか、テリィ様とヨリを…」

「ソレはありません。でも、彼女は、その、何と言うか、複雑で…ダメです。かなり混乱してて、一言では言えません」

「エアリ。貴女、大丈夫なの?」


ミユリさんの冷ややかな視線。


「YES!モチロン大丈夫ですょ姉様」

「何だかほっぺたが赤くなってるけど」

「ソレは!きっと熱波のせいdeath。確かに私はリルラの夢を覗いたけど、その夢の意味まではわかりません。だって、私は精神科医でも、科学者でもありませんので」


ミユリさんは腕組み。


「夢で何があったのか、どーしても私には話したくナイみたいね」

「…姉様。リルラのコトは私に任せて。彼女をコントロール出来るのは、私しかいません。私のこの魅力でね」

「マジ大丈夫なの?」


懐疑的なミユリさん。


「バッチリですょ、姉様」

「じゃ…貴女に任せるけど」

「姉様、絶対的に大丈夫です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


元カノとホットドッグを食べる。


「リルラ、どーした?エアリか?」

「YES。女って面倒ょね。アフター5に私が何処に消えるか知りたがったり、私の気持を細かく聞いてきたりスル。今度はパーティに誘われたわ」


僕は、チリドッグをガブリと頬張る。うまっ。


「セメント工場の跡地でやる奴か?」

「あ、ソレソレ。スーパーヒロインと腐女子じゃおつきあいはムリってわかってるけど…」

「胸が痛むのか?」


うなずくリルラ。


「私が正直な気持ちになるコトが、結局エアリを傷つけてしまう。私が私でいるだけで、ソレは罪なのね…」


窓の外に目をやるリルラ。自分に酔ってるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


〆はミユリさんとの天文台デート。


「テリィ様。見えますか?銀河同士の衝突」


ヒルズタワーのてっぺんに設置された超大型望遠鏡(VLT)で110億光年の彼方で繰り広げられている"合体スル銀河"を観測中だ。


「ソレが大気が揺らいで…もう、ヲ願いだから、静まってくれょ大気圏」

「対流圏と成層圏ってゲイ同士なのカモ」

「え。何で?あはは…」


珍しいミユリさんのジョーク。意味不だがw


「テリィ様。スーパーヒロインとヲタクのTO(トップヲタク)は付き合えない、って前におっしゃいましたょね?ヲ互いに違うから。私もソレで納得してました。でも、百合とは逝え、リルラとエアリを見ていると、そーでもなさそうに思える、と逝うより、実は少し傷つきました。あの2人は良くて、どうして私達はダメなの?」


直球投げてキターw


「ミユリさん。僕が怖いのは、上手くいかなかった時のコトじゃない。僕が怖いのは、僕達が何もかも上手く逝った時だ。僕は、ミユリさんへの想いが溢れて、きっと抑えきれなくなる。一線を超えた時は幸せの絶頂さ。でも、いつか必ず傷つく日が来る。僕は構わない。でも、ミユリさんが傷つくのは耐えられない」


大抵の女子ならココで引き下がる。涙を拭き笑顔でサヨナラ…どっこいミユリさんはそーは逝かないw


「ソレが本望だと申し上げたら、私達2人はどーなるのでしょう?」


ミユリさんの視線は、僕の眼底を貫く。


「今、キスしてくださいますか?」

「ソンな…ワカラナイょ」

「…」


言葉は役目を終え、彼女は瞳を閉じる…その時!


