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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 入学式から一ヶ月が過ぎた。

 この学校のことって、知るほどに不思議な事も増えていく。

 例えば、男子校っていうもあるのだろうけど、恋愛事情についてなんかはちょっとどころかかなり不思議だと思う。万人に受け入れられているわけではないみたいだけれど、付き合っている人たちがいて。

 身近なところだと、生徒会の高槻先輩と悠先輩。最初は気づかなかったけど、あの二人って時々甘ったるい雰囲気があるんだ。二人だけの世界みたいな誰も間に入れないような空気感がすごい。弘夢と俊も付き合うまではいってないみたいだけど、お互いのことを意識してるのは分かる。側から見てると二人ともわかりやすいんだけど、多分お互いに気づいてないんだよね。

 俺はといえば、正直よくわからない。今まで同性を恋愛対象として考えたことなんかなかったし、でも別に周りがそんな感じでも特にイヤな気持ちになるわけでもない。俺自身がもし同性を好きになったらどうなるんだろうとは思う。今まで真剣に考えたことがなかったけれど、多分今の俺の中で、そういう感情があるとしたら、それは間違いなく和己先輩に対してだと思う。和己先輩の事は綺麗な顔してるなあとか、かっこいいなあとか他の人には思わないことも感じる事もあるから。

「俺、面食いなんだよね」

「知ってる」

 何かの弾みで好きなタイプの話になった時の言葉に、弘夢と俊から即答された。

「時々和己兄のこと楽しそうに見ながら、かっこいいなあとか呟いてるし」

 ココロの声が出てた?

「和己兄、確かに色々残念だけど、そこは事実だし。恒が憧れるのも分かる」

 固まった俺に俊の笑顔がまぶしい。




 この一月、弘夢と俊のおかげでクラスにも馴染めたと思うし、突然指名された生徒会の仕事にも慣れてきた。

 確かに生徒会の仕事はものすごく多い。身近なところでは遠足の行き先だとか球技大会の日程なんかも、学校側に交渉する事もある。よほど突飛な事を提案しない限り、学校からは許可が下りるみたいだけど、企画を立ち上げてから企画書の提出までしっかりしないと却下される事もある。

 提出された企画書の内容を確認してる和己先輩の真剣な表情って、いいなと思う。それでも先輩と接するほどにみんなが言う、残念なイケメンの意味もわかってきたような気もする。頼りがいもあるし、やる事はやる、締めるべきところできちんと締めるっていえばすごい人なんだけど、ところどころで残念な人なんだよね。

 でも、そんなのもひっくるめてかっこいいから困る。

「恒?」

 とりとめのないことを考えていたら不意に声をかけられた。びっくりして返事もできずに先輩を見ると、いつも通りの楽しげな視線を向けられる。

「ぼんやりしてたからって驚きすぎだろ」

 笑いながらの言葉に何も返せないでいると、机の上の書類を処理済ボックスに入れ、背伸びをした先輩が立ち上がる。

「処理済の分は明日にでも返却よろしく。却下分は不服があれば二日以内にって伝えて。……この時期になると必ず上がってくるけど、そもそも球技大会の趣旨を考えたら、その部活に所属してる奴は参加不可の理由くらいわかると思うんだけどな」

 クラス対抗の行事だから公平にする為に決まってるだろうがと呟いて、室内を見渡した。

「ひと段落したし帰りたいんだけど、まだ誰か残る予定ある?」

「戸締りは俺がするからとっとと帰れ」

 生徒会室の鍵は会長と副会長しか持っていないので、早く帰る時は確認するようにしているらしいセリフに応えて、お前が帰らないと恒も帰れないだろうがと、高槻先輩が追い払うように手を振った。最近は俺と和己先輩が最後に帰ることが多かったから、たまには早く帰らせてやれってことらしい。

 和己先輩限定で、高槻先輩の言葉はぶっきらぼうだけど、優しいんだ。

「じゃあお言葉に甘えて。恒も帰ろう」

 促されて一緒に生徒会室を出た。

 並んで歩く駅までの道のりは、いつの間にか当たり前の光景となっていて。時々見上げる横顔はいつも通りふわりと笑みを浮かべている。

 学校の事とか、授業の事なんかを話しながら歩いて行くこの時間が、とても好きだと思った。

当たり前の日常に流れる穏やかな時間

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