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一話 森に住む剣士

新作です。

心地良い風が吹き抜けると青々とした草原に可憐な白い花弁が舞い散った。


立派な白桜(しろざくら)の木の下には小さな墓石が立っており、その墓を守るかのように座る一人の人間がいた。


「ーーー」


特殊な得物である(カタナ)を傍に置き目を瞑って座禅を組んでいるのは緑がかった黒色の髪を持つ青年だった。


髪色と同じ黒塗りの羽織りの裾が風ではためくと風が祝福するかのように小さな風の精霊たちがクルクルと周囲を回った。


青年が目を開けて墓前にお辞儀をすると精霊たちも共に頭を下げた。


「いつもありがとう、きっと師匠も喜んでます」


優しい声音で柔和な笑みと共に小精霊に告げた青年"アルレルト・ハリケーン”は立ち上がり、刀を腰帯に戻すとその場を立ち去った。


青々とした木々の間を通り抜けて、開けた所に出ると一軒家が立っていた。


年季の入った木製の家で丁寧に使われているのか、古びた雰囲気はどこにもなかった。


「"女王様”、どうやら今日は御機嫌のようですね」


小精霊たちが方々に散ると家の屋根に腰掛ける女体の精霊に気付いたアルレルトは声をかけた。


『ーーーーーーー』

「なるほど、確かに今日は良い風が吹いていますね」


一言も話さない精霊の言葉を理解したアルレルトは同意すると風で揺れる木々を見て目を細めた。


『ーーーー』

「いいえ、狩りは昨日行なったので今日は一日中家に居ますよ」


アルレルトがそう言うとドレスを着た女性の姿をした精霊は笑みを浮かべて、空中に溶けた。


そんな光景にもすっかり慣れているアルレルトは言葉通り、年季の入った家に入った。


狩りや近隣の村へ出かける用事のない彼の日常は平和そのものだ。


家の裏にある自家菜園で植えた野菜の手入れをしたり、近くの川に水を汲みに行ったりと朝からアルレルトは精力的に動いた。


あらかたの仕事を終わらせたアルレルトはいつもの日課に出かけた。


家から近くの村まで繋がる一本道の整備である。


周囲が森である以上森に住まう魔獣が出没するのでその魔獣の駆除と、走り込みの鍛練の為である。


灰狼(はいろう)の群れか」


常人とかけ離れた速度で走るアルレルトは一本道に数匹の魔獣の群れを見つけた。


走りながら前傾姿勢に切り替えたアルレルトは抜刀と同時に得物を振り抜いた。


ポーンと魔獣の首が宙を舞うのと同時に魔獣たちとすれ違い方向転換したアルレルトに魔獣たちは即座に反応出来なかった。


実力の違いは明らかで魔獣は全く抵抗できず、ものの数秒で全滅した。


「ーー」


魔獣の死骸を一瞥したアルレルトは血振りをして刀を鞘に納めた。


一息ついたアルレルトにビュォ!、と強い風が吹きつけた。


「導きの風か…」


道の先から吹いてくる温かい風にアルレルトは覚えたがあった。


いつもアルレルトを助けてくれる風だ、幼い頃からたまに吹く温かい風、師匠はこの風を"導きの風”と呼んでいた。


「たまには村に顔を出せってことかな?」


風が吹いてきているのはしばらく足を運んでいない村の方角だ。


特に性急な用事もないアルレルトは村を訪ねてみることにした。


「失礼します女王様」


森に一礼だけしたアルレルトは一本道を駆けて行った。


◆◆◆◆


しばらく行ってないとはいえ何度も訪ねた村を忘れるわけはなくアルレルトは十分ほどで村の近くまでやってきた。



「ア、アルレルト!?」

「久しぶりです、ロム爺」


村の門番である老年の男、ロム爺にアルレルトは丁寧に頭を下げた。


「本当に久しぶりじゃのう!、皆も喜ぶと思うが今日はタイミングが悪かったのう」

「何かあったのですか?」

「王都から魔術師様がやってきたのじゃ、何やら探し人がいるとかでな」


魔術師、アルレルトも名前ぐらいは聞いた事がある。


魔術と呼ばれる摩訶不思議な術を操る存在で数が少なく大きな力を持っている。


そんな人間が今村に居るという事実にアルレルトは興味が湧き、その魔術師に会いたくなった。


「その魔術師にはどこで会えますか?」

「今は村長の家に居る筈じゃが…」

「なるほど、ありがとうございます」


再び丁寧に頭を下げたアルレルトは門を通って、村に入った。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 少々有名なキャラクターと名前被りをしている所が見受けられるので、変更したほうが良いんじゃないかなーと思いました。
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