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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 目の前にミニスカメイド服着たキレイなお姉さんがいます。

「ショートヘアでメガネのキレイ系ツンデレメイドさんです」

 ドヤ顔の衣装担当に文句はつけられないと思う。

 着せられた俊は赤くなってそっぽを向いてる。

「まだ脱いじゃダメだよ」

 笑顔の悠さんの言葉に衣装を合わせるだけと言われて、脱ごうとしていた俊の手が止まる。

 そのまま今度は俺の目の前に俊とお揃いの服が広げられた。俊にはなかったウイッグもあるのは気のせいかな……。

「こっちは正統派のかわいいメイドさんにしてみました」

「今回は二人で正解だったかもねぇ。系統違うけど双子みたいでいいね」

 腕組みしてうなずきあう悠さんと手芸部部長。この人が誰に対しても敬語を使うのは今に始まった事ではないらしく、ちょっとだけ違和感があるけど気にしないようにしている。

「あとはこれに小物を合わせますけど、完成は当日のお楽しみということで」

 出来栄えに満足そうに目を細めて、ようやく脱いでいいよと許可が下りる。

「途中経過の確認できるのは僕の役得だね」

 くすくす笑う悠さんに、

「広瀬くんもついでに着てみませんか?」

 実は昨年と同じサイズで作ってみたんですと、爆弾発言が投下される。

「なんで僕のまで作っちゃうかな……」

「他の部担当だったらお笑い大会みたいなのが多いですけど、生徒会は二年連続作り甲斐がありましたから、ついうっかり作っちゃいました」

 どうぞと手渡されて苦笑いした悠さんだったけど

「……少しだけだよ?写真は撮らないでね」

 身内には厳しいけれど、基本的に他人に甘い対応をするのがよく分かった。

 着替えて戻ってきた悠さんを見て、その場にいた全員が言葉をなくす。美少女の威力ってすごい。

「広瀬くん、特別参加しませんか?」

「実行委員だから忙しくてムリ」

 そこはあっさり断るんだなんて思ったけれど、少しだけ困らせてみたい気もするんだよね。

「会長か副会長あたりなら、一つくらい仕事が増えても大丈夫な気がするんだけどな」

 身内じゃない人がいる時は和己のことは会長と呼ぶことにしてる。ボロが出なくていいんだよね。

「あの二人なら確かに大丈夫だと思う」

 俊も話に乗ってくれる。

「なに二人して僕まで参加させようとしてるの」

 僕はしないからねと釘を刺してくるけれど、決して強い言葉ではない。要は誰かが仕事の肩代わりをしてくれるなら出てもいいってことだと勝手に解釈する。

 先に着替え終えた俊の目配せを受けて、俺は急いで着替えると部屋の片隅で衣装を着たまま話を続けている悠さんを確認して隣の生徒会室へ足を向ける。

 扉を開けると和己と目があった。いつも通りの俺にだけ甘い表情を向けてくる。

「終わったのか?」

 それに対して頷いた俺は、和己を手招きして高槻さんを呼ぶ。

 声をひそめて事情を話すと、高槻さんがため息をついて和己を睨んでいた。

「あいつを焚きつけたの和己だろう」

「……なんのことやらわかりませんね」

 どうやら『あいつ』は手芸部の部長のことらしいと見当をつけたところで、和己がとぼけた返事をしながら部屋を出る。俺たち二人も慌てて後を追いかけると、俊と悠さんの残る部屋のドアをノックして開けたところに追いついた。

「今回ばかりは君の思う通りに運ばせないからね」

 腰に手をあてて、悠さんが和己に宣言する。

 悠さんもなぜか自分の衣装まで出来上がっている原因が和己にあると気付いているらしい。いつもの笑顔が隠されるだけで、凄みが増す。

「ここは穏便に話し合いしましょうかね」

 飄々と受け流す和己に呆れたような視線を向け、高槻さんが数人残っている手芸部の人たちを外に出した。話し合いの結果はまた連絡することになるみたいだ。

 人が減った部屋の中で、頑なにイヤだと言い続けていた悠さんが折れる。結果は分かっていたとばかりにため息をついているところを見ると、拒絶は外部へ対してのパフォーマンスだったみたいだ。

「……僕への投票は全て無効にするなら、イヤだけど、もう本当にイヤだけど受けてあげるよ。そのかわり参加者ではなくて司会かアシスタントしかしないからね。

 今回は予定外に俊ちゃんも出ることになってしまったから、騒がれないように守ってあげるよ」

 今の話し方だと俊は予定外みたいだけど、俺は?

 上級生たちを見ると、なぜかみんな目を逸らす。

「和己?」

「恒の順位が落ちて罰ゲームになるのは想定外だったけど、ミスコンに出るのは予定通りだったんだよ」

 あっさりと言われて驚いていると、開き直った和己が続けてくる。

「だって見たかったんだ」

 俺も含めた全員から呆れた視線を向けられてるけど、それを無視するココロの強さがすごいと思う。

「恒なら似合うだろうと思ってたし、終わったあとに誰かに言い寄られたとしても俺が守ってやれるから良かったけど、俊の事まで手が回らないかもしれないじゃないか。だったらわかりやすく視線を誘導するのが一番だろ」

 たしかに悠さんと並べば俺も俊も霞むだろうけど、言い寄ってくる誰かがいる前提の話なのっておかしくないか?

 そんな疑問をぶつけてみる。

「……近所に女子校もあるし、恒の疑問ももっともだけどな。自分が俺に告白された事、忘れるなよ?」

 そう言われたら、そんなこともありました。

「じゃあなんで悠さんが防波堤の役割になるのは大丈夫なの?」

「僕と高槻の事は割と有名だし、もしも知らなくても、親の仕事に影響する可能性がなきにしもあらずだからだよ」

 いつのまにか立ったままの高槻さんの腕の中に収まっていた悠さんが笑顔を見せる。

 俊と顔を見合わせて、ため息をつく。

 俺たち、守られてばかりだ。

「何度も言うけど、楽しまないと損だよ」

 悠さんの言葉に、俺と俊も笑って頷いた。

お遊び回、もうちょっと続きます。

これがひと段落ついたらムーンに短編追加の予定にしてます。

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