「メイドさん、ケンタウルス座Aの"合体スル銀河"は見れたかい?」


天文学者が声をかけてくる。微笑むミユリさん。


「あと1歩ってトコロです」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


陽射しに灼かれるパーツ通り。お気に入りのファイバードリンクを購入、自販機から取り出すリルラ。


「あら、リルラ?」

「…エアリ?」

首都高(ハイウェイ)ポリスが珍しい。非番なの?」


正面からエアリが歩いてくる。肩を出し、ヤタラと胸の谷間を強調したメイド服だが実にケシカラン。


「ライダースジャケット、キマってるわね」

「そう?ありがとう、ウレしいわ」

「今宵、セメント工場の跡地でレイブがアルのは知ってるわよね。貴女、興味ある?」


微かにドギマギするリルラ。


「興味はアルけど、行く予定は無いわ」

「良かったら私と行かない?」

「ええええええええっ!」


絶句するリルラの襟を正してあげるエアリ。


「8時に待ってるわ」


第3章 セメント工場の夜


神田リバー沿いのセメント工場が廃業、再開発待ちの空地となったが、今宵は夜通しサイバートランスが流れ、DJが叫び、暗闇の中、ヲタクが踊り狂う。


「スピア。テリィ様を見なかった?」

「え。誰?姉様、聞こえなーい」

「テ・リ・ィ・さ・ま・を・見…」


シックなミニの黒パーティドレスのミユリさん。背中もオヘソも丸出しドレスのスピアに声をかける。 

「テリィ様とココで会う約束したんだけど」

「まさか。姉様、テリィたんがこんなトコロに来るハズないでしょ?首に縄つけて連れて来なくちゃ」

「やっぱり?」


溜め息をつくミユリさんを見捨てて壁際に立つマリレを見つめるスピア。が、マリレは視線をズラす。


「姉様、ごめん。また後でね」


マリレの下へ一直線だ。1人取り残されるミユリさん。目の前をリルラが通り過ぎる。ヲ互いに無視w


「おい、見ろょスゲェぞ」

「よっしゃ!もっと俺達で盛り上げようぜ!」

「バリーライトをセットしよう」


呼ばれもしてないDJ BOYZ3人組が入って来る。配電盤をコジ開けて、ブレーカーをバイパス配線して持ち込みのPA機材や照明システムに接続して逝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リルラはエアリを見つけ、声をかける。


「エアリ…」

「あら、リルラ。素敵。決まってるわ」

「そう?そーかしら?貴女も赤が似合うわ」


エアリは、赤寝巻を彷彿させるパーティドレスだ。


「(貴女のw)夢みたいかしら?」

「(マジ私のw)夢のよーょ。ねぇ1つ、ハッキリさせておきたいんだけど、今宵レイブに来ない?って私に言ってくれたのは、私をパートナーとして誘ってくれたってコト?ソレとも単なるレイブの告知?だとしたらモチロン、ソレだけでもマァ大感激ではあるンだけど、ねぇどっちだか教えてょ今すぐ」

「…2人でどこか行く?」


絶句するリルラ。コレは…夢なの?


「ど、ど、ど、どこかって?」

「あ。外の空気を吸いたいだけょ」

「何か話がアルの?もちろんOKだけど…」


ズンズン外へと出てしまうエアリ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


配電盤の前では複雑なタコ足配線から火花が飛んでいる。ソレに気づかズ勝手に盛り上がってるDJ達。


「やったぜ。最高だ」

「おい!"ファンタ煮る"をやろうぜ」

「マジすげぇカワイイ子、発見!」


ミニの黒ドレスのミユリさんをナンパするDJ。 


「YO!蒟蒻ゼリー入りの"フェンタ煮る"をキメないか?」

「いらないわ」

「そう言わズにゼリーを食べてハイになろーょ。そして、2人で屋上に登るのさ。星に手が届くぜ」


その肩に手を置く僕。


「君、自衛隊に入らないか?…じゃなかった、ヤメとけ。彼女、マジで嫌がってるし」

「何だ、お前?ヲタクの彼氏がいたのか。腐女子に用はねぇや」

「テリィ様!もうおいでにならないのかと」


インチキDJ野郎はコソコソ去り、ミユリさんは乙女顔で僕を見上げ、僕は思い切り力強くウソをつく。


「何で?楽しみにしてたさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻の屋上。スピアとマリレは愁嘆場だ。因みに、星に手は届かない。そもそも星は見えないし。


