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無色の聖剣  作者: @ルケミー
無色の聖剣
3/3

病の正体

 「アレン、色々と急で悪いね。家にいたかっただろうが、あそこで話すにはちょっと、というよりかなり大事な話なんだ。」

 「いえ、そんな。村長さんがあの場にいたおかげでルカが助かってますし...」

 「そのルカちゃんについて話があってね。」

 村長さんと一緒に彼女の家に来た僕は、入って早々リビングの椅子に座るよう促され、座って一息つく前に村長さんが話し始めたので急いで聞く姿勢を整えた。

 そして、村長さんの話の切り出し方に不安を覚えた俺はかなり慌てるように彼女に問い詰めようとする。


 「まさか、ルカの身に何か!!」

 『落ち着け。おそらく、村長は俺と同じように妹の病に心当たりがあるのだ。』

 「え...?」

 「ふむ、どうやらその様子だと聖剣の方でも何か知ってるみたいだね。」

 つい、椅子から立ち上がり大声を出してしまった俺に聖剣がルカの病について言い出したので、俺は一瞬何を言っているのか分からずポカーンとしてしまう。

 そんな俺の様子を見た村長さんが俺の腰に下げた聖剣を見ながら、俺にまずは椅子に座るように言ってから話し始める。


 「先に結論を言うと、ルカちゃんの病の正体とそれを治す方法が分かったわ。

 ただ、信憑性に関してはちょっと高くないけどね。書かれてるものも少ないし中身がバラバラだったりで...」

 「それでも、可能性はあるんですよね?!なんでも良いんです。お願いします!俺に教えてください!!」

 「待ちなアレン。とにかく、話を最後まで聞け。気持ちは分かるが話の腰をおられちゃいつまで経っても肝心なことを話せないじゃないか。」

 何かと遠回しな感じに喋る村長さんに俺は少しイラつきながら早く具体的な中身を教えてほしいとまたしても椅子から立ち上がり机にドンッと手をつく。

 しかし、少し怒気を込めた村長さんの言葉と態度から表れる雰囲気に俺は冷静になって再び椅子に座る。


 「す、すみません。」

 「はあ。そうね。どこから話すか...

 まずは、聖剣使いについてだね。

 聖剣は選ばれた者にしか扱えないってのは覚えてるわよね。だから、聖剣使いの血を代々受け継ごうと人類は考えたはずさ。つまりは、アレン、お前に聖剣使いの血が流れてる、言うなれば聖剣使いの末裔のようなもんだ。」

 「そ、そんな。俺が聖剣使いの末裔?じゃ、じゃあルカも...」

 「可能性はあるわね。さて次は、魔王の封印についてだね。

 魔王が封印される時に聖剣使いに対して受け継がれる呪いをかけたんだ。魔王は恐らく、人類の行動を予測して自身が封印から解かれた時に再び現れるであろう聖剣使いを弱体化させるために行ったんだろう。

 そして、ルカちゃんの病はおそらく、その時の魔王がかけた呪いだろうね。致死性が無いのはそれほど魔王が追い詰められていたからかもしれないわね。」

 「なっ?!じゃあなんで実際に聖剣を扱える俺がなんともなくてルカが苦しめられてるんですか?!」

 村長さんが俺に分かりやすく話してくれるが、俺には村長さんの言っていることが半分も分からず、ただただ自分とルカだけが何もしていないのに訳の分からないことに巻き込まれていると感じ、俺はあまりの理不尽さに村長さんに八つ当たりじみた態度をとってしまう。


 「それについては偶然だったとしか言えないわ。それ以上私には分からないの。ごめんなさい、アレン。」

 「そ、村長さん...

 き、きっと村長さんでも間違えることがあるんですよ。そんなはずがない。そんな、俺とルカが聖剣使いの末裔で...ルカだけ魔王の呪いにかかってるなんて...そんなこと...」

 『少なくとも、妹の身体から魔王の力の残滓を感じた。あの力には覚えがある。流石に間違えんよ。』

 「...そん...な...」

 俺の態度に一切怒る気配の無い村長さんが自身の無力さを詫びている姿を見て、俺はまたしても冷静になって自分の行動に反省するが、そのおかげか逆に村長さんの話が間違っていると考えるようになる。

 しかし、俺の考えを聖剣が否定したことによって俺は自分が立っているのか座っているのか分からないような感覚になり、椅子に座った状態のまま呆然と机を見続けた。


 「絶望するには早いよ、アレン。

 言ったろ。治す方法があるって。」

 「ほ、本当ですか?!本当にあるんですか?!」

 「ああ、ルカちゃんの病が魔王の呪いなら、その元凶である魔王を倒せば良いんだ。」

 「魔王を...倒す...?

