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私は今日も平行線で女の子とオンナですけど。

読んでいただきありがとうございます! よければ、コメント、評価の方お願いします!

 我が家は俗に言う『ニュータウン』という場所にある。今は亡き父と母と、今なお健全健康の卓兄が引っ越して来たときは、この町はまだ、何もなかった。唯一、商店街の複合型とも呼べるアウトレットモールではお洒落で新しい西洋映画が、毎日かわるがわる上映されていたという。引っ越して来てまもなく、旬兄がうまれ、卓兄はよく幼い旬兄を連れて、映画を見に出かけた。

 その頃から、町はじょじょに色を持ち始め、たくさんの雑貨屋さんや、可愛い店が軒を連ねるようになった。優兄がうまれた時にはすでに、デートスポットで有名な、お洒落で大人な雰囲気の料理店(旬兄の働いてるところ)や、大きな噴水のある公園もできた。

 パパは最初、「我が家はこの町で一番眺めのいい家になるぞ」って息巻いて、町はずれの海を臨む高台の上に、我が家を建設した。

 しかし、全てが町の中心に集まってしまった今では、ただ、あらゆる場所に行くのに時間のかかる、不便すぎる家でしかない。

 とくに、こういう遅い朝には、しごく始末に困る。


    ♥


 さて、この辺で自己紹介しとかないと、先が進めにくいわね。

 私の名前は桶川茅おけがわかや。花も恥じらう超美形中学三年生です。

 私の分身で双子の弟真由は、卓兄の次にしっかり者で、旬兄の次にクールな性格をしている。小柄で細身、童顔。吹奏楽部のくせして、運動部も含めたスポーツ大会で一番を勝ち取ったという、信じられない経歴の持ち主。ちなみにスポーツ大会で優勝したのは、我が家では優兄以来の快挙。そのせいか、当然の如くモテまくる。それはもう、年代関係なく、モテのラッシュアワーである。

 ちなみに親友のマナ曰く、「全然似てない」だそう。それを聞いた私が、

「ま、確かに顔以外似てないよねえ」

 と言うと、何故か精神病院のパンフレットを手渡された。全く理解に苦しむ。

 長男卓兄については、優しい・賢い・イケメン以外に、語ることは何もない。ちなみに私は、卓兄以外の全世界のオトコどもは、「う●こ」だと思っている。この意見を我が家の夕食の席で述べたところ、

「お前の方こそ、うんこだわ」

 という、優兄からの理不尽極まりない罵声をもらった。きっとヤキモチ焼いたんだろう。

 旬兄は、金髪でピアスなので、ちょっと恐いと思われがちだけど、そんなことない。いつもしているその銀色のピアスは、私が誕生日プレゼントにあげたものなんだよ。無口でぶっきらぼうだけど、根は兄弟の中で一番繊細。備考というか、追加情報として、その風貌の通り、小・中・高と、ヤンキーだった。相当強くて、でも番は張らなくて、ずっと一匹狼を貫き通したらしい。旬兄らしいといえば、旬兄らしい。

 三男優兄は、外見だけを見ればとっても優しそう。っていうか、弱そうだ。なよっぷりでなら、真由とひけをとらない。けど性格は最悪で、ガサツでデリカシーが皆無。まさに、う●こ男子の世界代表というべき存在。生れつきの甘い声音と、西洋映画で学んだあらゆる口説き文句を駆使して、可愛い女の子達をたらしこんでいる。バレンタインデーには紙袋二つ分のチョコをもらってきていた。死ねばいいと思う。

 っと、そうこうしているうちに、もう学校だった。

 よし、気合いを入れる。

 これから全力でやらねばならない。

 諸君、教えてしんぜよう。嘘というものは、権威を持ってつくものであるよ。


     ♥


 教室からバリトンボイスが流れてくる。

 やーん、ステキ。

 今年新しく担任になった、新垣先生ことアラガッキーは、その甘めのバリトンボイスと、チョビヒゲがナイスすぎるイケメンなおじさん。

 担当は数学なんだけど。

 今日はちょおおっと、まずい感じだ。よりによって、遅刻した日の補修が、数学だなんて。

 そろそろと半開きになった教室のドアから、中を覗き込む。

 アラガッキーは黒板に数式を書いていて、私に全く気がついていない。

 よし、今だ!

 一番後ろの私の席にダッシュ。

 マナが私に気がついて、冷ややかな目線を投げる。流石だぜ、我が親友。

 席に座り、教科書を取りだし、ノートを開く。シャープペンシルを握った時、アラガッキーが振り向いた。

 一瞬アラガッキーは、教室の変化に付いていけてなかったみたいだ。

 何かがおかしい教室内を見回し、私の存在に気がついた。

「・・・・・・・・桶川。いつ来たんだ?」

 びっくりしたように、クラスメイトたちが振り向いた。そりゃそーだ。さっきまで居なかった同級生が、何食わぬ顔で着席してんだから。

「いつって・・・・・・・・ずっと居ましたが」

「いや、そんなはずない」

「いや、居ましたが」

 首をかしげるアラガッキー。

 ふっ、甘いぜ、アラガッキー? ま、そういうところも、可愛いけどね。

「だってお前、出席取ったときいなかったろう」

「トイレにいたんですよ」

 マナが退屈そうに鼻をほじっている。

 てめえに女の子の自覚はあるのかい。

「遅刻したんなら、そう言いなさい」

 アラガッキーの声が、若干厳しくなる。

「してないス」

「じゃあ、今の問題、解説してくれ」

 ああ、もう。アラガッキーたら。

 おじさんなのに、何でそんなにカワユイのん?

 メアドとか知りたい。あ、でもアラガッキーは機械音痴そうだし・・・・メアドの登録とかのやり方、教えてあげたい。

「おい、桶川」

 あーん、もう、たまんない。バリトンボイスやばい。

「聞いてるのか、桶川」

 そういや優兄が言ってたっけ。大人の女ってのは、上から目線じゃないとなって。

「おーけーがーわぁ」

 ようし、今日から私、女の子を卒業しまあす。

「おい、って」

 そして、オンナになるぜィ?

「おけ、」

「授業の続きが聞きたいわ、坊や」

 次の瞬間、マナが爆笑した。

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