「マリレ。どうして私を無視するの?私達がマジの百合じゃないコトぐらいワカッテルわ」

「スピア、違うの」

「いいえ。私、こんなのもう耐えられない。どうして、私のコトを避けるの?私だって傷つくのよ…もういい。じゃね」


ココは呼び止めるトコロ。


「スピア!…あのね。こーゆーの困るのょ」

「何がょ?何が困るの?」

「熱くなるの」


憤慨するスピア。


「熱くなんかなってない。私はcoolょ」

「いいえ。貴女は熱くなってるわ」

「じゃ初めて私にキスした時の貴女はどーなの?」


溜め息つくマリレ。


「スピア。私達は百合なんかしちゃイケナイの。何もなかったコトにしてくれない?」

「…もう良いわ。外の風に当たって頭を冷やして来る。さよなら」

「スピア…」


スーパーヒロインは立ちすくむ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


屋上の反対側では、エアリが仕掛けてる。


「リルラ。貴女ってホント良い元カノね」

「エアリ。ソレ、お世辞でもウレしいわ」

「お世辞ナンかじゃナイわ。マジょ」


エアリを追ってノコノコついてくるリルラ。


「ヲタクって、メイドを見る目がもうまるで獣だモノ。でも、貴女は違うわ。百合だから」

「そうかしら…もちろん、私は貴女を獣の目では見てないけど。でも、私ってマジ百合なのかしら。最近の異常熱波のせいで私、少しおかしくなってるだけじゃないかとも思うの」

「いいえ。貴女は百合ょ」


断定するエアリw


「そう?わかるの?」

「YES。だから、貴女のコトは信用出来るって、みんなが言ってるわ」

「…みんな?みんなって?」


リルラの怪訝な表情を見落とすエアリ。


「ミユリ姉様やテリィたんを含めたみんなょ。みんなが貴女を信じてるわ」

「そーゆーコトだったの!」

「え。」


急に醒めるリルラ。驚くエアリ。


「何?どーしたの?」

「貴女は私からそれを聞き出したかったのね?」

「待って。違うわ」


やっと地雷を踏んだコトに気づくエアリ。だが、時既にお寿司…じゃなかった、遅し。木っ端微塵だ。


「私、貴女がてっきり私に百合なのかと思って、1人で舞い上がっていたんだわ!トンだピエロょ!」


リルラは席を立ち、嘲笑を浮かべ歩き去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


廃工場の壁にかかった白い布の前で半裸で踊るダンサー。両端で松明が萌えてる棒を回転させる。軽くスキップしてフロアに躍り出るミユリさん…と僕w


「テリィ様、見て!スゴーい」


万博のコモンズで見かけたアフリカンな打楽器を叩きながら不思議なリズムを打ち出す楽団?がいる。

嬌声、熱狂、陶酔…明らかに薬物が絡んだ状況だw


過負荷に耐えてたメイン電源が静かに発火…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"マチガイダ・サンドウィッチズ"はヲタクの交差点…いや、百合の交差点?全て熱波のせいなのか?


「トポラってメイドから呼び出しがあったから、忙しい合間に休みをとって出掛けたの。最近は娘のスピアとも疎遠になっていたし…」

「あら。スピアとも?仲の良い母娘だと思っていたんだけど。何でも打ち明け合うよーな」

「ソレが…最近は何て言ったっけ?あのテリィたんの元カノ」


ヒソヒソ話で盛り上がるエイミと警部のラギィ。


「リルラ?」

「リルラ!そうそう、リルラょ。白バイ乗りナンでしょ?…全くテリィたんの元カノって星の数ほどいるから、今度番号を振ってナンバー管理をしようってスピアと話してるの。事務局はウチの娘がヤルわ」

「元カノ会の事務局?ソレ、助かるわ。お願い…まぁソンなコトよりリルラが何かの原因になってるの?」


スーパーヒロイン方面に話題を振ろうとしたラギィ警部だが、YUI店長からrétroな受話器を渡される。


「何ょ?私、非番ナンだけど…え。何?了解。直ちに向かうわ」

「どーしたの?」

「私から誘っておいて悪いけど、今宵はコレで。東秋葉原でちょっと騒ぎがあったみたい」


席を立つラギィ。エイミは、フランス人みたいに肩をスボめて天を仰いでみせる。ケ・セラ・セラか?


「どうぞ、警部さん。コレもまた人生…」

「じゃまた」

「現場、気をつけてね」


ポツンと取り残されるシングルマザー。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕はミユリさんを廃工場の駐車場跡地に連れ出す。跡地とは逝っても今宵は駐車場ソノモノなのだが。


