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「おい、にーちゃんなに突っ立ってるんだそこで。」
気が付いたら俺は見知らぬ街にいた。まるで中世のヨーロッパのような作りだ。
「おーい聞こえているのかー大丈夫か?」
咄嗟に俺は拳を構えすかさず殴りかかる。が、いとも簡単によけられてしまった。
相手はオッサンだぞ・・・
「威勢がいいのはいいことだが、こんなところでどうしたんだ。」
俺が殴り掛かったにも関わらず、オッサンは話しかけてくる。
「おい、ここはどこだ?」
「なんでい、お前さん記憶喪失か?見たことない恰好してるし、しょうがねぇ。俺が面倒みてやろう。」
「別にいいよ。なんとかするわ。」
「でも何もわからないんだろう?とりあえず自己紹介だ。俺の名前はアレス。アレス・ストレンジだ。よろしくな」
おっさんが握手を求めてくるので仕方なしに俺も手を握る。
「俺は晴翔だ。」
「おう、ハルト!よろしくなっ!」」
背中をドンとたたかれた反動で俺は思わず転びそうになった。
こいつさては強いのか。普通のおっさんにしか見えないが・・・
「なんだ貧弱な体しているなぁ。ここは最弱が集う街、魔族の国から一番離れた始まりの町といわれてるんだぞ?お前さんそこらの魔物も倒せないんじゃないか?」
は?なんだそれ?魔物?というか俺は最強だったんだぞ、喧嘩で負けたことなんか一度もないぞ?
「まあ、何もわからねぇ、ならついてこいや。」
俺はオッサンに首根っこをつかまれズルズルと引きずられて行く。
なんだこの馬鹿力は?こいつ強いんだろう、実はこの町一番の最強なんだろう。
そのままずるずるとついていく?と頭に何かが語り掛けてきた。
(はぁーい、神様登場よ。あんたはこの世界では最弱!よくお分かり?)
(意味が分からねぇ。このオッサンが強いだけだろ、てかお前なんで俺の頭に・・・)
(神様だからヨ♪貴方はこの世界の人々と比べて弱いのお分かりいただけたでしょうか?)
(なんだそれ、意味がわからないぞ)
(普通この世界に転移してもらう人間は、私がある程度強くさせてあげるんだけど、貴方私のこといきなり殴ったじゃない!そりゃあこっちもそんなことしてあげないわよ。てなわけで頑張って、魔王でも倒してきなさいな。ヨロシク~)
プツンと電話が切れたように声が聞こえなくなった。
おかしいだろ、ただ殴っただけなのに・・・(それがおかしい)
いいだろうあいつが言った通り魔王とやらを倒してやろうじゃないか。
「ぶつぶついってどうした?ついたぞほら!ここが冒険者が集うギルドだ。ここでいろいろ説明を受けてこい。」
またドンッと背中を叩かれこけそうになりながら俺は、まるでゲームの世界に出てくるようなバーのような建物の前に立たされた。
「じゃあ、頑張れよ、少年」
オッサンはそのままどこかに行ってしまった。案外悪い奴じゃなかったのかもしれない。
俺は内心ドキドキしながらそこの扉を開けた。