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第8話 演習

「あー、寝不足だ」


 ダレンの教室での第一声。俺は見てたぞ。


「昨日、しっかり寝てたじゃん」


「おいおい。ケイタわかるだろ? 眠れたようで眠れなかったんだよ」


 いや、わからん。


「俺はな、今日が憂鬱で憂鬱で……」


 なんで魔法学校なんかに来てしまったんだよ。


「まだ入学したばっかりだろ? こんなとこでへばってたら、上級生になる前に死んじまうぞ」


 ダレンが憂鬱になってしまう理由。それは今日から演習が始まること。





 分厚い壁に囲まれた演習室の机に、事前に配られたものと同じ、プラスチックの四角い薄いボードが用意されている。

 演習では、このボード上に、チョークで魔法陣を描き、詠唱を行う。


「それでは、今日から演習を始める。連絡していたように、水属性の属性魔法、ウォータを実践する」


 レイ先生の声で授業が始まる。


「まずは、私が実践するから、みんなこっちに来てくれ」


 一斉に教壇に集まる。すらすらと描かれていく魔法陣。みんな真剣な眼差しで見つめていた。


「これは、水を生み出す魔法。よく見るように」


 魔法陣から少量だけど水が噴き出した。水飛沫が飛ぶので、みんな濡れてもいい服装で来るよう言われていた。準備のいい生徒は、室内にレインコートを着て準備している。


 レイ先生は、描き終わった魔法陣に集中する。


「清き水よ、飛沫と共に、現れよ」


『おお!』


 みんな声を合わせた。

 魔法自体は初級なので、見たことも、やったこともあると思うが、大人が使う魔法を目にすると、やっぱり魔法使いぽくで憧れる。


「無詠唱ができる人は無詠唱で。魔法の強弱と、周りの人に気をつけよう。では席に戻って始めるように」


 みんなそれぞれ演習をこなす。


「なあ、なあ、ケイタ。できたぜ。俺、できた」


 ダレンが嬉しそうにこっちに来た。俺の周りには、話したことのないクラスメイトしかいなかったので、居心地が悪かったところだった。


「よかったじゃん」


「まあ、詠唱有りだけどな。ケイタはもちろん無詠唱?」


「いいや、詠唱有りだよ」


 詠唱有りってことにしておいた。





 一通り演習を終えると、レイ先生が生徒を教壇の方に呼んだ。


「このクラスはみんな優秀なようだ。授業時間も少し余ったみたいだし、誰が、一番強く発動できるか挑戦してみよう。自信のあるやつはいるか?」


 こんなときは、うちのクラスはかなりシャイだ。


「レイ先生、こいつが一番だと思います!」


 ダレンが、俺を指さす。

 何言ってんだてめえは!!


「お、おおダレンわかった。……ケイタ、できるか?」


 レイ先生は気まずそうに苦笑いする。

 ダレン、先生に苦笑いをさせるな! 


「あ、はい」


 まあいいか。いつも魔法の強弱の扱いに集中していたので、上限がどれだけかがわからないし。こんな機会めったにない。


 教壇の前で、床にボードを置き魔法陣を描く。


「清き水よ、飛沫と共に、現れよ」



 3mほどある天井に水がつきあがる。

 水飛沫がクラスメイト全員に飛んでしまった。


 あっ、これやばいやつだ。


『えー!!』


 一斉に声が上がった。

 しまった。やり過ぎた。こんなことになるとは……。


「すみません……」


 レイ先生に顔を向けて謝った。クラスメイトの顔が怖くて見れなかった。


「ケイタ。……確か、君の適性は、強化魔法だったはず」


「……そうです。すみません」


 レイ先生はあごを右手で隠し、じっと俺を見ている。


「魔法陣の正確さ、干渉能力。すべてが卒業レベルだ。」


『えー!!』


 俺も、クラスメイトと一緒に声を出してしまった。





 授業が終わった後、レイ先生に残るように言われた。


「ケイタ。魔法模擬場についてきてくれ」


 魔法模擬場の中央まで、連れられてきた。

 初日に見に来た以来だな。中に入ってみると、まるでテレビで見ていたサッカースタジアムみたいだ。


「上限を気にせずに、難易度の高めの魔法を見せてくれないか?」


「いいんですか……」


「近くに何もないし、心配することはないよ」


 レイ先生から、演習のボードいくつかを渡され、水属性以外の3つの属性魔法を詠唱した。

 今、使うことのできる上級魔法、あとは中級魔法をいくつか。

 今まで修業を行ってきて身に染みたもの。だけど、自分の限界を引き出すのは初めてだった。



 一通り終わったところで、レイ先生から止めの合図があった。


「無陣無詠唱で扱えるのか?」


「はい、一応できます。けど、今は魔法陣と詠唱があれば、より安定します」


「そこは訓練次第だな」


 またレイ先生はあごを右手で隠した。

 考え事をするときの癖らしい。


「……君はもう、熟練の属性魔法使いにも匹敵する。それぞれを適性として生まれた人にだ」


「ということは……」


「ケイタ、君は属性魔法と強化魔法の二つの適性を持っているということ……だな」


 俺は、どうやら適性者と同じくらい、属性魔法を扱えるらしい。その日は、初期の水属性魔法の演習のはずだったのだが、全属性魔法を試すことになった。


どうぞ楽しんでいってください!

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