第8話:リハビリって、介護とどう関係ある?
「また手を出しすぎちゃったかも……」
デイサービスのフロアで、カナはそっとため息をついた。
利用者の**佐藤ヨネさん(79歳)**が、椅子から立ち上がろうとした瞬間、思わず手を貸してしまったのだ。
ほんの一瞬のことだったけど――
その後、ヨネさんは「ありがとう」と言いつつも、どこか寂しそうな顔をした。
「……手伝ってもらうの、悪いわね。最近、自分でできなくなってばっかりで」
その一言が、カナの胸に刺さった。
数日後。カナは先輩ケアマネとともに、リハビリ中心の通所施設「デイケア」を見学に行った。
「リハビリって、こんなに本格的なんですね」
トレーニング機器に囲まれた空間に驚きつつ、カナは理学療法士(PT)の木村さんの話に耳を傾けた。
「“寝たきり予防”とか“筋力アップ”って言われがちですが、一番大事なのは“生活機能の向上”です」
「生活機能……?」
「つまり、“トイレに行く”“台所に立つ”“靴を履く”――そういう“日常動作”を取り戻すことが目的なんです」
カナは思い出した。ヨネさんが、杖を使いながらゆっくり歩こうとしていた姿を。
あのとき、私は手伝うことが“支援”だと思ってた。
でも――違ったのかもしれない。
「手を出さずに、見守る勇気も支援や」
その日の夜、柴田先生の言葉が、いつもより深く響いた。
「介護職はな、“良かれと思って”が多い。でもその一手が、その人の“できる”を奪うこともある」
「でも、危ないこともありますよね……」
「せやな。だからこそ、“見極める力”が必要なんや。どこを支えて、どこを任せるか。それを考えるのが、ケアマネの仕事でもある」
カナはノートを開き、こう書いた。
支えるって、助けることじゃない。
“できる”を信じて待つことも、支援なんだ。
今回は、「リハビリ=介護の補助的なもの」というイメージを覆すお話でした。
“介護”は「何でもやってあげる」ことではありません。
本来は「その人が、その人らしく生活できるように支えること」。
そのために、リハビリ職(理学療法士・作業療法士など)は、動きや生活の“再構築”を一緒に考えてくれます。
そして、ケアマネはそれを“ケアプランにどう落とし込むか”を考える。
関わりの一つひとつに、“できる”を取り戻すチャンスがある。
それを忘れずにいたいと感じました。
【今回の学びポイント】
リハビリの目的は“身体機能回復”ではなく、“生活機能の向上”
理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などのリハ職は、ケアチームの重要な一員
「何を手伝うか」だけでなく、「何を任せるか」を見極めるのもケアマネの仕事
“自立支援”の視点は、介護保険制度の基本方針のひとつ