「ココなら少しは静かだね」

「YES。やっと2人きりになれました」

「ミユリさん。じゃ…」


一気にキスと思ったら笑い出すミユリさん。


「何?」

「いいえ。この前みたいにまた何かが爆発して、私達の邪魔したりして」

「まさか。あはは…」


で、爆発はナイが邪魔は入る。


物陰からキスしながら現れるカレル&ヴィキ。ヴィキは…半裸で意外に巨乳。ミユリさん、負けてるw


「や、やあ。ミユリも楽しんでる?」


カレルが照れ隠しで逝うや否や、巨大な消防車が赤青白のランプを明滅させて現場に突っ込んで来るw


「練塀町77、現場到着!消火開始!」

「おい!コッチだ、早くしろ」

「直ぐにホースを出せ!」


神田消防(アキバファイア)のハシゴ車の後に化学消防車、指揮車、万世橋(アキバポリス)の4WDが狭い敷地に続々と突っ込んで来るw


「サツだ!ブツを隠してズラかれ!」

「ヘイ!コレ、やるょ受け取れ!」

「え。何コレ?」


消防士は配電盤の焔を消火し、警察官は逃げ惑う若者を逮捕スル。現場は阿鼻叫喚の大騒ぎだw

その最中、ミユリさんはアタマの悪そうなDJ BOYZから白い錠剤の入った小袋の束を渡される。


その瞬間…


「合成麻薬"フェンタ煮る"所持の容疑で貴女を逮捕します。現行犯ょ」

「よせ、ラギィ」

「テリィ様、逃げて!」


ミユリさんをLEDライトで照らし、手錠を取り出すラギィ。眼前で連行される推しに何も出来ない僕w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の留置場は署の地下にあり…何とミユリさんが収監されてる。DJ BOYZも一緒で全員逮捕だ。


そして…


「リルラ。ごめんなさい」

「ヤメて。もう何も聞きたくないわ」

「心配しないで。直ぐ帰れるわ」


隣の房に収監されてるのは…リルラw


「ミユリさん!もう黙っててくれない?私の人生から出てって!」

「ヘイ、姉ちゃん達。仲良くしなょ。そんなにカリカリすんな。俺達なんか、留置場に入れられたのはもう10回目だぜ。直ぐお迎えが来るのさ」

「ライア!コルマ!ベーカ!」


呼ぶ声に立ち上がるDJ BOYZ。鉄格子が開く。


「釈放だ。身元引取人が来たぞ。せいぜいヲタ友に感謝するンだな」

「ほらな。言った通りだろ?一晩ヲ説教されれば、ソレで刑期は満了、即日釈放ってワケさ。俺達にとっちゃ留置場ってのは絆を育むための場所ナンだ。元気出しな」

「絆?たった2時間半の留置で生まれる絆ナンて、ロクなモンじゃナイわ。そもそもアンタ達こそ、もっとココにいるべきなのょ」


鉄格子から出て逝くDJ BOYZに毒づくリルラ。


「ねぇ!ウチの上の方には、話してくれたの?私、首都高ポリスなんだけど!」

「モチロンょ。勾留の許可はヲタクの上から出てる。多分、貴女は今回の一件で懲戒免職ょ」

「懲戒免職…」


絶句する僕の元カノ。最悪のタイミングで鉄格子越しに隣の房から話しかける今カノのミユリさん。


「リルラ!聞いて、大丈夫よ。今のウチに昨夜のコトを何て話すか、口裏を合わせておきましょう」

「ミユリさん!私達、リアル留置場に入れられてるのょ!もうウソをつくのはムリ。私に話しかけないで!」

「リルラ…」


頭から毛布を被り、全てを拒絶するリルラ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の駐車場にベンツG4型が停まっている。


「…DJ BOYZが釈放されたみたいね。コレで昨夜の検挙者は、ミユリ姉様とリルラ以外は全員釈放されたわ。テリィたん、私やっぱりリルラに話せば良かったわ」

「話す?エアリ、何を話すって逝うんだ?」

「真実をょ。私達が"覚醒"したスーパーヒロインで、もしかしたら人類進化の新しい形なのか、単に絶滅を待つ呪われた亜種なのか。テリィたんは、どうかしてるとは思うだろうけど、リルラは信用出来る仲間になってもらえたと思うの」


パーティ帰りのハデなコスプレのママ一気にまくしたてるエアリ。こんな時だが美人だなと感心スル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の留置場。


