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第4話 本と出会い

 一日中家にいて鉄の強化をしていると、気分転換が必要になる。

 今はもっぱら鉄の強化。強化魔法の初級編だ。鉄の主成分についての勉強、鉄の強度の話。

 鉄。鉄。鉄。ここ数日、俺は鍛冶屋さんになっていた。


 そんな今日は、アウストにお金をもらって強化魔法の本を買いに書店に行くことにした。



 ここティラスは、いくつかの町があり、この町がゲルリック。ティラスのほぼ中央に位置していて、一番栄えている町だ。栄えているといっても、この国自体があまり大きくはないらしく、鉄道や車のような乗り物は無い。馬車とたまにすれ違うぐらい。

 そして、この国は大体が石で出来ている。道も整備されていて、建物もクリーム色や赤褐色のレンガのよう。全部協会のように見えてしまう。日本ではあまり見たことがなく、見とれてしまう。


 そんなわが町、ゲルリック内には国内の魔法書や関連物が多く集まる。

 少し離れるらしいが、宮廷や、ティラス最大の魔法学校もあると聞く。


 ……どんなことを学ぶんだろ。行ってみたいなあ。


 そんなことを考えている間に、アウストに教わった書店に着いた。

 中には古い本から新しい本まで揃えている。入口から奥行きのある店内だ。


「こんにちは」


「いらっしゃい。見ない顔だね、隣町の子かい?」


 奥の方から、白髪のおじさんがこっちを見ている。

 よくそんな遠くから、この町の子かどうかわかったな。商売人は目と口が達者だ。


「いえ、違います。ケイタ・ブラン。近くに住む、アウスト・ブランの孫です」


「ブラン……。ああ、あの転送じいさんか!」


「転送じいさん!?」


「はは、君のじいさんはここら辺で有名だよ。魔法でガラクタを家に転送してるって」


 おじさんの笑い声が店内に響く。

 アウスト…。あのじいさんめ。家に物が多いのは、そのためか。


 俺は大きな声を出したくないので、近くまでゆっくり歩いていくことにした。


「強化魔法の本を探しに。なにか、おすすめの魔法書もあれば教えてほしいです」


「強化魔法か。ほれ、そこが強化魔法と属性魔法のコーナーだよ」


 おじさんが、揃えてある本を指さした。

 やっぱり、属性魔法と強化魔法の本は飛び抜けて量が多い。


「魔法書のおすすめねえ。校長先生の出してる本、読んだことある?」


「校長先生って、魔法学校のですか?」


「そう。エルヴァ魔法学校の校長先生。ライラ校長さ」


 魔法学校の校長の本。かなりためになりそうだ。

 俺は、魔法学校の校長の本と、強化魔法の本を数冊購入した。


 今日の用事は終わったが、外は暗くなるにはまだ早そうに見えた。


「ちょっと探検してみるか」


 書店を出て、中央の大広場に向かう。今日も人が多く、賑わっている。

 俺は、大広場を挟んで、家とは逆方向に行ってみることにした。


 この国の町並みは、ホントに綺麗だ。大広場の近くは、少し背の高い建物が多かったけど、脇道を進んでいくと背の低い家が並んでいる。道の脇には緑も多い。

 よそ見ばかりしていると、隣町から来たかと思われるので、人とすれ違う時は少しだけ遠慮をする。


「ちょっと遠くに来すぎたかな」


 周りにばかり気を取られていて、道が細くなっているのに気が付かなかったようだ。

 人にすれ違わなくなった、人気の無い道を帰ろうとした時。



「グオオオオオ!」


 地響きのような音と共に、目の前で、見たことのない生物がこちらを見ている。


「キ、キメラ!?」


 どこから来た? さっきまで何もなかったところに。

 体が羊で、尻尾は蛇。赤く充血した目で、今にも襲い掛かってきそうだ。


「グオオオオオア!」


 考えるのは後回しだ。

 時間を稼いで逃げる。強化魔法も、ろくに使えない今の俺じゃ、倒すのは無理だ。

 直感がそう言っている。


 火の粉を出す魔法だ。これなら少しは……。



 スゥーっと、何かが、耳元を、物凄い速さで通り過ぎる。後ろからだ。


「グアアアアアア!」


「えっ? 何!?」


 目の前で、キメラが頭を抑えて、のたうち回っていた。額には火の弓矢。上級魔法だ。


「怪我はない?」


 カツカツとヒールの音。女性がこちらへ向かってくる音がする。

 振り返ると、40~50歳くらいの女性。金髪の艶のある長い髪。すらりと背の高い、綺麗な女性だ。

 その奥には、もう一人女性。後ろのほうで立って、こちらを見ている。


「あなた、危なかったわね。彼女にお礼を言わなきゃね」


 金髪の女性が笑いながら、後ろに立っている女性のほうを見る。

 さっきの魔法は後ろの人が使ったということか。すごい迫力だった。



「グアア……ア、ア……」


 キメラの声に勢いがなくなってきた。弱っているんだ。


「後はお願いね」


 もう一度合図を送ると、火の魔法を使った女性が、キメラのほうへ向かう

 弱っているキメラを息絶えるまで、火の魔法で燃やす。辺りは焦げ臭いにおいに包まれた。

 手際よく作業を済まし、その魔法使いはキメラの死体を持ち帰った。


「へんなところを見せてしまったわね。私たちも、キメラが多くなってきて困っているのよ。ところで、あなた学生さん?」


「……いえ、僕は学校へは通っていません」


「何歳になるの? かなり若そうだけど」


「今年で15歳になります。」


「15歳……。あなた、うちの魔法学校へ来る?かなりのマナを持っているようだし」


「え、え!?」


「ごめんなさい。自己紹介が遅れたわ。私は、ライラ・ミラー。エルヴァ魔法学校で校長をしているわ」


 ティラス最大の魔法学校。ライラ校長。書店で聞いた名前だ。


「特待生で迎えるわ。……魔法に興味があれば、だけど。」


「――行きます!」


 こんなもんは即答だ。特待生で魔法学校に。魔法を習えるなんて、こんな話はめったにないぞ。


「それはよかったわ! この秋、私の学校を訪ねなさい」


 ライラ校長は、名刺を渡した。学校の住所と、肩書。


 エルヴァ魔法学校校長。宮廷魔法使い。

 宮廷魔法使いはこの国の魔法使いのトップ。7人しかいないと聞く、魔法のスペシャリストだ。





 俺は、ひょんなことから魔法使いが通う学校へと入学することが決まった。

 その日、そのあとライラ校長といくつか話をしたが、心が躍っていて上の空だった。

 名前やら、どこに住んでいるかやら、たぶんそんなとこだろう。


次回から魔法学校編です!


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