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 20XX年。動画サイトに一本の動画が投稿された。

 時間にして僅か3分程。笑顔の少年が家の中のものを触れずに中に浮かせ、最後には車まで浮かせるというもの。

 加工技術やCGが発達したこの世の中では、それが本物の映像なのかどうかすらも分からない。そのためコメント欄は、

 

 ◇ 加工なのバレバレ。つまらん

 ◇ 子供はアカウント作っちゃダメってしらない?ママに教わらなかった?

 

 と、誰も信じなかったし馬鹿にする者もいる始末。ネットの書き込みなんで大体こんなもんだ。しかし、当事者の少年はそれに気を良くしなかったようで、短い間に多くの動画が上げられることとなる。

 

 水を浮かせてみたり、他の配信者とコラボして人を浮かせてみたり。

 

 これだけすれば信じざるを得ないだろうと思ったようだが、ネット民は何でも玩具にしてしまう。

 些細な煽りにも噛み付く少年のコラ画像やらgifやらが出回り、ネットニュースにも取り上げられる。しかし、それが幸か不幸か、名の知れた配信者の元にも届くようになり、大御所の後ろ盾を得て生配信をすることに決まった。

 

 その結果、少年の動画は加工でも何でもない、本物である事が判明した。生配信を行う場所は告知されており、それを見ていた多くの者が、その様子をSNSに投稿する。

 大物配信者も、野次馬たちも皆中に浮かび、その少年は一躍時の人となった。

 

 それからしばらくして、少年のように不思議な力を持った子供が次々と現れ始める。

 年は皆10歳。科学者たちがこぞって原因を調べるも、その力について一向に謎のまま。

 体から炎や水、風などを発する者。触れた物を溶かしたり、なにか別の物質に変える者。そして有名になった少年のように、何でも浮かせたり、逆に何でも沈めてしまう者。

 

 人は、そんな少年少女たちを魔法使いと呼んだ。

 

 大人たちは魔法使いが生まれれば利益になると分かり、各国は子供を増やす政策に躍起になった。魔法自体を崇める宗教まで出来つつある。

 

 

 それから10年ほどが経った。

 もう数多くの魔法使いが生まれ、世の中は魔法ありきで回り始めている。

 最初の魔法使いももう20歳になり、成人式では彼らをお祝いしようと、世界中でお祭り騒ぎとなった。

 

 そんな彼らは、その後すぐに謎の突然死を遂げた。

 1人や2人では無い。誕生日を迎えた者からパタパタと、数万という単位で20歳になった魔法使いが皆亡くなった。

 

 魔法が社会にもたらす影響は大きく、誰もが慌てふためき、世界は恐慌状態に。

 各国も原因を突き止めようと、突然死した魔法使いの遺体を半ば強引に調べ上げるも、一切の原因が不明。

 彼らは、全くの健康体のまま、本当に突然亡くなっていたのだ。

 

 呪い。誰かがそう言った。もう、そういうものなのだと。

 

 それからというもの、人々は魔法使いを恐れ、遠ざける。子供という被保護対象のためか、その時は中世の魔女狩りのようにはならなかったが、20年しか生きることの出来ない別の生物として、同情の目を向けられながらの生活が始まる。

 

 魔法使いたちは荒れた。

 泣き叫び引き籠る者もいれば、逆に、短い時間を面白おかしく使おうと、犯罪に走る者もいる。

 

 そんな魔法使いたちの暴動に耐えかねて、政府は魔法使いの廃棄処分を決行してしまう。

 そう。先程ならなかったと言った魔女狩りが起きてしまったのだ。

 

 子供は減って減って、いなくなって。

 ようやく平和が訪れたかと思いきや、今の子供が10歳になれば、また多くの魔法使いが生まれてしまう。

 子の親は悲しみ、多くの自殺者も出た。

 もう、世界の人口は半分も残っていない。

 

 相変わらず子供が死に絶えてゆく中、

 

 

 ついに、俺は10歳になった。

 

 

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