第11話 適性実技試験
2人のハイカーのおかげでクラスの授業も順調に進み、退学者もなく12月を迎えることになった。
12月は適性実技試験の季節。おのおのの適性について現状でどの程度扱えるか、先生にお披露目するのだ。
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そして今日は適性実技試験の当日。
これまでクラスメイトに勉強を教えながら、自分の修業も欠かさなかった。今日の出来次第でこれからの魔法使い人生が変わってくると言っても過言ではないだろう。そのぐらいの意気込みでみんな臨んでいる。
「それでは、適性実技試験を始める」
レイ先生の声が魔法模擬場に響く。
それぞれが今できる最高のパフォーマンスをと意気込んでいる。
レイ先生が一番近くを陣取り、他は邪魔にならないよう、発動者を中心に円を描くように囲んで見ている。発動者以外のクラスメイトはみんな観客だ。
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クラスメイトの適性魔法を見るのはほとんど初めて。これは俺だけじゃなく、みんな一緒だ。どよめきや歓声など、いつもの授業とはまったく違う雰囲気だ。
「ダレン・クランです。よろしくお願いします!」
次はダレン。拳に力が入る。頑張ってくれ!
無陣無詠唱で風属性のトルネード。ダレンの右手から竜巻が発生する。ゴーっと音を立てながら手を離れていき、空へ昇り消えていった。レイ先生はメモを取る。
ダレンが俺を見て、大きく笑った。
「次は、シルカ・ラスフォード」
「はい! よろしくお願いします!」
スパッッ!!
試験の合図とともに、手に持ったナイフで自分の腕を切りつけた。
『え!?』
観客がざわざわしている。
シルカが理由もなくそんなことをするはずがないのに。
「静かに!」
レイ先生が落ち着くように注意する。
シルカも無陣無詠唱で魔法を発動する。
ヒール。
傷口を塞ぐ。傷跡もみるみるなくなっていく。
レイ先生の採点が終わると、シルカはガッツポーズをはにかんで見せた。
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試験も終盤になり、残るは俺とソフィの2人。
「ソフィ・アスティン。よろしくお願いします」
ソフィは静かに目を閉じ、集中する。手のひらを空へとかざす。
俺にはソフィが空を掴もうとしている、そんなふうに見えた。
手のひらの周囲から、静電気のようにピリピリと電気が走る。
雷が槍のような形で実体化したところでソフィは押し出すように、紫色の光の塊を空へと放ってみせた。
属性魔法ではなく、特異魔法。かなりレアな魔法だ。見たことがない。
おー! すげー! と観客のガヤ。
「ソフィ、この魔法は?」
「はい! 特異魔法、雷属性。ボルティックスピアです」
「特異……雷属性。よし下がっていいぞ」
ボルティックスピア。めちゃかっこいい名前に、めちゃかっこいい魔法。
特異魔法は他の魔法と違い、自分で編み出していくことが多いと聞く。
もしかしたらソフィは、魔法を使うために生まれてきたのかもしれない。
ソフィが小さくガッツポーズをするのが見えた。
いつも冷静な印象だったけど、この日のために努力していたんだな。なんだかうれしくなった。
「最後は……ケイタ・ブラン」
「はい!」
いよいよ俺の番だ。
これまでは割とゆっくりでしたが、徐々に展開が進んでいきます!
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