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応戦

 村の唯一の出入り口である門には既に十数人の武装した男女と腐乱死体ゾンビ骸骨兵士スケルトン動く鎧(リビングアーマー)の50体ほどの混成部隊が対峙していた。


「遅くなりました」


 僕の後ろで神官服のフードを深く被ったルイーゼが門番たちの背に声を掛けると直ぐ様門番から指示が飛んでくる。


「嬢ちゃんは右側にいる負傷者を手当してくれ。兄ちゃんは嬢ちゃんの護衛を頼む」



「『分かりました」』


 僕とルイーゼの声は自然と揃い、指示された場所へ僕らは急いだ。




 数的不利の中でも門番達は奮戦しているものの、負傷者の数も多くあたりには真新しい血痕がいたるところに飛び散っている。


「神官さん、早く手当を」


 切羽詰まった声で呼ばれた先には夥しい血を腹部から流している男性を膝に寝かせている女性の姿があった。

 ルイーゼの顔がみるみる青くなり、目尻に涙の玉が浮かぶ。


『ルイーゼ、君はできる限りを。僕もできる限りをやるから』


 僕の言葉にフードを深く被ったままルイーゼは頷くと男性の元に駆けていき、男性の元にたどり着き彼女が祝福の言葉を神に捧げると傷口を白い光が包み、あっという間に傷を塞いでしまった。


「凄い」


 感嘆の言葉が女性の口から漏れる。

 あんな大怪我を一瞬で癒やしてしまえるルイーゼはかなりの実力者だ。これなら本人が怖がっていようと戦場に連れ出されたのも頷ける。むしろ、こんな実力者でも怖がっている少女だからと彼女を置いて向かった聖騎士や神官達はそうとうな人格者だ。


「怪我人はわたしの所に運んでください」


 目元をフードで隠した彼女のもとに次々と怪我人が運ばれ、その後ろから不死者たちが続いてくる。


『ルイーゼの所には行かせない』


 握ったこともない腰にさした剣を引き抜くと、僕の身体と同じように剣も錆だらけ。切れ味なんて関係ない。元々僕には剣術の才能なんて無いんだから。

 ただひたすらに僕は棒を振り回すように錆びた剣を迫ってくる骸骨兵士や腐乱死体に叩きつけた。

 叩きつけるたびに身体が千切れても骨が砕けても不死者の行進は止まらない。人なら致命傷でも動きを止めない、故に彼らは不死者と呼ばれる。完全に消滅させるには僕が見たような白い炎のような聖なる力を宿した攻撃でなければならない。


 倒しても倒しても起き上がり襲ってくる不死者達。中でも動く鎧(リビングアーマー)は硬く攻撃が通りにくい上に武器を持たずとも拳や肩、つま先さえも武器となる。

 何度も殴られ蹴られ、僕の身体はいたるところが凹み歪んでいた。それでも僕は動く鎧。丈夫さだけは引けは取らない。


 ここに来たときから膝はずっと笑いっぱなしだし、怖くてこれ以上前に出ることが出来ない。前には出れないけれど後ろにはルイーゼがいる。下がることだけは絶対にしない。


 気づけばこの場に立っているのは僕だけになっていた。多くの門番達は傷つき地面に膝を着いたり横たわっているが、目の前にいる不死者はもう数える程度。もう少しで追い払える。

 僕の一撃で最後の一体が動きを止め、僕らの中に安堵が浮かんだ瞬間、怖気立つような風が吹いた。

 風と共に現れたのは首無しの骨馬にまたがり、赤黒く染まった鎧を纏った首なし騎士だった。

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