「リルラ!リルラったら…お願いだから話を聞いてょ!ねぇお願い」


必死に話しかけるミユリさん。隣の房で頭から毛布を被ってたリルラだが、突然毛布を払いのける。


「ミユリさん。1つ聞かせて。エアリのコトも貴女が仕組んだの?」

「エアリ?エアリが何か?」

「私を黙らせておくために、彼女を百合で接近させて私を誘惑したでしょ?」


百合は…熱波のせいナンだが。


「何の話?私は知らないわ」

「腐女子の百合願望につけこんで、あんな卑劣な手を使うなんて最低だわ。もう、私は貴女をカバわない。貴女が、テリィたんをカバっていようと私には関係ない。万世橋(アキバポリス)には、私が知ってるコトを全て話すわ。外神田ERで貴女と血液をすり替えたコトや、トポラが南秋葉原条約機構(SATO)だったコトも全部話すから!」

「ダメょリルラ。待って、だめよ。私の話を聞いて。知っておいて欲しいの。ラギィ警部に何もかも話す前に…ホントのコトを全部話すから」


鼻で笑うリルラ。


「自分の秘密でもないのに?」

「リルラ。エアリが貴女に近づこうとしたのなら、ソレは百合ナンかじゃないわ。恐怖からょ」

「恐怖?何が恐怖なの?」


ミユリさんは、語り始める。


「私達の正体がバレるコト」

「またそんな…正体って何ょ?ねぇ貴女達が"フェンタ煮る"で秋葉原に新アヘン戦争を仕掛けに来た先兵って噂がウソだってことくらいわかってるわ。たかがドラッグ位で南秋葉原条約機構(SATO)が動くハズがナイものね」

「そうね。ドラッグは関係ないわ。良く聞いて。私とエアリとマリレの3人は…とても遠いトコロから来たの」


そして…下を指差すミユリさん。


「遠いトコロ?秋葉原より下って…有楽町や浜松町かしら」


もっと下を指差すミユリさん。


「そうか。東南アジアね?東経135度の隣人達。貴女達3人は、実は不法入国したアジアンで、警察やSATOに追われていルンだわ」


まるで違う。根気良く語るミユリさん。


「YES。リルラ、私達3人は(この時空の)大和撫子じゃないの」

「ミユリさん。貴女は何が言いたいの?」

「なんて説明したら良いの…でも、真実を語るわ。だから聞いてね」


何と涙が一筋伝う。息を呑むリルラ。


「私達3人は、アキバの地下に開いた"リアルの裂け目"と呼ばれる時空断層の影響で超能力に"覚醒"したスーパーヒロインなの。今まで誰にも知られズ腐女子と同じ姿でアキバでヲタ活してた。ソレが今になって、警察やSATOが疑い始めたの」

「貴女が…スーパーヒロイン?」

「YES。だから、私達をこんな目に遭わせ、当局は何とかして秘密を暴こうとしてるの。テリィたんの元カノのみなさんまで巻き込んでしまって。今カノとして、申し訳なく思っています。ごめんなさい」


涙をボロボロ流すミユリさん。


「ミユリさん、大丈夫?」

「この数ヶ月間、スゴく辛かったわ。元カノのみなさんにずっとウソをついてきた。でも、私、もう2度と貴女にウソをつかない。約束するわ」

「リルラ・リリル!」


突然の呼び出しにハッと身を引く2人。


「ラギィ警部?自ら?」

「YES。リルラ、私と話さない?鉄格子から出してあげるわ。私のオフィスで話しましょ?」

「…いいえ、警部。本官はココでお話しします」


おや?と逝う顔のラギィ。目を瞑るミユリさん。


「そう。なら良いわ。じゃ先ず貴女はテリィたんやミユリ容疑者とどんな関係なの?あと、失踪したメイド協会公式カウンセラーのトポラの身に何があったのかも教えて欲しいわ」

「お断りしますが、本官は未だ免職辞令を受けておらず、従って、本官への職務質問は警察組織間の取り決めに従い、然るべきチャンネルを通じてお願いします。なお、予防的に申し上げますが、カウンセラーとはいえ、1メイドの失踪は当職の守備範囲を越えた事象(インシデント)であり、関知するモノではないと言わざるを得ません。ソレより貴官が所轄の警部の立場で、なぜそんなコトにこだわるのか、ソレを先ずお知らせ願いたい」

「わ、私は職務全うしてるだけだけど?」


リルラの凛とした態度。


「本官が何をしたと言うのか?確かに本官はレイブに出掛けた。初めての百合にも大いに興味があったが、でも、結局法律に違反するようなコトは何もしていない。ソレとも、秋葉原で百合を語るコトは罪だとおっしゃるか?」

