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第2話 俳句

 それから数日、読み終わっていた初級の魔法書を読み返した。


 アウストに言われた通り、魔法の三要素――知識、認識、意思――を意識しながら勉強し直した。魔法の理を考え、発動する魔法をイメージする。今までは本の表面しか理解していなかったのだ。

 何冊も関連書を見ながら頭を抱えた。そしてアウストに助言を求めながら、初級の属性魔法については、ほぼほぼ一人で発動できるようになった。


「一通り初級魔法は使えるようになったようじゃの」


「うん。アウストのおかげでコツを掴んだ気がするよ」


「次は応用編じゃな。そこで見ておれ」


 アウストは目の前に人差し指を立てた。

 すると、指の上に魔法陣が現れ、小さな火の玉ができたのだ。


 これは、最初に行った、火の初級魔法だ。なんで、魔法陣も詠唱も無しに使えるのか。


「えー! なんで!?」


 そんな俺を見て、アウストは声を出して笑った。


「いいか、ケイタよ。魔法は三要素があれば使うことができるのじゃよ。魔法陣を描くことや詠唱は自然と干渉するための手法にすぎないのじゃ。これらは、人の中にあるイメージを表現しやすくするためのものなんじゃ」


「じゃあ、魔法陣や詠唱は別にいらないものってこと?」


「いらないことはないぞ。もちろん、描いたり唱えたりすることで、簡単にイメージしやすくなるからな。熟練の魔法使いになっても、難解な魔法を使う時に必要になることが多いぞ」


「俺も魔法陣と詠唱無しでできるかな?」


「試したことがないだけで、できるはずじゃよ。それだけ本を実践していたら問題ないじゃろう。まずは、心の中で詠唱してみるといいぞ」


 予備動作がいらない魔法。奇跡に近いと思った。

 いつも行っていることと同じ。イメージするんだ。

 

 ……火の玉よ、蛍火の如く、眩く照らせ。


 指先に、小さな火の玉ができた。魔法陣を描いて出した火より、小さい気がする。


「まあ、初めはそんなもんじゃ。次は、こう!」


 指を立てて、アウストは得意げにこっちを見ている。

 何が始まるんだ?



「朝起きて、腰が痛くて、大変じゃ!」


 なに言ってるんだ、このじいさんは。――と思ったら火が出てる! 


「なんで!? 俳句かよ?」


「川柳じゃ!」


 どっちでもいいんだよそんなことは! なんで火が出てるか教えろ、じじい!


「わかった、わかった。なんでそんな、へんてこな川柳で、魔法が使えるのさ?」


「簡単じゃ。言葉とは無関係に、頭と心で魔法をイメージしているからじゃよ。まあ使うことはないがな」


 使うことはないんかい。


「これができたら大したもんじゃぞ。魔法の訓練にはうってつけじゃな」


 よし! やるぞー!





 その日からは、魔法陣と詠唱無しで魔法を使う訓練を行った。あと、俳句。

 火の初級魔法以外についても試していた。使えるは使えるけど、イメージだけでは魔法の効力が少し小さくなる。アウスト曰く、訓練するべし、だそうだ。


 俳句の方はというと……激ムズだ!

 

 アウストは簡単にやっていたけど……。頭で考えていることと、何も関係ないことを言葉にする。できていると思っていても、無意識に気が散っているのか、魔法は発動しない。心の中で詠唱するのと同じだろと思っていたのに。

 これも、アウスト曰く、訓練するべし、だ。


 とりあえず、俳句は後回しにした。魔法陣と、詠唱無しで魔法を使えるようにする訓練。

 これは、心の中で詠唱するバージョンと、イメージだけバージョンだ。

 魔法陣を描くことはかっこいいけど、イメージで使えたほうが便利そうだ。詠唱については、無いほうがいいに決まっている。

 でも、詠唱ってかっこいいんだよな。魔法の醍醐味ってやつだ。



 よし、実践あるのみ! 

 まずは心の中で詠唱する。


 ……火の玉よ、蛍火の如く、眩く照らせ。


 少し小さいけど、出る。


 できるぞ。次は唱えず、魔法を直接出すイメージ。

 集中!


 ――シュポッ。


 かなりしょぼい。これは何回も試行錯誤するしかないな。





 こんな感じで数日猛特訓を行った。まだ思い通りの大きさや熱量には届かないけど、かなり形になった。アウストもあまり使っていない魔法はイメージがしづらく、効力が大きくならないと言っていた。いつでも使えるように引き出しを多く持っておくことが必要なんだろう。


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