25.いつまでもあなたと
玲依ちゃんと出会って半年が過ぎて、新しい年になった。
年明け初日、玲依ちゃんを実家に送り届けて、調べておいた観光スポットに向かう。
植物園で見頃を迎えた色とりどりの花の写真を撮りながら、隣に玲依ちゃんが居ないことを寂しく思う。今までは1人が気楽だったし、綺麗な景色を見ても誰かに見せたいな、とか一緒に見たいな、なんて思うことは無かったのに。
沢山ある中で、真っ白な花がやけに目を引いた。アングレカムって書いてあるけど初めて聞いたな……
調べてみれば夕方から夜にかけてすっきりとしたいい香りを放つとか。気になるけど夕方までは居ないかな。
花言葉は"祈り"と"いつまでもあなたと一緒"。
……いつまでもあなたと一緒、か。現物は渡せないけど、せめて写真を届けよう。
『綺麗に撮れたから送るね。ラン科の花で、珍しいんだって』
なんだか恥ずかしくて花の名前は伏せたから玲依ちゃんには伝わらないだろうけど、私の気持ちってことで。いつか一緒に見に来て、気持ちを伝えられたらいいな。
『本当に綺麗に撮れてるね。こっちは甥っ子と姪っ子が大騒ぎ。今公園に居るよ』
メッセージを送れば、直ぐに既読がついて、さっき手を振ってくれた男の子と2歳下くらいの女の子が砂場で遊んでいる写真が送られてきた。雰囲気が何となく似てるし、玲依ちゃん、ママだって思われるんじゃない?
玲依ちゃんの子供、可愛いんだろうなぁ……私でいいのかな、ってまた不安になったけれど、こんなんじゃまた玲依ちゃんに怒られちゃう……
自信持たなきゃ。私が誰よりも幸せにするって決めたんだもん。
『神社に来たんだけど階段が多すぎて疲れた……』
『私も疲れた……体力ありすぎ……しかも途中から人数増えたし……』
げっそりした犬のスタンプが送られてきて、添付されていた動画にはお姉さんの子供なのか小学校中学年くらいの男の子2人が増えていた。
子供って元気だなぁ。玲依ちゃん頑張れ。
『景色がすごく綺麗。次は玲依ちゃんと一緒に見たいな』
『今度一緒に行こうね。侑の写真送って?』
『恥ずかしいからヤダ』
『けちー!! いいもんカメラロールにいっぱいあるし!』
あぁ、拗ねちゃう玲依ちゃんが浮かぶ。絶対可愛いだろうなぁ。会いたいなぁ。まだ離れて数時間なのにもう会いたい。
どこにいても、何をしてても考えるのは玲依ちゃんの事で、こんなにも大切に思える人に出会えたことを幸せに思う。
車中泊をして色々な所を見て回ろうと思っていたけれど、寂しくなって家に帰ってきた。
さて、玲依ちゃんを迎えに行く日まで何しようかな……
沢山撮った写真を整理しよう、と思い立ったけれど、玲依ちゃんが可愛すぎて動画を見ちゃったりして全然進まなかった。まあ、これは仕方がない。
洗車をしたり買い物に行ったりダラダラ過ごす。連休中にこんなに家にいるなんて何年ぶりだろう……玲依ちゃんと出会う前の私ならこんな風に家で過ごす、なんてまずなかったもんな……
「……おかえり」
「侑が料理してる……? え、何事?」
仕事から帰ってきた母がキッチンにいる私を見て目を見開いているけど、まあ、そうなるよね。
「料理覚えようかなって」
「へえ……」
スマホ片手に料理をする私の横に来て見学体勢に入る母……気が散るんだけど……
「お母さんの分も作るからあっちいってて」
「仕方ない、着替えてくるわ」
着替えに行った母が戻ってくる前に作り終わらせたい……!
「うん、美味しい」
「……良かった」
「最近はどうなの? まだ片思い?」
「……付き合ってる」
「そう。女の子?」
「……うん」
こんな風に同じテーブルでご飯を食べるなんて久しぶりすぎてどうしたらいいのか……
「大切にしなよ」
「もちろん。……ご馳走様でした」
「侑、いつか紹介してね」
「うん。今度紹介する」
前に同じセリフを言われた時には、そんな日なんて来ない、と思っていたのに感慨深い。
家に来てくれた時に会うかも、って思ってくれてたくらいだから会ってくれると思うけど、電話した時に玲依ちゃんに聞いてみよう。
「あのさ……お願いがあって。今度お母さんに会ってもらえる?」
『もちろん。侑のお母さん、いつが都合いいかな?』
「うーん、土日は大抵仕事だから先になると思うけど、聞いておくね」
『緊張するなぁ……』
「私も」
『ふふ、侑も?』
親に恋人を紹介するなんて初めてだし。みんな凄いな……
電話をしたら玲依ちゃんに会いたくなって、迎えに行く日が待ち遠しい。
玲依ちゃんを迎えに行く日、遠足前の子供か、ってくらい早起きしてしまった。眠くなっちゃったら困るし、しっかり昼寝しておかないと。
少し早めに到着して駐車場で待っていれば玲依ちゃんが出てきた。隣には女性の姿がある。なんかすっごく見られてるけど……
玲依ちゃんが彼女、って紹介してくれて、胸がいっぱい。さっきから、自然と緩む頬を頑張って引き締めてる状態。
紹介してもらえるって嬉しいな……
「玲依の恋人が女の子だったとは……昔後輩たちに告白されて、そういう対象に見られない、って断ってなかった?」
「うん。付き合ってきたのは男性だし、その時はそう思ってたんだけど。侑は自然と恋愛対象に見てたかな」
「へぇー、侑ちゃんだから、ってことか」
「そうだね」