「待って。あの違法レイブに参加した者は全員不法侵入者なの。その上、貴官は"フェンタ煮る"を所持していた」

「所持については状況証拠しかない。とても立件まで行けないわ。だから、警部が私達を勾留したのは、そんな理由からじゃない。ねぇ今すぐ私達2人をココから出して。でないと、首都高ポリスが弁護士を雇って万世橋(アキバポリス)を不当逮捕で訴えます。免職寸前の腐女子だけど、自分の権利ぐらいは知ってるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜明けのふれあい通り。万世橋(アキバポリス)から出て来るリルラは、何とミユリさんと腕を組んで…笑い転げてるw


「リルラ。最高カッコ良かったわ」

「そう?そうカモね。自分でもビックリしてる」

「ねぇリルラ…どう思ってるの?私がさっき話したコトだけど」


笑い飛ばすリルラ。


「モチロン正直言ってブチ切れたわ。やっぱり貴女は大陸の国が秋葉原に仕掛けた新アヘン戦争の先兵で"フェンタ煮る"をやってルンだと思う。でも、貴女がキメてるなら、私も試してみようかなって思ったわ。とにかく!私は"地底王国サガルタ"の存在は信じナイし、貴女が第3皇女だって話も信じられないわ」

「私もそうだった…ねぇリルラ。私の話、マジで信じない?」

「でもね、ミユリさん。私、テリィたんの今カノが信じるのなら、私も信じてみようかなって思うの。だから…ソレでOK?」


笑顔でうなずくミユリさん。


「ROG!」


朝焼けに染まるふれあい通り。ハグする2人。


「じゃ気をつけて」

「貴女もね」

「また明日、秋葉原でね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"…腐女子達の阿鼻叫喚の中を熱波(ヒートウェーブ)は去って逝ったわ。で、その恩恵を授からなかったのは結局のトコロ、私1人だけなのカモしれない。でも、コレで良かったの。もし、衝動に負けて百合やテリィ様と1度でもキスをしていたら、私はきっとスーパーヒロインの誰もが経験したコトのない禁断の地へとを踏み入れてしまっただろうから…"


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ミユリさん」


呼ぶ声がスル。


私はブログを打ってたタブレットを閉じ路地裏を見下ろす。子犬みたいな目で私を見上げてるテリィ様。


「そっちに逝っても?」

「モチロンです。登れますか?」

「やってみる」


運動音痴のテリィ様がダクトを伝ってベランダまで登って来る。手を差し伸べながらタブレットを隠す私。


「おかえりなさいませ、テリィ様。メイド服でなくてごめんなさい。ソレから、余り長くはお話し出来ません」

「ROG。昨夜ずっと考えてたコトを話そうと思っただけだ。ミユリさんがラギィに連行されるのを見て、僕は胸が張り裂けそうになった。僕がミユリさんの人生を台無しにしたのではナイかと」

「まさか!その反対です」


全力で否定するミユリさん。


「ありがとう。なら、良かった」

「だって、ホントの気持ちだから」

「…もう帰らなきゃ」


路上に降りようとしたらミユリさんは慌ててる。


「え。もう帰っちゃうンですか?」

「サモないと、気持ちを抑えられなくなる」

「そうなったら…どうするの?」


思い切り誘って来るミユリさん。


「先ずミユリさんの長い髪に触れたくなるだろう。そして、髪に触れたらこう逝ってしまうんだ。この先、アキバでどんな運命が待っていようと構わない。永遠に(always)ミユリさんと一緒ならって」

「素敵です。そして?」

「そして…こうするんだよ」


just one kiss…そして、ゆっくりとkiss。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"警察に追われる身"をテーマに、萌え始めたミレニアムの頃の秋葉原を舞台に作品を展開しました。まだスーパーヒロインという存在が世の中に認知される前、うっかり"覚醒"してしまったスーパーヒロインを推すヲタクという夢のようなシチュエーションで楽しく描きました。追う身も追われる身も、全員アキバ熱波のせいで百合に走るというふざけたシチュエーションですが、実はなかなか気に入ってます。


さらに、ジュブナイルならではの、恋人未満の甘酸っぱい思いや、青春群像的な要素も加えてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、インバウンドが太陽に灼かれる灼熱の観光地と化した秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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