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初級ダンジョンに再就職しました  作者: ペイペイシャ
3/3

これからの事

あれから一週間

程経過し私の容体もかなり回復した。

安静にしていれば問題は無いので時間を持て余してしまう。


「カトレアさん、何か本等時間を潰せる物はありませんか?」


彼女は記録を取りながら忙しそうでいて少し申し訳なさを感じる。


「そうだと思っていくつか用意してます!」


笑顔をこちらにむけると幾つかの本を持ってきてくれた。


「これは何の本ですか?」


「そちらは、魔法・錬金術における等価交換の原則の例外についての本です!とても面白くてお勧めです!」


頭が痛くなりそうだ。


「ほっ他には何がありますか?」


「そうですねー」


彼女は箱から幾つもの本を見比べている。


「これなんてどうでしょう!種族別魔素量の推移と他種族との混血児の」


「もう少し軽く読めそうなものがいいかなーなんて,,,」


こんなん読んだら絶対体調崩す自身がある。


「じゃー少し退屈かもしれませんが、魔法の成り立ちと生成方法初級編!

 意外と初心を思い出させてくれていいかもしれませんね!」


本を開くと数多くの書き込みがされている。


「昔私が使っていた物なので少し古いですが、魔族界でも指折りの魔導士が記された本なので分かりやすくて勉強になります!」


私も魔法教育を受けたがこの本の内容はかなり異なる。


「これお借りしてもいいですか?」


「どうぞ!」


彼女は私に本を渡すと仕事に戻った。

それから私は寝る時以外この本を手放さなかった。

自分が習った知識とは根本的な部分から異なる。

簡単にまとめられているが根拠が明確で分かりやすい。

私が学んだ魔法の知識は抽象的で根拠も乏しい。

神に祈り信仰心を持つことで神の力の一部を授かることができるといったものだ。

一方で彼女の本には、魔素の本質・成り立ちが記されていた。

考えてみれば魔族は神を信仰していないが魔法を使える。

衝撃の連続だった。


数日後

「完治しましたね。」


「ほんとにお世話になりましたフォグスデンさん」


この施設に来て以来彼は本当によくしてくれた。


「今後の話ですが担当の者が来ているのでそこで詳細・質問してください」


「分かりました。カトレアさんも有難うございました」


彼女は今日も優しい笑顔を向けてくれる。こちらまで笑顔になってしまう。


「退院おめでとうございます!お貸しした本も熱心に読んでいただいて嬉しいです!」


「有難うございました、魔素に関する概念が大きく覆りました!とても勉強になりました!」


「それでは行きましょうか」


フォグスデンに促され部屋を出る。


「お勧めの本のリスト作っておいたので時間ができた時に読んでくださいね!」


カトレアはリストを手渡してくれた。一覧が少し見えたが頭が痛くなりそうなタイトルが並んでいた。


「あっ有難う、読ましてもらうね」


恐らく一生読むことは無いだろう。


「すぐに来られると思うので少々お待ちください」


フォグスデンはそう言い残すと部屋から出て行った。

案内された部屋なのだがここは何の部屋なのだろうか、豪華絢爛としか言い表せない程の部屋だ。

家具一つとっても王宮で使用されていても不思議ではない逸品である。

落ち着かないで椅子に座っているとノックの音が飛び込んできた。


「失礼します」


背が高く筋骨隆々の初老の男性が部屋に入ってきた。

見た目こそ人間であるが魔素量・質が異質だ。


「はじめまして、私はこのダンジョンの運営責任者のオルカと申します」


低音だがよく通る声で心地のいい声だ。


「ハル様には経緯とこれからのお話をしたいのですがよろしいですか?」


彼は何故私の名前を知っているのだろうか。

ここに来て以来私は名前を一度も名乗っていない。


「あの、何故私の名前を知っているのですか?」


「私は責任者ですのでこのダンジョンの事はなんでも知っている    のですよ。」


答えになっていないがあまり深く聞かないでおこう。


「ではハル様がこの施設にこられた経緯をお話ししても?」


「お願いします」


「承知しました。ハル様はダンジョン内での事はどこまで覚えいらっしゃいますか?」


「ミノタウロスとの戦闘中に陣形が崩れ仲間の魔法に巻き込まれたところまでは覚えています」


あれは事故だったのだがまさか私を見捨てて行くとは思いもしなかった。


「そうです。貴方は置き去りにされ、出血で瀕死の状態だったのでこちらで治療致しました。」


「何故ダンジョンなのにそんな施設があるんですか?」


「このダンジョンは魔王様と王様の協力関係の象徴だからです。言うなれば人と魔族が協力しあって作りあげられた初心者勇者専用のダンジョンなのです。」


言っている意味がわからない。

魔王と王様が協力関係?作り上げられたダンジョン?


「まったくもって仰ってる意味が分からないのですが。魔王と王様が協力なんてありえませんよ」


「言葉の通りです。思い返して下さい、ダンジョンを攻略している中で貴方達のパーティーは大きな怪我をしましたか?

道中回復アイテムや飲み水が至るところに置いてはありませんでしたか?

休憩していればモンスターは現れましたか?

全部こちら側が配慮していました。

これだけ配慮しても貴方達は最悪の結果に終わりましたが。」


思い当たる事ばかりだ。

確かにダンジョン内に回復なんて落ちてるわけがない。


「たしかに。....でも魔王と王様が協力関係なんてにわかに信じ難いです」


「それは後でお二人からお話しして頂きます。」


「お二人って魔王と王様がいるのですか?ここに?」


ここにいんの?なんで?


「ずっといらっしゃるわけではありませんよ。ではこれからのお話しですが、ハル様には3つ選択肢があります」


彼は淡々と話を進める


「1つは、このダンジョンの運営側として働く。

ハル様は魔法を扱えるので多岐に渡る業務で活躍していただけるでしょう。

2つ目は、なんとか回復したという体であのパーティーに戻る。死んだところは見られていないのでこれも大丈夫です。

3つ目は、人と魔族が共存する我々の町で働く。

正直なところまだまだ住民が少ないので来ていただけるなら仕事先はこちらで探させてもらいます。」


2つ目はないわ。あんな奴らの顔なんか見たくもない。


「ダンジョンで働くと何処で生活する事になるんですか?」


「基本的には我々の町で生活して頂ければと思います」



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