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004

 

「ポピー、どうした?」

「……なんでだろ」

 

 ポピーは魔法使いになってしまったと、あんなに泣いていたのに何も起きない。

 いや、それは喜ばしいことなのだが、一体どういう事だ。

 

「まだまだ魔法については分かっていないことも多いんだ。しばらく様子を見よう。3人とも、始業式に出てきなさい。ここの片付けは私がしておくから」

「は、はい。ありがとうございます、ギボウシ先生。

 それでは、失礼します」

 

 ギボウシ先生もそう言っている事だし、遅ればせながら始業式へ向かう。

 

「なあポピー。お前、本当に魔法使いになったのか?」

「……うん。一昨日に……ママも知ってるから、嘘だって思うなら――」

「いや。嘘とか別に思ってねえよ。もし治ったんなら嬉しいなって」

「……う、うん。ありがと」

 

 そうだ。治ったのならこれ以上のことは無い。

 きっともう、ポピーの寿命だって元に……

 

「ん?おーい、ブルーデイジー。どうした?行くぞー」

「ああ。悪い、すぐ行くよ」

 

 何か見えた気がするけど、気のせいかな

 

 

 警備員が立つ扉を開ければ体育館だ。第1第2とあるが第1の方。

 小中高と関東学園の全校生徒が揃っているにも関わらず、ここだけで収まってしまう。

 たった1000人弱。関東地方全域の子供でそれだけだ。

 

「レボルフ様。どう、でしたか?」

「先生。それが――」

 

 俺は先生にポピーの状態を話した。

 ただ先生も校長先生と意見は同じなようで、とりあえずは様子見。

 俺たちは、毎日放課後に少しの間残ることになった。

 

 

「あー……これで2体も。モラルが欠けていく音が聞こえるような」

 

 私は泣いていた女の子(ポピー)の中に飛び込んだ。中で何をしたかは、少し振り返ってみることにしよう。

 

 

「ねえ沈下。ちょっとさ、聞きたいことがあるんだけど……」

「ん?なんだよ、あ!この器はやらないからな!」

「いや、そうじゃなくて。えっとー……一旦外行かない?」

「聞きたいことがあんだろ?だったらここでいいじゃねえか」

 

 外に連れ出そうかなって思ったんだけど、やっぱり難しいか。

 

「どうした?早く産卵の準備したいんだから、さっさとしてくれ」

「へ?あ、ああ!聞きたい事ね!聞きたい事……」

 

 どうしようかな。なんも考えてなかった。

 

「えっとー……そうそう!人間たちが作った食べ物、美味しいよね?」

「まあ、そうだな」

「だ、だよね!じゃあさ、このまま私たちが増えていったらそれも食べられなくなるって分かってる?」

「そんなこと、もちろん分かってるさ。だがな、別に無くても困らないものだろ」

「……なんで、そうなるのさ?今までみたいに皆で美味しいもの分け合ったり出来なくなるんだよ?いいの?」

「ああ」

 

 ダメだ。分かっててやってるんだ。説得、出来ない……

 

「破壊?おい、それ以上近づくな。おい、聞いてんのか!」

 

 全速力で飛んで、触れた。

 小さな光の粒が砕けてゆく。

 

 2体目。もう言い訳も出来ない。

 覚悟はしても、やっぱり……きつい

 

 

 それから、女の子の中で砕けた沈下を外に運んで、隠した。

 いつかは見つかるかもしれないけど、今はまだ、少しでも時間稼ぎをしなければ。

 

「きつい……きついけど、助けてよかった。あの女の子、涙が止んだもん」

 

 妖精を殺して人間を救う。

 だから人間たちからは感謝されてるんだ。

 

 そう考えなければやっていけない。

 私は男の子(レボルフ)の髪に掴まってふよふよと。

 現実逃避は楽でいいなぁ……

 

 あと5分。もうあと5分と、無為な時間が過ぎていった。

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