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第12話 課外授業

 魔法模擬場の中央へ向かう。

 感じたことのない緊張。心臓はバクバクだ。


「ケイタ・ブランです。よろしくお願いします」



 今日まで修業してきた強化魔法。


 両足に向けて魔法陣を発動。足がスムーズに動く、自分の限界を超えるイメージ。


 両足のリミッター解除。よし。次に片足に力を入れ高くジャンプ。


「んっ!!」


 高く飛んだところで、両足の硬化。次は鋼鉄をイメージし、両足と全身の耐久性を高める。


 足から着地。衝撃はあるので片膝を着いての着地になってしまったが上出来だ。


「ケイタ。この魔法の名は?」


「強化魔法。スカイリープです」


 強化魔法は既存の魔法が多い。支援型の魔法使いが圧倒的に多い分野だけど、いくつかの強化魔法を組み合わせることによって攻撃特化型になる。

 なにより強化魔法は、派手な魔法がなく見栄えが悪い。今回は試験なので空を飛んでみようと思った。


「ケイタ、オーケーだ」


 緊張したー!


「よし。みんな近くまで来てくれるか」


 ぞろぞろと観客が俺とレイ先生の近くへ歩いてくる。


「みんなよくやってくれた。けが人が出なかったのがなによりだ」


『うぇーい!』


 テスト終わりの雰囲気に似ている。


「どの生徒も素晴らしかった。例年よりもレベルの高い適性実技試験だったと思う」


 レイ先生は、一呼吸開けて続ける


「……そして、最後の2人、ソフィ、ケイタには特に驚かされた。このクラスを引っ張っていく存在になってほしいと思う。……以上で、適正実技試験を終了とする。みんな教室へ戻るように」





 みんな教室のほうへ戻ろうとするとき、前から一人の女性が拍手をしながら近づいてくる。

 ライラ校長だ。


「お疲れさま。このクラスはみんな優秀ね」


『ありがとうございます!』


「特に、最後の2人には驚かされたわ。近年稀に見る魔法の使い手だ」


 大人から褒められるとやっぱりうれしい。


「そうね……こんなときはどう対処する?」


 ライラ校長がそう言ったあと、後ろで鈍い音が聞こえた。




『いやあああああああ!』


 女子生徒の悲鳴。振り返ると、レイ先生がキメラに腕を噛みつかれていた。

 今にも引きちぎれそうな腕を抑え、必死に抵抗している。

 前に見たキメラとはまるで違う。ライオンのような姿。噛みついた歯は鋭く尖っている。


「レイ先生、魔法使いはいかなるときも油断は禁物なはずよ」


「ライラ校長。……いったいこれは!?」


 レイ先生はキメラを振り払おうとするが、離れない。

 息遣いも荒く、弱弱しい。


「みんな……私から離れろ!」


 レイ先生は魔法を発動した。辺りが明るく光り、衝撃が走る。

 衝撃が収まると、キメラは地面の上で横になって弱っている。

 口には腕を加えたまま。


「レイ先生、無茶はいけないわ」


 ライラ校長は笑みを浮かべ、ぐったりとしているレイ先生の方へ。

 クラスメイトは全員後退り、無意識に道を開ける。


「あらあら、レイ先生がこんなにも弱っているのに、治癒魔法を使う人もいないの?」


 いったい何なんだこれは。何がどうなっている。状況が把握できない。

 足が震えて、一歩も動けない。

 魔法? 使えるわけがない、こんな状況で。


「レイ先生は、日頃の職務でお疲れのようだわ」


 ライラ校長は再び笑みを浮かべる。


「くっそやろうがあああ!」


 ダレンがライラ校長に向かってトルネードを発動した。

 が、一瞬にして消えた。

 消えたんじゃない、ライラ校長が同じトルネードで相殺したのだ。


「いい筋だわ。でもダメ。もっと訓練しなくてはいけないわね」


「くっそおお! なんなんだよ、いったい!」


 ダレンが膝をつき頭を抱えた。


 泣き出す者、口を抑え、屈み込む者。


「ライラ校長! いったいこれは何なのですか? 説明してください!」


 一人ライラ校長の方へ歩いていく。

 ソフィが今まで見せたことのない怒りをぶつけている。


「ソフィ……。これは課外授業よ」



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