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放課後の生徒会室で、俺は引き継ぎをするために川原くんに話しかける。引き継ぎって言っても本当に大したことじゃないんだけど。
パソコンのどのファイルを使って会長と副会長の予定を確認するとか、行事予定から企画のスケジュールを立てていくとかそれを把握してしまえばぶっつけ本番でもなんとかなる。
でもそのファイルの内容を把握していないととんでもないことになるから、そこだけ引き継ぎたいんだよね。
……とはいえ、今日は売られたケンカをきっちり買い取るつもりでいるから、引き継ぎは明日からになるのかな。
「なんでアンタに教えてもらわないといけないんだよ!」
「俺が一年この役割を果たしてきてるからかな」
ここまではいつも通りのやりとりで、最初のうちは他の一年生なんかもなんとかしようとしていたし、上級生のみんなも叱ったりしてたんだけど、俺が頼んでやめてもらった。だって、本人が納得していないのに、人から言われて渋々従うのは嫌だろうから。
まあ、最初からこの調子でこられると慣れてくるもので、次の言葉も予想通りのものが飛び出してきた。
「アンタに教えてもらうのがわかってたら引き受けなかったのに」
最初からこの状態だけど、一週間もすれば普通にコミュニケーションが取れると思っていたんだ。実際に他の一年生とは少しずつ話していたら、すっかり馴染んできたなって感じているけど、川原くんに関しては会話が成立しなくて、ずっと拒絶されていたから、俺もこの言葉が出るとつい引き下がってしまっていたんだよね。
ちらりと和己の方を見ると、朝のこともあってかしっかり見なければわからないくらいの笑みを浮かべていて、なんとなくそれを見たら安心した。
「それなら今からでも遅くないから、辞退しなよ」
部屋の空気がざわりとする。
「……っ」
俺が反論するなんて、かけらも考えていなかったのか、川原くんも言葉を失っていた。
「本来なら会長付は代替わりしてから指名されるのが慣例だし、今年はお試しで入学の時点から指名してみようってことになっただけなんだから、別に川原くんがいなくても生徒会は何も困らないよ」
上級生は和己と弘夢が仲裁に入ろうとしないので様子見というところだろうか。
「……なんでアンタにそんなことを言われないといけないんだよ」
いつもほどの威勢の良さがなくなっているのがわかるくらいに、拗ねたような声で反論してくる。
「俺が生徒会での役割を果たしてきているからだよ。あと、アンタじゃなくて、先輩ね」
目の前の彼が困っているのがわかる。
そりゃそうだよね、この二週間、どんなにひどいことを言っても反論せずに引いていた俺が、突然言い返したんだし。
「今、君がここでしていることは、俺に悪態ついてわがまま言ってるだけだよね?毎日顔を出して、邪魔ばっかりして、それでも生徒会は機能してるんだよ」
一気にここまで言って、笑顔を向ける。
「今辞退しても、会長が変わった時に指名されるかもしれないし、その時俺はいないかもしれないよ?」
ここまで言っても変わらなければ、後は和己とか弘夢に任せてしまってもいいんじゃないかなと思っているから、今日は言いたいことを言ってしまった。
悔しそうに俺のことを睨んでくるけど、黙ったままの川原くんはどんな行動を起こしたらいいのかわからなくなっているのかもしれない。
ちょっと言いすぎたかなと思ったけど、ここで俺が折れるのも何か違う気がして、和己に助けを求めてしまった。
「今日は帰って、自分がどうしたいのか考えろ。週明けに俺が話を聞くから」
和己の言葉に少しだけ頷いた彼は静かに部屋を出て行く。
「……言いすぎたかな?」
緊張がとけてため息をついた俺のところに、悠さんが笑って近づいてくる。
「そろそろ誰かが言わなければいけないことだったからね。間に人が入らないように、恒ちゃん、頑張ったね」
ヨシヨシと頭を撫でてくるてのひらがとても優しい。
「向こうのフォローには弘夢くんが行っているから安心して」
耳元でちいさな声が出て教えてくれる。
「あれでも理解できなかったら、仕方ない」
その場にいる全員に聞こえるように和己が口を開いたことで、この話は終わりになる。
それぞれがするべきことに手をつけ始めた時に、弘夢も戻ってきて、ようやく変わらない空気になった気がした。
入院→手術もあり、更新が遅くなりました。
こういうシーンは苦手だなあと改めて感じました。書いては消してを繰り返してしまう。




