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昨日の朝とは違う意味で硬直してます。叫ばなかった俺、エライ。
寝返りをうとうとして、お腹にまわされた腕に気づく。首筋にかかる規則正しい呼吸がくすぐったい。なんでこの状況になってるのか一瞬思い出せなくてパニックを起こしそうになった。
深呼吸して、部屋に戻った後のことを思い出す。
昨夜は散歩から戻って露天風呂を満喫して部屋に戻ると、先にあがっていた和己がベッドヘッドを背もたれにして読書中だった。まだ寝るには早い時間だったから俺も隣のベッドに座ってスマホをいじったり、持ってきていた本を読んだりするつもりだったのだけど、手招きに逆らえずに、和己のベッドの上に上がる。
散歩の時と同じように足の間に導かれて、当たり前のように抱きこまれた。
規則正しい和己の鼓動が心地よくて、そこから先の記憶が全くありません。
何か話をした記憶もないから、俺、そのまますぐに寝落ちしたみたいだ。
和己を起こさないように腕の中でそっと寝返りをうつ。
「……寝たふりするなら、わざわざ寝返りをしやすいように腕の力緩めたらダメだよ」
俺の言葉に苦笑いを浮かべて和己がまぶたを開けた。すぐにちゅっと音をたてて額に唇が寄せられる。俺が頭の位置を変えて和己と目を合わせられるようになると、抱き寄せてきている腕の力が強くなる。
「おはよう」
返事をする間もなくキスされて、満足気に笑ってくるから脱力した。
「おはよう」
返事をして和己の首元に顔を埋める。ふわふわしたいい気分で時間が過ぎていくのがもったいない気もする。
今日は朝食後は帰宅になる。たった二日とはいえ和己とはもちろん、みんなとの距離も縮まって楽しく過ごせたから、惜しい気持ちもある。
特に和己とは離れがたいと思ってしまうほど、恋人としての階段を駆け上った気がしている。
ひとしきり腕の中で甘えて起き上がると、少しだけ残念そうな和己の表情に出会う。それが嬉しいと思ってしまう俺は、不謹慎なのかな。
◇◇◇
帰りの道程はあっという間だった。
特に俺は一番最初に家まで送ってもらったっていうのもあるのかもしれないけど。
到着する5分ほど前に家に連絡を入れると、マンションのエントランスまで母が降りてきていた。それを見てすぐに機転を利かせてくれるのが悠さんのすごいところで、和己と一緒に車を降りて挨拶をしてくれる。悠さんは父の会社が所属している企業グループの会長の令息でもあるから、母の方が驚いていた。
ちなみに和己の家は近隣で知らない人はいないくらい大きな総合病院の院長だ。
如才ない二人のおかげで、今後の花火大会や夏祭りの許可となぜか悠さんや和己の家へ泊まりがけで遊びに行く許可までもぎ取ることができた。
ちなみに面食いなのは遺伝とわかりました。
「……お母さん?」
車を見送った後も動き出そうとしない母に声をかける。目がキラキラして恋する乙女みたいになってるよ。
「男子高校生があんなに綺麗だったり格好良いのは反則よね。……恒くんもかなり自慢の息子なんだけど、あの物怖じしない対応とか見せられると、負けた気がする」
「勝負してないのに負けた」
大げさに肩を落としてみせると母が笑う。高校に入ってからは友人を連れてくることもなかったから、交友関係を心配していたのだと言われて、申し訳ない気持ちになった。
「恒くん、楽しかった?」
家に戻りながら、和己とのあんな事やこんな事はもちろん割愛した上で旅行の話をする。お土産も喜んでもらえた。
夜、ベッドに入った時、隣に体温が感じられないのがほんの少しだけ淋しいと思ってしまった。
メールをしたら止まらなくなりそうだったので、やめておく。
明日からまた、いつも通りの日常がはじまるんだから。
短めですが、ようやく家に帰りつきました。
まだ夏休みが続きます。
もう少しお付き合いくださいね。




