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第5話 黒いマント

 ライラ校長に会ってから、俺は強化魔法の修業にかなり力が入った。

 鉄の強度強化は十八番となった。魔法書でいうところの中級はほぼ使えるようになったが、上級に関してはぼちぼちといったところだろうか。なんせ魔法の種類が多いので、まだ見たことがないものも多いんだろう。

 書店で買ったライラ校長の本は、魔法書ではなく、魔法を使うための心構えや、鍛錬の重要性について書いたものだった。とてもポジティブなもので、修業するうえでとても参考になった。ベストセラーとなっているその本のシリーズを買いに行くのが、修業の合間の息抜きになっていった。





 エルヴァ魔法学校への入学の日。

 魔法学校の学生は全員が寮生活をすることになる。だから長い休み以外はこの家にも帰れなくなるのだ。


「ケイタよ、頑張ってこい」


「うん。頑張ってくるよ。アウストこそ元気で」


「元気が取り柄じゃからな!」


「はは! でも、転送魔法はほどほどに!」


「それはできんな。わしの生きがいじゃ」



 アウストは本当のおじいちゃんのようになった。初めは、キメラ退治をするためにこの世界に転送されてきたけど、あの日、キメラに会ったことを告げると、すごく心配してくれた。俺は心配されたことに少し驚いたが、とてもうれしくなった。

 そう。アウストは、俺が魔法を使える機会を与えてくれた恩人だ。


「ケイタ。これを持っていけ!」


「これは……!」


 黒のマント。魔法使いなら黒いマント。俺は、何度もアウストに熱弁していた。

 サプライズで用意していてくれたのか! 魔法学校は制服だけど、勝負服として絶対着よう。

 

 マントを鞄の中にしまい、玄関を出る。



「じゃあ、行ってきます」





 歩いて魔法学校へ向かう。新しい制服を着た同い年ぐらいの子が同じ道を歩いている。

 みんな頭良さそうに見えるなあ。中学入学の時もそうだった。周りが頭よく見えたり、スポーツがすごくうまそうに見えたり。なんでなんだろ、不思議だ。


「あなた、どこ見て歩いてるのよ。危ないわ。どきなさい!」


「え?」


 振り返ると、魔法学校の制服の女の子。

 肩まである白髪、透き通るような白い肌に、青い綺麗な目。


 綺麗な人だなあ。でも、かなり口調がきつい気が……。


「あなた聞いてるの? 邪魔なのよ、聞こえなかった?」


「え。あ、すいません」


 よそ見していた俺も悪いけど、あの言い方はないんじゃないか、いくらなんでも。

 えっ! 歩くの速っ。すんすん行ってる! 


 この世界にもいろんな人がいるもんだな。変な人とはあまり関わりをもたないようにしよう。





「失礼します」


「やあ。ケイタよく来たね」


「ライラ校長、これからよろしくお願いします!」


「元気があってよろしい! ケイタは3組だったね。勉学に励むように」


 校長室での挨拶も終わってまだ時間があったので、ざっと魔法学校の中を見てまわることにした。敷地内には広場や、魔法模擬場といわれる競技場のようなものがあった。かなりスケールが大きい学校だ。この町だけじゃない。ティラス内の、魔法使いを夢見る若者が集まる学校。こうでなくちゃ。


 俺は観光に来たんじゃないんだぞ、これからここで勉学に勤しむんだ。

 気持ちを整えて3組の教室に向かう。早めに来たが、時間はぎりぎりだ。


 教室の中へ入る。

 もちろん、みんな、今日初めて会う人達だ。初めて会う人……。



「あ! あなた、来る時に会った……邪魔した人」


「……その節は、どうも」



 変な人と同じ組になってしまった。

 入学早々に厄介ごとに巻き込まれてしまったような気がする。

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