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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 しくじった。

 今現在の状況と、自分自身の感情を言葉にするなら、それほどしっくりとくるものはないだろうと和己は考える。

 勉強会から試験結果の罰ゲームまでの流れは問題ない。

「罰ゲームにした方が文化祭の初日がやりやすいでしょう?」

 悠からの提案がなくても生徒会からは恒を出すつもりだったが、たしかに話が簡単に動かしやすかったので乗ることにした。その後の対応も授業中と短い休み時間以外は自分が側にいればなんとかなる予定だったのだ。

 誤算はそこに俊までが関わることになったことだ。恒がプレッシャーに弱いのは観察していれば分かる。俊と弘夢がそれくらいのことでプレッシャーを感じることはないということも長年の付き合いで分かっていた。

「……なんで俊まで恒につきあって成績落としたんだ」

 二人が悠に連れられて生徒会室を出た後に弘夢を手招きした和己が問いかける。

「恒がプレッシャーに弱いのは僕たちも気づいていたからね。気が強いから罰ゲームでもなんでも受け入れるだろうけど、一人よりは二人の方が少しは安心するかと思って。

 恒の成績が維持されてたなら別にそれはそれで問題なかったわけだから、細かいことは気にしなくていいよ」

 さらりと返す弘夢はその言葉に呆れたような表情を見せる兄たちに笑いかけた。

「僕たちも恒のことは気にいってるんだよ。

 それに罰ゲームって言ったって、この時期だったら文化祭に関係する何かでしょう?それなら恒も俊も嫌な思いをすることもないだろうからまあ、許容範囲かなと思ってね」

 高槻がそっと弘幸に視線を移す。それを受けて首を横に振るとそうだよなあとぼやいて弘夢に向き直った。

「わかってるなら恒だけに被せれば良かったんだ」

「だから、僕たちも恒のことは気にいってるんだって」

 繰り返して笑った弘夢が続ける。

「……で、二人に何させるの?」

 諦めたように和己がさらに近くに寄るようにと弘夢を手招きする。

「文化祭初日恒例のミスコンに出てもらう」

「恒例のって、そんなの聞いたことないんだけど」

「……厳しく箝口令が出ているから、高等部に進学しても文化祭直前まで一年生は知らない。

 俺たちも昨年は驚かされた」

 その企画だけはフォローをしていた上級生だけで運営されていたのだ。

「じゃんけんで負けた高槻が出る予定だったのが、先輩たち全員から土下座する勢いで悠に変更してくれと泣きつかれて交代するっていう珍事だったんだよ」

 弘幸が穏やかな笑顔を浮かべてその時のことを伝えると、苦笑した高槻が続きを引き取る。

「広瀬を出さないとバレたら暴動が起こるって真剣に言われたよな」

 だったら最初から悠を指名したらよかったのではないかというツッコミは、きっとその場にいた全員が思ったことだろうと弘夢は沈黙を貫く。

「俊も恒も女装似合うだろうねぇ。……恒だけなら何かあった時に和己兄がいるからちょっとした間違いも起こりにくいだろうね」

 逸れてしまった話を戻すように弘夢が話しかける。

 和己が弘夢に視線を戻すと、ちいさく笑って続けた。

「……俊は免疫あるから大丈夫だよ」

 言いよってこられたら鉄拳制裁だろうしと、部屋の中には響かない声量で付け加える。

「だから困ってるんだ。あの見た目で武闘派とか恐ろしすぎる」

 高槻が苦笑いを浮かべると、そこが俊の良いところだよと弘夢が目を細める。

 まあいいやと和己が呟いて席を立つ。

「そろそろフォローに行ってくる」

 ふらりと隣の部屋に足を向けた。

あけましておめでとうございます。

今年もぼちぼちマイペースに進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。


あと数話、文化祭の周り目線が続きます。

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