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第4話:介護ってお金かかる…家族の声に悩む

「正直……これ、全部自己負担になるんですか?」


そう言って眉をひそめたのは、藤井久美さん(52歳)。

要介護4の父親を自宅で看ている娘さんだ。ケアマネの先輩と同行した訪問での一幕だった。


「デイサービスが週3、訪問入浴と訪問リハビリも入れたいんですけど……1割っていっても、積み重なるときつくて……」


カナは隣で、言葉に詰まってしまった。


「ご負担については、介護保険の利用限度額内なら1割負担になります。ただ、限度額を超えると全額実費になってしまうんです」


先輩が代わって説明した。


「“限度額”って、収入によって決まるんですか?」


久美さんの質問に、カナも思わず聞き耳を立てた。


その夜、柴田先生の家で、早速質問攻め。


「先生、限度額って収入で変わるんですか?」


「変わらへん。要介護度ごとに一律や。たとえば、要介護4やと、月に約30万円分のサービスが上限で、自己負担は1割なら3万円ほどになる。もちろん、2割や3割になる人もおるけどな」


「2割や3割の人って?」


「それは所得が高い人や。具体的には市町村が判定して通知を出す。“負担割合証”いうやつやな」


「……じゃあ、久美さんの家みたいに、限度額を超えると、どんなに必要でも自己負担になるってことですか?」


「せや。制度には上限と限界がある。だからこそ、必要なサービスを“組み立てる”のがケアマネの腕や」


カナは、現場での苦い感情が胸に残っていた。

「この人に必要なサービスなのに、お金の問題で提案できない」。そんなジレンマが、ずしんと響いていた。


「でも、もし本当に負担が重すぎる場合、どうするんですか?」


そうカナが聞くと、柴田先生は手元の資料をめくりながら答えた。


「高額介護サービス費制度がある。月の自己負担額が一定額を超えた場合、あとで払い戻しされる仕組みや」


「えっ、それって利用者さん知ってますかね……」


「知らん人も多いで。だからケアマネが伝えてあげるんや。制度ってのは、“知ってるかどうか”で人生が変わることもある」


その夜、カナは久美さんのことを思い出しながら、ノートにこう書いた。


サービスは、「必要」かどうかだけじゃない。

「制度内で実現できるかどうか」。それも現実。

でも、できる限り、力になりたい。

今回は「費用負担」について考える回でした。


現場にいると、「この人に必要なサービスはこれだ」と分かっていても、

実際には「予算」や「限度額」が壁になることがあります。


でも、柴田先生が言ったように、制度を知っていれば“できる工夫”は増える。

その人にとってベストな支援のために、知識はやっぱり武器になるんですね。


【今回の学びポイント】

介護サービスの自己負担割合は原則1割(収入に応じて2~3割)


利用限度額は要介護度ごとに決まっている(超えた分は全額自己負担)


高額介護サービス費制度:自己負担が一定額を超えると払い戻しされる制度あり(申請制)


利用者・家族にとって「知らないと損する制度」が多い。ケアマネは“伝える役割”も担う



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