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出会い

 走って走って走ってかなり血の海から遠ざかると段々と恐怖心も薄れてきた。

 そうなると気になるのが自身から発せられるガチャガチャギシギシと喧しい金属音とこびりつく様に囁かれる主の命令。

 正直どちらも煩い。

 身体の方は錆だらけで磨いて油でもささないとどうにもならない。今すぐどうにかするのは無理だろうからこちらは諦めるしかない。

 主の命令は……いい加減黙ってくれないだろうかと願ってはみたものの効果はなかった。

 諦めて木々の根のうねる森を駆けていると不意にブチンと紐の切れたような感覚と同時に主の粘着質な声がと切れた。


『え?』


 声が途切れたことに気を取られ足元が疎かになった僕は木の根に足を引っ掛け豪快に前のめりに転んだ。

 ガッシャーンバタンとけたたましい音が静かな森に響く。


『へぶぅ』


 顔面を強打したと同時にまの抜けた声が口から漏れる。そんな僕の姿が可笑しかったのかどこからかクスクスと含み笑いの声が聞こえる。

 顔を上げると切り株の側には10代前半ぐらいの純白の神官服を纏い座り込んだ少女の姿があった。

 腰まである銀色の髪に夜空のような藍色の瞳のお人形さんの様に愛らしい少女は今まで泣いていたのか目元は赤く腫れていたが、可笑しそうに笑っている。

 僕と少女の目が合うと微笑みを浮かべていた少女の藍色の瞳にみるみる涙が溢れた。

 ポロリと少女の頬から雫が流れ落ちるのが合図だった。

 びえーんと絶叫に近い少女の泣き声が静寂を取り戻した森にこだまする。


『泣かないで、何もしないから』


 座り直し宥めるも少女は泣き止む気配が全く無い。


『君が良いて言うまで僕はここから動かないし、君が怖がることはしないと約束するから。お願いだから泣き止んで』


 僕の必死の訴えに徐々に少女の泣き声が小さくなってきた。


「本当に怖いことしない?」


『しない。絶対にしないって約束する』


 目元を覆いながら問いかける少女に即答する僕を涙で潤んだ瞳で少女は真っ直ぐ見つめた。どれぐらい少女と僕との間で沈黙が流れただろうか?実際の時間はほんの僅かなのだろうけど僕にはすごく長い時間に思えた。

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