表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/17

第11話:ケアプランって誰のもの?

「カナさん、一度やってみない?」


先輩ケアマネの一言で、カナは思わず固まった。


「えっ……ケアプランを、私が?」


「そう。担当は引き続き私だけど、試しに組み立ててみて。利用者は、要支援2の**平井スミさん(73歳)**ね」


初めてのケアプラン――

カナは嬉しさ半分、不安半分で、スミさんのアセスメント記録に目を通した。


スミさんは、元気な頃は町内会のまとめ役だった。

今は膝の痛みで外出が減り、「人と会わなくなったのが一番つらい」とこぼしていた。


カナは、訪問リハビリ、デイサービス、通所リハビリの利用を検討しながら、何度もプランを練り直した。


でも――どうしてもしっくりこない。


(本当に、スミさんが“やりたいこと”を組み込めてるのかな……?)


夜、柴田先生の家で、その悩みを打ち明けた。


「ケアプランって、思ってたより難しいです。“できること”を並べるだけじゃ、本人の希望に合ってる気がしなくて」


柴田はゆっくりお茶をすすったあと、言った。


「せや。“できること”と“したいこと”はちゃう。

 ケアプランは“誰のための計画か”を忘れたらあかんで」


「……利用者さんのため、ですよね」


「そうや。ケアマネの都合でも、事業所の都合でもない。

 “スミさんが、また人と会いたいって思える生活”をどう作るかや」


その言葉を聞いて、カナの中でピタリと何かがつながった。


後日、カナは先輩に相談した。


「スミさん、昔から手芸が趣味らしいんです。だから、手芸クラブのあるデイサービスを提案したいんです」


「いいじゃない。それなら“また外に出たい”って気持ちを引き出せるかもしれないね」


カナは初めてのケアプランに、自分の“言葉”で一つひとつ項目を埋めていった。


ケアプランは、“心の再設計図”なのかもしれない。


そう思えた瞬間だった。

ケアプランに“想い”は込められる

今回は、カナが初めてケアプラン作成に挑戦し、

「計画の意味」と「想いの重み」に気づいていく回でした。


ケアプランは、ただの書類じゃありません。

サービスの組み合わせでもなく、点数稼ぎでもない。

その人の「こう生きたい」「こう暮らしたい」を形にする“物語の設計図”です。


そしてそれは、ケアマネ一人で作るものではない。

利用者の声、家族の思い、チームの知恵があって、初めて完成に近づいていく。


カナもようやく、そのスタートラインに立ちました。


【今回の学びポイント】

ケアプランは、要介護(支援)認定を受けた人が介護サービスを利用するための“計画書”


1表(基本情報)、2表(サービス内容と目標)、3表(週間スケジュール)などで構成


利用者本人の「解決したいこと(ニーズ)」と「どうなりたいか(目標)」が中心に据えられる


ケアマネの役割は、専門家の視点で“希望を叶える現実的なプラン”に整えること

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