第2話:要介護認定ってどう決まるの?
「次は“要介護認定”の話やな。そもそも、サービスを使うには“認定”されなあかんのや」
そう言って柴田先生がノートに大きく書いたのは、
**「申請 → 調査 → 判定 → 認定」**の四つの言葉だった。
「カナちゃん、現場で“要介護2”とか“要支援1”とか、当たり前に使っとるやろ?」
「はい。でも……どうやって決まったかまでは、正直よく知りません」
「それが普通や。でもケアマネになるんなら、そこを知らな話にならん」
その翌日。
カナは地域包括の田辺さんに声をかけられた。
「今日、認定調査の立ち会いに行くんだけど、見学してみる?」
「えっ、いいんですか!?」
訪問先は、先日入院から退院したばかりの女性・川崎すみえさん(78歳)。足腰が弱く、娘さんと二人暮らし。申請のきっかけは「家で一人にしておくのが不安」という娘の申し出だった。
すみえさんの家は、昭和の香りが残る一軒家。
座布団に座った田辺さんが、穏やかな口調で質問を始める。
「すみえさん、階段の上り下りはご自分でできますか?」
「ええ……まあ、手すりにつかまれば……時間はかかるけど」
「お食事はどうですか? 自分で用意できますか?」
「最近は娘が作ってくれるの。火を使うのが怖くてね……」
淡々とした質問と、簡単そうに見えるやりとり。でもカナは、**「一つひとつが点数になる」**ことに驚いた。
「これが“認定調査”なんですね……」
「そう。全部で74項目あるよ。身体的なこと、認知面、行動・心理症状も含めて聞いていくの」
田辺さんはタブレットを見せてくれた。
「この調査結果に、主治医の意見書が加わって、最終的には“介護認定審査会”ってところが判定するの」
「介護度って、ただの数字じゃないんですね……」
その夜、柴田先生の家でカナは調査の話を報告した。
「すみえさん、受け答えはしっかりしてたんですけど、“不安だから支援してほしい”っていう娘さんの気持ちが印象的で……」
柴田はゆっくりうなずいた。
「せやろ。認定ってのはな、本人の状態も大事やけど、生活の背景も見逃したらあかん。制度上は点数やけど、そこに人の思いがあるんや」
その言葉に、カナは胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
【今回の学びポイント】
要介護認定の流れ
① 申請(市町村に本人・家族・代行者が申請)
② 認定調査(全国共通74項目)
③ 主治医意見書(かかりつけ医が作成)
④ 介護認定審査会(医師・看護師などによる判定)
⑤ 認定結果の通知(非該当・要支援1~2・要介護1~5)
第1号被保険者は市町村へ直接申請
第2号被保険者も同じ手順だが、「特定疾病」に該当する必要がある
認定調査は“点数”で評価されるが、現場では「生活背景」も重要