◇20◇白熱のトーナメント戦!
トーナメント戦、燃えます!
なんてこった!
その日は、大事なトーナメント戦の試合が、ある日でした。
これをひとつ勝ちあがれば、上位入賞も見えてくるのですが、それだけに。
ここはもう。強豪ひしめく盤上であり、百獣うごめく密林。
万全のコンディションで挑まなければ、あっというまに打ち倒される。
ふだんから風邪に気をつけて、手洗い、うがい。
前日は、睡眠をたっぷりとるとともに。首を寝違えることのない、ぴったりくる枕を。
少し、早めに起床した当日は。消化が良くも、活力となるものを朝食にする。
あ、バナナ、もういっぽん食べちゃお。
そこまでしました。ところが。
その、三番めのバナナをかじったとたん。左上の奥歯を襲う、電撃の細い根が掘り進むような痛み。
しまった。いつのまにか、おさまっていたとおもったのに。
虫歯です。
歯医者に行く時間はあったはずですが、それを怠ってしまった。
トーナメントの一回戦が、はじまるまえ。
たしかに、違和感はあったんです。
チョコアイスバーを、前歯でかじりとって。
噛み砕くために、奥歯のならぶ内頬へと、その破片をころがしたとき。
ぴりっとした痛み。
——知覚過敏かな? それは、希望的観測か、自己催眠か。
だが、その程度の疑いにおさまる、ほんの痛み。
やりすごしてしまえば、消えて忘れるものだと思っていましたし。実際、いまのいままで、私はそのことを忘れてさえいたのです。
でも、こうして。
虫歯の痛みは、もはや、思いすごしの範疇を超えた、たしかな刃となっています。
アイスどころか。冷たい水を口にふくんだときでさえ、奥歯に触れないようにとの、慎重さが必要。
バナナののこりは、反対側である、右側の奥歯でかんだものの。こちらの奥歯まで、いまに痛みだすのではないかとの恐怖と、たたかいながらの朝食になってしまいました。
さいわい、右まで痛みだすことはなかったものの。左の奥歯の痛みは、にぶいうずきとして、常勤をはじめました。
まずいって!
こんな状態で、奥歯をかみしめて、力をこめたりしようものなら——いや、それ以前に。痛みを恐れながらでは、試合に集中することさえ、満足にできやしません。
その結果——。
試合は負けてしまいました。
たしかに、あいても強かった。
負けても、なんら不思議はない。
それでも、勝てないあいてではなかったはず。
負けた理由は、はっきりしてます。
負け惜しみではありませんが。あきらかに、じぶんの体調管理がいきとどかなかったせい。
いまも、ずくずくするこいつが。
私が、負けてしまった原因なのです。
歯医者さんに予約をいれて。
苦い「負け」の味を、うずく奥歯で噛みしめながら、その日をすごしました。
こいつだ。
こいつのせいで、わたしは負けた。
やっぱり、こいつこそ私が負けてしまった原因なんですってば。
敗退——「歯、痛い」ですので!
準決勝あたりで、番狂わせが!