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二話 魔術師と探し人

久しぶりにやってきた村の様子は前来た時と変わっておらず、アルレルトはどこか安心した。


見知った村の中を進み、村長の家に到着したアルレルトの目には村長の家に詰めかける村人たちが目に入った。


「おらさっき見たんだよ、魔術師とかいう人は凄い美人だったぞ!」

「まじか!?、俺も見てみたい!」

「馬鹿!、押すんでねぇ!!」


野次馬のように村長の家に入ろうとする男衆を呆れた目で見ていた妙齢の女性たちがアルレルトに気付いた。


「アルレルト君!、久しぶりね!」

「最近村に来ないから皆心配してたのよ?」


親身になってくれる女性たちにアルレルトは笑みと共に頭を軽く下げた。


「ご心配ありがとうございます、俺はこのとおり元気です」

「そのようで安心したわ」

「村長の家に来たってことはアルレルト君も魔術師様目当て?」


「さっさと仕事に戻らんか!、バカ共が!!」


アルレルトが女性に問いに頷く前に怒声が響き、家に詰めかけてきた男たちが吹き飛ばされた。


男たちを吹き飛ばしたのは筋骨隆々な肉体にツルツルな禿頭が特徴的な村長のメイスさんだった。


「アルレルト君!?、久方ぶりじゃないか」


荒い息を吐いたメイスはアルレルトを見つけると驚いて、喜色を露にした。


「ちょうどいい所に村に来てくれた、実は…」

「貴方が話に出てきたアルレルトかしら?」


透き通るような美しい声音にアルレルトが驚くと、メイス村長の背後に女が立っていた。


背はアルレルトより少し低く全身を純白のローブで包み、フードからは真っ白な髪と橙色の双眸が覗いていた。


大柄なメイス村長より小さな人なのに存在感は村長を大きく上回っていた、アルレルトはすぐに目の前の女が件の魔術師だと当たりをつけた。


「何の話かは存じませんが俺の名前はアルレルトと言います」

「村長さん、彼を中に入れて」


そう言って踵を返した魔術師、アルレルトはメイス村長の懇願する視線に負けて魔術師の後を追って中に入った。


「村長さんには名乗ったけど改めて名乗るわ。私の名はイデア、フルグラス派の魔術師よ」

「イデア様はアルレルト君の噂を聞いてこの村にやってきたそうだ」

「俺の噂ですか?」

「ええ。貴方、一年ほど前にここら辺の地域を荒らし回っていた盗賊団が居たのを知ってる?」


アルレルトもそれなりの年月住んでいる為、一年ほど前に暴れていた盗賊団のことは良く知っていた。


「はい、まぁ」

「実はその盗賊団は一人の剣士によって壊滅したのよ、私はその凄腕の剣士を探してるのよ」

「まさかその剣士が俺だと?」


アルレルトの問いに自信ありげにイデアは頷いた。


「何故そう思うのですか?」

「理由は色々あるけど貴方だって賭けてもいいわ」

「たとえ俺がその剣士だとしてイデア様はどうするつもりなのですか?」


諦め気味なアルレルトの再びの問いにフードを取って素顔を露にしたイデアは告げた。


「パーティーに誘いに来たの、アルレルト、私と一緒に冒険しましょう」


均整の取れた(かんばせ)を微笑みで彩った姿はとても美しく、アルレルトは一瞬魅了された。


「慎んでお断りします。それでは」


丁寧に誘いを断ったアルレルトが家を出ていくとしばらく放心していたイデアが再起動して、アルレルトを追いかけた。


「待って!、せめて理由を教えて欲しいわ!」

「俺には家を離れられない理由がある。それだけです」


やはり丁寧に言葉を返したアルレルトにイデアは大きく詰め寄った。


「私は諦めないわよ!、絶対にパーティーに入れてみせるんだから!」

「どうぞご自由に、俺の意思は変わりません」


アルレルトはすぐに自分の発言を後悔することになるとは露ほども知らなかった。



「何故俺の家までついてくるんですか」

「貴方が自由にしろって言ったんでしょ?、だったら自由にさせてもらうわ」


森の中にある自宅に帰ってきたアルレルトはすぐに先程の発言を悔やんだ。


「へぇー、空気が澄んでいる森ね。陽光が届かず瘴気が溜まりやすい森林なのに珍しいわね」

「居るのは勝手ですが、この森は女性一人が野宿できるような場所じゃありませんよ」

「心配してくれるのね、これでもフレグランス派の魔術師よ。そこらの木っ端魔術師と一緒にしないでちょうだい」


不敵な笑みを浮かべるイデアからは空回りした自信は感じられず、アルレルトはため息を吐いて家の扉を閉じた。







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