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SCP Containment Breach[非公式]  作者: ペイルカッツェ
プロローグ
2/3

SCP-173

「9341、作業だ」

 白いコンバットスーツに黒いプロテクターを着込んだ男が部屋の外から呼びかけてきた。

 低い声だった、三十代前半くらいだろう。

 腕にアサルトライフルを抱えていた。

 兵士だろうか。

「作業?」

「その書類の通りだ、早速だがちょっとした掃除に参加してもらう。ついて来い」

 男に言われた通りに、部屋の外に出てついて行く。

 廊下にはいくつものドアがあり、その内の一つから出てきたが、それはまるで刑務所の様だった。


 しばらく男について行くと、別の男が後ろからついて来た。

 見た目は前に居る男と何も変わりはない。

 ただ、後ろを見た時「前を向け」と若い声で言われた。二十代前半の声だった。

 しばらく歩くと、左右が吹き抜けになった部屋に来た。

 どうやらここは二階部分で、一階の方は休憩室になっている様だった。

 すると、前にいた男が立ち止まり「ここだ」と言った。

 黒いスライド式の自動ドアがあり、横には看板が貼られていた。

「SCPー173 object class:Euclid」

 Euclid?

 遥か昔の数学者だったような気がする。

 とりあえずドアの横にあったボタンを押そうとしたが、ドアは自動的に開いた。

 ふと、ドアの右斜め上を見ると監視カメラがあった。

 なるほど、常に監視されている様だ。

 ドアを通り、奥へ進んだ。


 その先は二階層の部屋になっていて、一階から二階に上がれそうな所は見当たらなかった。

 どうやら二階に責任者が居るようだ。

 一階には自分と同じオレンジ色の服を着た、おそらく死刑囚であろう人物が、重々しい鉄製のドアの前に二人いた。

 その内の一人が聞いてきた。

「お前、初めてか?」

「あぁ……何をすればいいんだ?」

「掃除だ、だがこの中の一人にしかできない」

「?どういう事だ?」

「時間がない。簡単に説明すると、目を離しちゃいけないやつがこのドアの先に居る」

「危ないやつなのか?」

「かなり危険だ。やつは誰も見ていない時だけ自由に動ける、一瞬だ」

「何がだ?」

「首をへし折られるまでさ」


 ドアが横に開き始めた。

 ドンドンドンドンと機械の音が鳴る。

 開いた先は広めの部屋だった。

 奥に何かがいた。

 人間の様な形をしていて、壁の方を向いて立っていたが、人間と呼ぶには程遠い物だった。

 周りには赤黒いものが撒き散らされていた。

 これを掃除するようだ。

 慎重に中に入ると、ドアが閉まった。

『ガガ…全Dクラス職員の内、6732と9341は7435が作業を終了するまで…対象…ガ…173を見続けろ……二人で交互に瞬きをしろ…ガガガ』

「俺が合図したら瞬きしろ、いいな?」

「分かった」

 すると、閉まったはずのドアが開き始めた。

『おい…!何故閉まらない!?…ガ…システムの不調……いや!079です!…ガ…小癪な!作業中止……おい!』

 目の前が暗くなった、停電だ。

 電気が点いたかと思うと、7435と呼ばれていた男が倒れていた。

 そのそばには173が立っていた。

 すると、誰かに腕を掴まれ引っ張られた。

 振り向こうとしたが、「振り向くな!奴を見続けろ!」と指示され、振り向けなかった。

 声からして、6732だった。

 173を見ながら、収容用の部屋を出る。

 また電気が消えた。

「もう駄目か……!?」

 再び電気が点いた時、追加の死者は出なかった。

 バババババッ

 銃声がした。

 二階部分で兵士が173と戦っている。

 ドゴォン……

 大きな音を立てて、電気が落ちた。

 銃声が止み、バキッと何かが折れる嫌な音がした。

 今度はすぐに非常灯が点き、視界を確保する事が出来た。

「マズイことになったな……」

「これからどうなるんだ?」

「財団共は放送で『079』と言っていた。もしもそれがSCP-079の事なら、状況はこれからもっと酷くなる」

「079は何なんだ?」

「今は説明出来ない、とりあえずここから逃げよう。まだ近くに173が居るはずだ」

 慎重に173の部屋から出た。


 こうして暗い施設からの脱出は始まった、いや。

 始まってしまった。

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