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夕飯の後はそれぞれ自由に過ごす事になった。明日は花火をしようって事になって、朝から買い物に行く予定だ。 昼はバーベキューで夜は花火って楽しみだ。
みんな毎年のことなので初日は割とのんびりと過ごすみたいで、俺はこの際だから一度試してみたかったことを和己にお願いする事にした。
入試の一瞬で俺の顔と名前を一致させてたのも驚いたけど、あの時同じ教室で試験を受けてた受験生は全員分かるって言ってたのが未だに本当なのか確認したくて、ちょっとしたいたずら心も手伝って。
トランプを全部表に向けて並べた後、和己に時間決めて暗記してもらい、裏返した後に神経衰弱をしてもらったんだ。その時に並べたカードを写真に撮っておいてと言われてその通りにしたんだけど。
……まあ、結果としてはすごいを通り越して呆れたというか、幼なじみの先輩たちまで唖然としてた。
覚える時間は三分でいいと本人がいうから三分にして、俺たちがひっくり返してる間は後ろを向いていたから不正はなし。
裏返し終えた後の一言は
「AからとKから、どっちがいい?」
ちょっとだけみんなで悩んでAからと指定すると、全部のカードを態々スペードとクラブのペアとハートとダイヤのペアにして順番にめくっていきました。その後に丁寧に元の位置にカードを戻していって、写真と比べさせられたよ。カードの向きまで合ってるし。
「俺、記憶力はいいんだよな」
すごいだろと俺を見て、にっこり笑う。
「なんかここまでだと、すごい通り越してる気がするんだけど」
思わず素の状態でつぶやく。
ちなみに教科書は一度目を通せば理解できるそうです。試験勉強とかやってる素振りも見せなかったのに普通に首位とか、なんだこの羨ましい能力。
「まあ昔から和己ちゃんはこの手のゲームも強かったからねぇ。今更だけどちょっとだけ驚いたよ」
立ち直りが早かったのは悠先輩だ。
驚きもちょっとだけなんだ。
「驚いたついでに、恒ちゃん、素が出てたよ。……もう面倒だから和己ちゃんへの対応、使い分けるのやめて、僕たちに対しても普通に接してくれたらいいよ」
なんでこの人は、ちょっと気が緩んだ瞬間をピンポイントでついてくるんだ。
「悠、恒が困ってる。一気に行かずに手加減してやれよ」
「じゅうぶんに手加減してるでしょう?和己ちゃんは当たり前だけど、高槻まで恒ちゃんには甘すぎるよ」
「甘いつもりはないんだけど」
高槻先輩も悠先輩には敵わないので、そう反撃されてしまうと黙ってしまう。
助けを求めて視線を彷徨わせた俺の視界に、ちいさく頭を振る和己が入る。
「悠ちゃんも含めた兄さんたち、みんな年齢とか気にせずに恒と仲良くしたいんだよ」
弘夢の言葉になんとなく納得する。大切な幼なじみの恋人になった俺を、好意的に受け入れてくれている先輩たちだから、その分距離も近くなってくるのだろうなと思う。
「じゃあもうお言葉に甘えます。いい加減俺も混乱してたし」
ため息をついて宣言した。
「ついでに先輩じゃなくて、二人みたいに悠ちゃんって呼んでくれてもいいよ」
ここぞとばかりに畳み掛けられた言葉の最後にハートマークが見えるのはなんでだろう。
さすがにそこは謹んで却下させていただいて、お互いの妥協点として、さん付けにする事で全員に納得してもらいました。
夕方は部屋についているシャワーで済ませたので、せっかく温泉付きの別荘なので、ゆっくり浸かる。なんだか疲れが一気に癒える気がするから温泉って不思議だよね。
露天風呂でのんびりしてると、人の気配がする。
「……恒?」
和己の声がして、お湯が揺れた。
なんとなく黙り込んで二人並んで座る。思いきって少しだけ高い位置にある和己の肩に頭を乗せてみる。驚いたように身体が揺れるけど、俺の頭を落とさないように気遣ってくれているのが伝わってきた。
夕飯の前からなんだか変だ。
側にいたいのにちょっとだけ距離をおきたい気もする。
「俺、先に上がるね」
のぼせてしまいそうになったので、和己に伝えて先に出る。部屋に戻って備え付けの冷蔵庫から出した水を飲んでいると和己も戻ってきた。
「和己も飲む?」
冷蔵庫から新しいペットボトルを出そうとしたらそれを制されて、俺の飲んでたのを取り上げられた。
「これでいいよ」
ペットボトルの行方を追った俺は、和己の瞳から目を離せなくなる。
「恒」
おいでと、手招きされて逆らえずに近寄ると、
「さっきの続き、しようか」
耳元で囁かれ、腰を引き寄せられて抱きしめられた。心臓が飛び出しそうなほど鼓動が耳に響く。俺だけがドキドキさせられているのかと思ったけど、触れた和己の鼓動も早くてなんだか安心した。
そっと和己の腰に腕を回すと、俺に回された腕の力が強くなる。どうしよう、思っていた以上に離れがたい。
和己の腕が離れて、俺の頰にてのひらが触れる。
くすぐったくて反射的に目を閉じると、空いた手で前髪を上げられて額に唇が触れる。ちゅっと音を立てて離れた唇が、やがてためらうように俺の唇に触れた。軽く触れては離れるのを何度か繰り返して、息をするのも忘れてたことに気づく。
どちらからともなく笑い出して落ち着いたら、さっきまでの空気が綺麗さっぱりなくなっていることに気がついた。
「寝ますか」
和己の言葉に頷いて、お互いにベッドに潜り込む。おやすみを言いあって電気を消した。
初日の夜。
みんなとの距離が近くなって、少しは恋人らしくなりました。
甘め……の展開になってると思います。




