第二の輪廻 オゴリ
どうしてこうなった……
確かにあれは俺が悪かった。
だが、意気揚々と俺の前を歩いているやつを見ていると、なぜかイライラしてくる。
「なあ、おい」
「ん?何?」
「どうしてそんなに楽しそうなんだ?」
「えーだって、学校に行かなくていいんだよ?」
「それにおごってもらえるし♪」
……はぁ。
俺がバカだった……。
こんなやつの手を引いて必死に走って……、
結局乗り遅れた。
しまいには、オゴレとか言うし。
「何様だっつんだよ!」
「ん?何か言った?」
「いや、何も」
「おごったら俺はすぐ学校に行くからな」
「次の電車が来るし」
まぁ、まだ来ないが……。
「わかってるわよ、そんなに学校に行きたいんだね」
当たり前だ。たとえ遅刻したとしても欠席にはならない。
小学校から欠席、遅刻はしたことが無いのに、遅刻はもうしてしまった。
だから欠席だけはしたくない。
「もちろん」
「行くに決まっている」
「ふうん」
「なんでそんなに学校休みたくないのよ?」
「……俺の最も尊敬してる人に言われたからだ」
「誰?」
「父親だ」
「あんたの?」
「ああ、ってなんで聞くんだよ?」
「ふうん」
そうだ。俺は父を尊敬している。
父の言葉が俺を変えたようなものだからな。
「ってかさ、お前さ――――」
「あーやっと着いた!」
「って、人の話を聞けい!!」
言ってるそばから、店ん中入りやがった。
まぁいいか。
「わー!あたしこれ食べてみたかったんだよねー」
目の前には、いかにも高そうな一回り大きいクレープが置いてある。
「これ」
「はい?」
「こーれ」
「……?」
「だから、こ・れ!」
俺は目を疑った。
こいつは、この一回り大きいクレープの隣にある、
そのまた一回りとは言わず、二回り、三回り大きいクレープを指差しているのだ。
「はっ……?」
「何固まってるのよ」
「これ、早く」
嘘だろ。
俺は値札を見て固まった。
「ありがとうございましたー」
店員たちの声が耳の奥深くに聞こえる。
俺の今月の小遣い……。
「何どうしたのよ」
「いや」
この女男だったらぶっ飛ばしてる……。
俺たちはどこかの静かな公園のベンチに座った。
「そういやさ、名前聞いてないよな?」
「はまへ?ほうはへ」
「俺は世凪悠音だ、よろしく」
「よほひふ」
「お前は?」
少女は口の中のビッククレープを呑み込み、
「あたしは白咲凛音」
「よろひふへー」
リンネ?珍しい名前だなぁ……。
白咲はまたビッククレープをほおばりだした。
「よろしく白咲さん」
「うん、悠音」
「ん?悠音……?」
「何よ」
「いや、ずいぶんとフレンドリーなんだね」
「いけない?」
「いや」
女の子から下の名前で呼ばれて、嫌な男子はいないだろう。
ましてや美少女に、だ。
「俺の悠音の『と』は音って字なんだ、変わってるだろう?」
「あら偶然ね。あたしの凛音の『ね』も音よ」
「へーなんか運命感じるね」
「気持ち悪い」
冗談だよ!じょ・う・だ・ん!!
やっぱりこの女うぜぇ……。
「なんでさ、さっき駅とは反対方向に向かってたんだよ」
「家に帰ろうとしてた」
いやいや、おかしいだろ。
「制服着てるし、学校に行こうとしてたんじゃないの?」
「最初わね。でも途中で行く気失せたのよ」
だから2つもクレープを食べて歩いてたわけか。
「でもさ、どうして学校に行きたくないんだよ」
「えーだって退屈じゃん?学校なんて」
「いつも行ってないのか?」
「んー、まあボチボチ行ってる程度よ」
「はぁ」
「でも単位はどうするんだよ、退学にならないのか?」
「大丈夫なのよ」
よくわからん……。
こいつ裏口入学か?
凛音は ビッククレープを美味そうに食べている。
やっぱり女の子なんだな。
笑顔で食べてる顔が本当にかわいい。
これで性格も良かったら……。
言うこと無しだろうに。
「何?」
「へっ?」
「人の顔じろじろ見て、気持ち悪いんですけど」
「っああ、わるい」
ヤッベ、俺何見とれてんだよ!
凛音が最後の一口を食べ終えた。
「あー!美味しかった」
「探せばまだあるもんね、美味しいものなんて」
俺も少し食いたかったな……。
まぁしょうがない。
ああ、そう言えば……、
「なあ、おい」
「ん?」
「さっき世界がオワルとかなんとか言ってなかったか?」
「ああそれね。ええ、もうすぐよ」
どうゆうことだ……。
「なんだ、それって厨二病ってやつか?まさかお前本物の――――」
「違うわよ!まぁでも厨二病のほうが良かったかもね」
「それってどういう――――」
「あー!悠音!」
この声は……。
「何でこんなとこいるのー?学校は?」
「愛莉!?なんでお前――――」
「悠音が女の人連れてるー」
「しかも学校サボって、お母さんこれ聞いたらどうなるんだろう」
「誰?」
「俺の妹だ。世凪愛莉だ」
「へー妹なんかいたんだ」
「いつも兄がお世話になってますー」
「え!?っああ、ええ」
「よろしくお願いします。ええっと……」
「白咲凛音さんだ」
「白咲凛音さん……よろしくお願いします凛音さん!」
「ええ、よろしく愛莉ちゃん」
2人は意気投合したみたいだ。
何か楽しそうに話をしている。
男の俺は話の中には入れない。
「ああ、悠音いいの?もうこんな時間だよ」
「えっ」
ケータイを見ると、
ヤバイ!次の電車が来る。これを逃したら今度こそ学校に行けなくなる。
「じゃあ俺そろそろ行くわ、愛莉も早く学校行けよ遅れるぞ」
「分かってるって、凛音さんまたね」
「ええ、またね愛莉ちゃん」
愛莉は行ったようだ。
さて……。
「俺も行くからな、お前は帰るんだろう」
「ええ、あたしも行くかしら」
「じゃあな、またどっかで会ったらよろしく」
まぁ同じ学校だから、またどこかで会うだろう。
「うん、じゃあねー」
俺は歩きだした。
この時間なら余裕で電車に間に合う。
なんて理由をつけようか、まぁ無難に寝坊したとでも言っておこう。
事実だし……。
駅に着いた。
「で、なんでお前はついて来たんだ?」
「行く」
「はっ?」
「やっぱり、あたしも学校行くことにした」
「はあーー!?」
悠音やっと学校行けて良かったね。
でも凛音ついて来ちゃったし……。どうなるなでしょう?