第7話:福祉用具って選ぶの難しい!
「歩行器って、どれでもいいわけじゃないんですね……」
カナは、福祉用具専門相談員の中村さんと一緒に、利用者・**山田勝さん(77歳)**の自宅を訪れていた。
勝さんは要介護2。最近ふらつきが増え、歩行器の導入が検討されていた。
だが、実際に現場に入ると、カタログでは分からない“生活のクセ”が見えてきた。
「ここの廊下、幅が狭いから、4点杖のほうが合うかも」
「でも勝さん、前傾姿勢が強いから、肘置きのあるタイプの歩行器がよくないですか?」
「うーん……それだと、トイレに入りづらくなるかな。あと、玄関の段差も気になります」
中村さんと一緒に勝さんの動きを観察しながら、カナは気づいた。
歩行器を選ぶって、“家を歩く”ことそのものを見てるんだ。
帰り道、カナはいつものように柴田先生の家に寄った。
「今日は福祉用具の選定に同行しました。思ってたよりずっと……繊細でした」
柴田先生は静かにうなずいた。
「せやろ。福祉用具はな、“選ぶ道具”やのうて、“暮らし方を支えるパートナー”や」
「道具じゃなくて、暮らし……」
「そうや。“ベッドで寝てる時間が長い”って聞いたら、“介護ベッドが必要”って考える人が多い。でも本当は、“なんで寝てる時間が長いか”を考えるんや」
カナは黙って頷いた。
“物を入れる前に、人を見る”。それがケアマネの視点かもしれない。
数日後。勝さんは、通路に合ったスリムタイプの歩行器を使って、
自分でトイレに行けるようになっていた。
「自分の足で行けるって、やっぱり気分が違うね」
そう笑った勝さんの背中が、なんだか少し大きく見えた。
今回は、福祉用具選びのリアルを体験する回でした。
現場では「杖を入れた」「ベッドを入れた」みたいに言いますが、
本当に大事なのは、“なぜ必要なのか”“どこで、どう使うのか”。
そして、福祉用具の選定にはケアマネだけじゃなく、専門相談員や家族、本人の意向も大きく関わります。
一つの道具が、その人の「自立」や「誇り」を支える。
今回、それをカナも学びました。
【今回の学びポイント】
福祉用具の選定は、身体状況+生活環境+利用目的の三つを総合的に考える
福祉用具貸与・購入には**介護保険の適用範囲(指定品目・基準額)**がある
福祉用具専門相談員の助言はとても重要
“使えるか”ではなく、“その人の暮らしをどう支えるか”が選定の視点