第15話 課外授業の終わりに
「あなたのいいようになんかさせないわ」
ソフィはボルティックスピアを放つ。
「威勢はいいけど……それだけね」
ライラ校長は魔女の石の効力か、属性魔法を放ち、打ち消す。
「うるさい!」
ボルティックスピアを連続で放つ。威力はなく。同じようにかき消されてしまった。
むやみに攻撃しても、こちらの魔法をかき消されてしまう。
どうするか……。
強化魔法で俺ら2人を強化することはできるけど、時間に限界があるし、2人同時には効力も弱い。
かといってリミッター解除は体のイメージが必要だからソフィに使ってもあまり意味はないはず。
まずは戦力を把握しなければ。
「ボルティックスピア以外は何か使える?」
「いくつかあるけど威力は弱いものばかりよ」
それから何点かソフィに質問した。
そんなこと何に必要があるの顔をしたが、構わず作戦を立てた。
「会議は終わったかしら?」
火、水。属性魔法のオンパレードが向かってくる。石の効果で発動が速すぎる。
俺は前に出て体を硬化し、攻撃を受け止める。
もちろん攻撃が効かないわけではなく、衝撃が許容を超えればおしまいだ。
「ソフィ! いまだ!」
「雷よ 閃光の槍となり 全てを貫け」
ボルティックスピアを放つ
「詠唱? さっきまで無陣無詠唱だったのに。おかしくなったのかしら?」
魔法でかき消される。
「まだよ!」
「雷よ 閃光の槍となり 全てを貫け」
「――何回やっても無駄」
部屋の中が眩しく白く光る。
「うっ!! 目が。なに!?」
ソフィのフラッシュ。
雷の光を一瞬だけ広範囲に発動できる魔法。
そして一瞬だ。一瞬あればいい。
俺は少し屈み、リミッター解除。
右足を力いっぱい蹴り出し、勢いよくライラ校長の方へ飛ぶ。
それを見たライラ校長は避けるしぐさ。
魔法の発動はもう間に合わない。
右手を硬化し、右腹目掛けて思いっきり振りぬいた。
「ぐはッッッ!!」
衝撃で壁へと吹っ飛ぶ。
「はあ……はあ……。私が負けるわけ……」
ペンダントを引きちぎると、治癒魔法を開始した。
ライラ校長には明らかに油断があった。
だから俺は一つの作戦を考えた。
同じ詠唱で違う魔法を使うこと。
熟練の魔法使いにとって、無陣無詠唱魔法は当たり前になっている。それを逆手にとった。
うちのクラスでは俳句での訓練のおかげで、本来の詠唱と異なる言葉を使っての魔法の扱いに慣れていた。
ソフィが優秀な生徒だったからできたのだけど。
1回目の詠唱で意識づけをし、2回目の詠唱で目くらましの違う魔法。
そして、一瞬の時間さえ稼ぐことができれば近づけると信じていた。
「はあ……はあ……。……まあいいわ。あなたたちにはまた会えるわ……」
足元に魔法陣が浮かび上がる。
「ちょっと、まだ話は終わって――」
ライラ校長は消えた。
校長室は元の状態に戻っていく。なにも聞けないまま。
ライラ校長、あなたはいったい?
*
次々と先生が駆けつけてきて、俺とソフィは状況の説明を行った。
魔法模擬場の方は、みんながうまく対応してくれて、レイ先生も命に別状はないとのことだった。
*
長い1日は過ぎ、宮廷魔法使いの指示で魔法自警団がライラ校長の調査を開始した。
俺とソフィには数日、念のため警備が付くとのこと。
学校はというと、学生の動揺を考慮して一時臨時休校となった。
現役宮廷魔法使い、ティラス最大の魔法学校の校長による犯行。
この国を揺るがす一大ニュースになった。




