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008

 

「本日の授業はこれで終了です。明日からは顔合わせ以外にも、本格的に授業が始まってきますので忘れ物はしないようにしてくださいね」

 

 5年生の初日は一応つつがなく終わった。

 破壊がついてまわるようになった事を平穏と捉えるのはどうかと思うが、特に害は無さそうだしいいだろう。

 

「じゃあ皆、また明日」

「おう。気をつけてな」

「…………」

 

 アルスと寝たままのポピーに挨拶をして帰ろうとするが、耳元から声が

 

「ポピーちゃんも連れて行ってよね!」

「あ、忘れてた」

 

 他の妖精から守るためとはいえ、あんなヨダレ垂らして寝ているようなやつでも一応華族だ。

 他人の、ましてや異性の家で暮らすなんて普通認められない。

 

「ちょっと父様に話してみるから待ってて」

「んー……」

 

 しかしなんと言ったものか。

 突然妖精がいるんだ!なんて言ったらそれこそ心配させてしまうだろうし。

 

 ただ、こんな心配は特に気にする必要もなかった。

 

「あ、もしもし父様。少しお話が」

「ポピー家のルーナ嬢のことだろう。ギボウシから話は聞いてるよ」

「そうなんですね。それで、その……どうしたらいいんでしょうか?魔法使いにならないためとは言え、一緒に暮らすなんて向こう(ポピー家)も認めてくれないのでは?」

「いや、是非にと言っていたよ。まあそもそも、ルーナ嬢だけでなく両親の方も我が家で暮らすことになるがね」

「え!?全員がですか!?」

 

 父様はかなり思い切った決断をしたのではないか?

 確かに部屋は余っていたが、別の華族と同じ屋根の下で暮らすことになるなんて。

 

「ああ、それでね。帰ってきたら君たちを守ってくれるという破壊の妖精を見せてもらいたいんだ。特にルーナ嬢なんて魔法使いから治してもらったそうじゃないか。ギボウシから電話で伝えられたが、向こうの親御さん泣いて喜んでいたそうだよ」

「わ、分かりました。では今から帰りますので、その時に」

 

 電話を切り、窓から外を覗けば迎えの車が見える。

 ただ、いつもの運転手が立つその隣には見知らぬ黒服が。

 もう準備は整っているということか。

 

「はぁ。ポピー起きろ、帰るぞ」

「……ん?帰る?……どうぞ?」

 

 彼女は半開きの目をこすりながらゆっくりと起き上がる。

 どうやら話は分かっていない。

 俺がただ挨拶をしたのだと思ったらしい。

 

「お前も一緒に帰るんだよ。俺たちは今日から一緒に暮らすんだ。破壊に守ってもらうためにな」

「一緒に……暮らす……?」

 

 起き上がって尚閉じようとしていた瞼は徐々に開かれてゆき、ついに開眼。

 しかし、それからの彼女はあまり見た事がない慌てぶりをしていた。

 

「え?え?なんで?私と、ブルーデイジーが?一緒に?なんで?」

「だから、今説明しただろ。妖精から守ってもらうためだよ。破壊は、1人?1匹?しかいないんだから、俺たちが一緒にいなきゃダメなんだよ」

 

 既知であるはずの説明を繰り返すが、彼女はあわあわとそれどころでは無さそうだ。

 俺は諦めて窓の外に向かって手招きする。

 

 しばらくして、運転手ともう1人の黒服がやってきた。

 

「お呼びでしょうか。お坊ちゃま」

「ポピーが壊れたから運んでくれるか?」

「は、壊れ……ああなるほど。これは確かに」

 

 黒服たちの視線の先、教室の隅ではころころ転がりながら独り言を呟いているポピーがいる。

 俺は運転手では無い方、知らぬ黒服に頷き、そんな彼女を運んでもらった。

 

 それから車内では、その知らぬ黒服とポピーの和やか会話が聞こえていたが、随分と打ち解けている様子。

 うちとは違ってかなり緩い雰囲気なのかもしれないな。

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