うわ、照れる……それにしても、真希さん、後輩たちって言った? やっぱり昔から人気だったんだな……そりゃね、こんなに美人でかっこいい時もある先輩が居たら好きになっちゃうよね。
「侑? どうしたの?」
「ぅえっ!? え、なんでもないよ?」
心配そうに見上げられてキュンとした。外じゃなければ抱きしめるのに。
「ほんと? 運転疲れちゃったんじゃない?」
「全然! 早く起きちゃったけど、ちゃんと昼寝してきたし。玲依ちゃんは寝てていいからね?」
「……寝て欲しいってこと?」
「えぇ? なんでそうなるの??」
玲依ちゃん、ちょっと酔ってる? 甘えた口調になってて可愛い。
「違うの?」
「違うよ。色々話聞かせて?」
「うん」
満足気に頷く玲依ちゃんを抱き寄せようとしてハッとした。さっき外だから、って思ったばっかりだし、真希さんもいるんだった……
「あ、お気になさらず~私のことは壁だと思ってもらえれば。チューしとく?」
「真希、楽しんでるでしょ……」
「いや~、初々しいというか、お互いしか見えてない感じ、いいわ~」
恥ずかしくて真希さんを見られない。確かに玲依ちゃんといると周りが見えなくなってるかもしれない。恥ずかし……
「さて、玲依の彼女にも会えたし、私は旦那と合流して飲み直しますかね~」
「良かったら送りましょうか?」
「すぐそこだから大丈夫。ありがとう」
「気をつけてよ?」
「平気平気。また会おうね! お幸せに! じゃ、また~」
手を振って旦那さんの元へ向かった真希さんを見送って車に乗り込めば、助手席に座る玲依ちゃんと目が合ってなんだか嬉しくなる。目が合っただけでこんなに幸せな気持ちになるとか、恋ってすごい。
好きな人が自分を好いてくれて、周りからも応援してもらえるって凄いことだよね。ましてや私たちは同性だし、まだまだ理解されない事が多いのに……本当に周囲の人に恵まれてる。
楽しそうに帰省中の出来事を話してくれる玲依ちゃんに触れたいな、と思うけど運転中だから触れられなくてもどかしい。
「玲依ちゃん、手貸して?」
「うん? 手?」
信号で止まったから玲依ちゃんの手を握ればぎゅっと握り返してくれて、嬉しそうに笑ってくれた。かわい……
「……んっ、くすぐったい」
「玲依ちゃん、エロい……」
「何言ってるの? ほら、青になったよ」
「うわ、はや……」
手の甲を撫でれば少し声が漏れて、その吐息にすら反応しちゃうとか変態か私……玲依ちゃんには変態でしょ、って言われるだろうけど。
話は尽きなくてあっという間に家の近くまで帰ってきた。一緒に居たいけど、玲依ちゃん、今日はゆっくりしたいかな……?
「侑、運転疲れちゃった……?」
「ん? 全然。玲依ちゃんは疲れてない?」
「うん。大丈夫。……うち来ない?」
「いく」
断るわけなんてないのに、遠慮がちに見上げてくる玲依ちゃんが可愛い。もう日付が変わってるし、さっきから眠そうだし早く寝せてあげないと。
「ゆー、ぎゅーして?」
「うん。玲依ちゃん、お風呂入る?」
「んー、ゆーもいっしょ?」
家に着くなり、抱きついてきた玲依ちゃんに聞けば、とろんとした目で見上げてくる。何この可愛い人……
「ゆっくり入っておいで?」
「……いやなの?」
「嫌じゃないけど……」
「けど? ……んっ」
じいっと見つめてくる玲依ちゃんが可愛くて唇を重ねた。ぎゅっとシャツを掴んで受け入れてくれる玲依ちゃんが愛しくて仕方がない。
「こういうことしたくなるから、ね? 先に入っておいで」
潤んだ目の玲依ちゃんに見上げられて、私の理性はギリギリだけど何とか耐える。キスはしちゃったけど……
玲依ちゃんと一緒に居られるだけで幸せだし、シてばっかり、だなんて思われたら立ち直れない。
「……してくれたらいいのに」
「っ、玲依ちゃん……行こ」
小さく呟かれた言葉にさっきまでの決意なんて呆気なく吹き飛んで玲依ちゃんの手を引いて寝室に向かう。誘われたってことでいいんだよね?
「えっ、お風呂は……?」
「後でちゃんと入れてあげるから」
お風呂で、ってのもいいけど、逆上せちゃったら大変だしベッドがいいでしょ?
気持ちよさそうに眠る玲依ちゃんを眺めながら、起こすべきか迷う。メイクを落として、身体を拭いても起きなければお風呂は朝でいいかな? よし、そうしよう。
「んっ……」
起きたかな、と思って手を止めたけれど、すぅすぅ寝息が聞こえてくるから起きてないみたい。艶っぽい声を出されるとさっきまで私の下で啼いていた玲依ちゃんを思い出してドキドキする……決してやましい気持ちで触れてる訳では無い。
身体を拭き終えて、さすがに服を着せるのは無理だからしっかり布団をかけて横に潜り込んだ。
私が横に来たことに気づいたのか、玲依ちゃんが擦り寄ってきてくれたからぎゅっと抱きしめる。あぁ、幸せだなぁ……
朝起きたら、お風呂に入れてくれるって言ったのに、って玲依ちゃんに怒られちゃうかもしれないけど、そんなやり取りすら愛おしく思うんだろうな。
結婚して出産して、って玲依ちゃんが思い描いていたであろう生活はあげられないけれど、私といてよかった、って思い続けて貰えるように、誰よりも大切にするから。
玲依ちゃん、これから先もずっと一緒にいてね。
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