 な、何言ってるんですか!!戦ったことのない俺が魔王なんて倒せる訳ないですよっ!!それに、魔王ってどこに居るんですか?!」

 村長さんの話に俺は最初は希望が見えたと心の中で喜んだが、次に彼女の口から出た言葉にどうすれば良いのか分からず彼女に喚くように突っかかった。


 「ルカちゃんの容態は悪化しつつある、つまり、これは魔王の封印が解かれ始めていると考えた方がいいわね。

 おそらく、復活したばかりの魔王は力が全盛期に比べて大きくはないだろう。それならば聖剣の力があれば倒せるはずだわ。」

 「そ、そんな。無茶ですよ!無理ですよ!そもそも、村長さんの憶測ばかりでなんの根拠もないじゃ無いですかっ!!」

 『そうとも限らんぞ。実際に妹の様子から間違いなく魔王が現れるまで時間が無いことが分かる。それに、村長の言うことは一理ある。朧げだが、魔王は聖剣の力を恐れていた。封印するのにかなりの力を使ったんだ、間違いなく魔王は弱体化している。

 だからこそ、散った俺の力を集めていずれ来る魔王に備えるべきだ。でなければ、妹を救うことができんぞ。』

 「ルカを...救う...」

 俺に喚かれてもなお、淡々と話す村長さんに俺は憎々しげに睨みつけ彼女の胸ぐらを掴もうと立ち上がった時に聖剣からルカを救うことができるようなこと言われ、俺はルカが救えるということだけに反応して今までの怒りの感情がスッと抜けゆっくり椅子に座る。


 「そうよ。魔王を倒さなければルカちゃんを救えないわ。それに、聖剣の力は使用者に特別な力を与えるとも言われているから、力を集めればもしかしたらルカちゃんを救えるかもしれない。」

 「そ、そうか!聖剣の力でルカを苦しめる魔王の力を消せるかもしれない...魔王を倒さなくても...」

 『可能性はある。だが、妹を救うだけでなく魔王を倒さねばせっかく救った妹を殺すことになるかもしれんぞ。』

 「うぅ...わ、分かったよ!やるよ...やってやる!ルカのために俺はやる!力を集めて魔王を倒すよ!!」

 村長さんと聖剣の言葉に俺は自分にしかルカを救えないことを知り、ルカのために聖剣の力を集め魔王を倒す決意を固めた。

 そして、ルカの救う方法が分かったことでようやく自分が村長さんにやってきたことを思い出し急いで彼女に謝罪をした。


 「す、すみません」村長さん。俺、村長さんに色々ととんでもないことを...」

 「いいんだ、アレン。君の気持ちはよく分かるから。

 それより、お茶でも飲まないか?色々と疲れただろう。」

 彼女は怒るどころか笑って水に流してくれて俺にお茶まで出してくれたので俺はかなり迷惑をかけてしまったと反省するばかりであった。

 そのため、俺は改めて冷静になれたが、聖剣の力を集めて魔王を倒すなんてどうやればいいのか分からないと考え込むようになる。

 すると、聖剣からまるで俺の心を読んだかのようなタイミングで声が聞こえた。


 『安心しろ。今の俺に力はあまり無いが、使用者の身体能力を上げることができる。今から呑気に体を鍛える時間は無いが、聖剣の力を使いこなす時間はあるだろう。』

 「聖剣の力を使いこなすったって。どうすれば...」

 「なら、ここの近くの森に行けばいいんじゃないか?

 アレンの話じゃ、森に魔物が出始めているのだろう。魔物を倒せば森の恵みも元に戻るかもしれないし直接的な脅威が無くなるのは村としても助かるわ。」

 聖剣の言葉に俺はさらに考えるがどうすれば良いか分からなかった。

 だが、村長さんが提案をしてくれたので俺はその提案について考えてみた。


 「なるほど、たしかにあの森で魔物がいてそれを放置してたらルカが危ないですね。

 分かりました。俺、森に行って鍛えます。」

 「私から言ったことだけれど、無茶はしないでね、アレン。

 それと、旅に出るなら勉強もしないといけないわ。私が教えるから毎日昼過ぎにはここへ来てね。もちろん、ルカちゃんも一緒でいいわ。」

 「はい。頑張ります。ありがとうございます、村長さん。」

 俺がルカの安全のために森に出現したであろう魔物を一体残らず全て倒してやろうと思っていると、村長さんから旅に必要な知識を学ぶように言われ俺は少し苦手意識を持つが、ルカと一緒に勉強できると聞いて、兄として不甲斐ない姿を見せないように頑張ろうと燃え上がるのであった。

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